プロトコルによる比較
イーサネットは、ピア・ツー・ピアのトラフィック・プロセッサ・ネットワーク、チップからチップ、回路基板から回路基板、あるいはシャーシ間を配信する手段を提供する。ところが、イーサネットはLANやWANから発展したため、アーキテクトが、それを組み込みシステムで使う効率的な方法を見ださなければならない。LANとWANをバックグラウンドに持つイーサネットには、各ノードにあるプロセッサがプロトコル・スタックを完結するという仮定がある。これはLANとWANのための合理的な仮定だが、リアルタイムの組み込みシステム(サーバを含む)では、あまりにも大きいレイテンシや電力消費につながる。
PCIおよびPCIeの標準規格は新しい選択肢を示した。しかし、それらは実のところ、ルート・コンプレックスの概念を含む、モノリシックな単一ホストプロセッサ・システムのために設計された。ライン・カード上で、バックプレーンにわたって、複数のホストと共に複数のプロセッサにスケーリングすることは、非透過ブリッジングであっても難しくなる。この問題は、少数のエンドポイントまたはコンピューティング・ノードに対して管理できるが、メモリマッピングは、システム規模の大きさに従って急速に難しくなる。
RapidIOは、もともとマルチプロセッサのピア・ツー・ピア・ネットワーク用に構築されており、以下にあげる性質がある。
- 通信信頼性
- マイクロ秒以下のエンド・ツー・エンドのパケット配信
- 100nsのスイッチ・カットスルー・レイテンシ
- プロトコルを終了するためのプロセッサのオーバーヘッドがない
- 「任意のトポロジ」(つまり、直接相互接続、メッシュ、スター、デュアルスターなど)のサポート
- 大量のデータ転送のための高性能メッセージング
- 自身のメモリ・サブシステムを持っているシステムの各プロセッサのオプションを備えたプッシュ・アーキテクチャ
RapidIOは代表的な組み込み相互接続となり、バックプレーンの接続性のために規定されたキャリア・クラスのシリアル通信で、回路基板内、回路基板間、室内または部屋と部屋の間をケーブルで接続されたシャーシの接続性をネイティブにサポートできる。
イーサネットが、組み込まれたスペースでもっと役立つように、かつ広域ネットワークやローカル・エリア・ネットワークの環境を越えて拡張するために、補助の仕様が開発された。データ・センター環境を狙った拡張は、Data Center Bridging(DCB)として、ひとまとめにして定義された。組み込みやデータ・センターの環境は、損失のない伝送、改善されたフロー制御、および低いレイテンシによって特徴づけられる。
QoSとフロー制御による比較
企業のデータセンターやクラウドの中で、帯域幅を拡大させる要因の1つが、ストレージ・ネットワークとの結合の必要性である。このストレージ・ネットワークは、一般的には1Gビット/秒のイーサネットのサーバ間接続ネットワークを備えたファイバチャネルで、一般的に最大8Gビット/秒である。これらのネットワークにはQoS(サービス品質)の制約に違いがある。さらに、ストレージ・ネットワークはパケットを廃棄してはならない。RapidIOベースのシステムは、現在、予測可能なQoSを備えた信頼できる配信を達成する。
より積極的でより有効なQoSを要求する用途に対して、RapidIOは高度なフロー制御とデータ・プレーン性能を提供する。RapidIOプロトコルは、物理層と論理層で複数のフロー制御メカニズムを定義している。物理層のフロー制御をリンク層で管理することによって、短期間の輻輳は、受信器と発信器の両方に制御されたフロー制御を使って効果的に管理される。より長期的な輻輳にはXOFFとXONのメッセージを使って、論理層で制御してもよい。これは、輻輳が特別なフローに従って検出されるとき、受信器がパケットのフローを止めることができる。
仮想チャネル(VC)は新しいQoS性能をサポートする。その特徴は、信頼性優先ポリシーあるいはベスト・エフォート配信ポリシー、強化されたリンク層のフロー制御、およびエンド・ツー・エンドのトラフィック管理である。さらに、VCは任意の2つのエンドポイント間で最大1600万までのユニークな仮想のストリームを許容できる。
イーサネットはDCB技術の追求を通じて、さらにそのフロー制御のストーリーを改善した。それは、バッファ・オーバーフローやその結果生じるパケット廃棄を回避するために、リンクの1つの端末が、リンクのもう1つの端末による送信を停止できることである。VLANタグの一部であるパケットの優先順位と同様にVLANタグ付けによって可能になったパケットの単純化されたルーティングも、イーサネットのQoS特性やレイテンシを改善するために大きく貢献した。
しかしながら、RapidIOと比較して、複数のDCB QoSとフロー制御には制限がある*。例えば、イーサネットのフロー制御サポートは、主に802.3x PAUSEサポートによって提供される。強化されたフロー制御メカニズムを備えていても、輻輳の通知の中のオーバーヘッドは、通知が信号源からネットワークの端まで伝播するため、高いものになる。一方で、RapidIOの輻輳の通知は、コントロール・シンボル送信を介して非常に速い。イーサネットのメカニズムはおそらく広くは採用されない。また、いくつかのベンダは、制限のあるトポロジに対して独自にサポートしている。RapidIOのリンク層フロー制御は、発信器が受信器に対して連続的に満杯にすることを許容する。これは、スケジューリングの効率を改善し、それによって全体的なスイッチング効率を改善する。
*参考文献:Comparing Ethernet and RapidIO, CompactPCI, AdvancedTCA and MicroTCA Systems, July 15, 2010