Adobe SystemsがHTML5/CSS3ベースのアニメーションオーサリングツール「Adobe Edge」を初めてお披露目したのは1年前のAdobe MAX 2010の基調講演でのこと。同社のHTML5に対する取り組みの本気度を示す発表として注目を集めた。その後、2011年8月に最初のプレビュー版が公開され、10月3日(太平洋夏時間)にはプレビュー3が公開されている。今回、Adobe Edgeの今後の展望などについて、同社のHeidi Voltmer氏にお話を伺う機会を得た。

Adobe SystemsのHeidi Voltmer氏

正式リリースまでの流れ

Adobe Edgeは、HTML5/CSS3に対応したWebサイト向けのアニメーション・オーサリングツール。HTML5やCSS3によるアニメーションを、コードを書くことなく作成することができる。JavaScriptライブラリのjQueryをベースとして開発されており、Flashなどと同様にタイムラインに沿ってオブジェクトの移動や効果を指定することでアニメーションを作成する。

Adobe MAX 2011基調講演でのAdobe Edge preview 3のデモ

Voltmer氏によれば、正式版が登場する具体的な時期はまだ決まっていないが、2012年中を目処にリリースしたいと考えているとのこと。ただし、ユーザインタフェースの完成度や機能の充実などを含めて、Adobeが製品版として出す品質を実現できることが条件だとしている。

「今すぐにでも使いたいという声もありますが、まだそこまでの完成度に達していません。今後1カ月に1回程度の高い頻度でプレビュー版のアップデートを続けていき、ユーザのニーズを確実に把握してフィードバックさせていきたいと考えています。スタンダードがどんどん切り替わっていく時期なので、プレビューを重ねながらニーズを確実につかんでいくことが重要です」

製品化された際の価格体系などについては、まだ詳細は明らかにできないとしながらも、「間もなく発表される見込み」と付け加えた。また、現在のEdgeはFlash ProやDreamweaverを補完するツールという扱いになっているが、この位置づけは今後も変わる予定はないという。ただし、Edgeはあくまでも独立した単体のプロダクトとして提供されるもので、他の製品に統合されるようなこともないとのことだ。

今後、どのような機能が追加されるのか

Adobe Edgeはまだ開発途上のツールであり、製品化までには様々な修正や新機能の追加が行われることになる。今後付け加える予定の機能としては、いずれもアイデアの段階と前置きした上で、次のような例が挙げられた。

・インタラクティブなアクションの表現力
・コードへのアクセス
・イメージの作成
・生産性の向上

生産性については常に重点を置いている部分であり、レイアウトのマネージャやアライアントガイドなどの機能によって製作者をサポートしていきたいとのこと。

ただし、あくまでも目標とするのはコードを書かずにアニメーションが作成できるツールであり、Webアプリケーション開発用のツールにまでカバー範囲を広げていく予定はないとVoltmer氏は語る。また、先日発表されたプロトタイプ作成ツール「Adobe Proto」と連携するような機能が付く予定があるかという質問に対しては、「今のところはDreamweaver向けのプロトタイプ作成ツールとみなしており、Protoとの連携は考えていません。しかしい非常にアイデアだと思います」との答えだった。

HTML5/CSS3は優れた技術要素ではあるものの、オーサリングのためのツールが足りていないという問題を抱えていた。その市場にツールベンダーであるAdobeが参入した意味は大きい。この点について、Voltmer氏は次のように語った。

「Edgeには、我々が過去にプロ用の様々なデザインツールを使ってきた経験、そしてクロスプラットフォーム向けのツールを開発してきた経験が活かされています。そして最も重要なのは、一度出して終わりではなく、これまでのツールでの実績が、継続してリリースできるという安心感をユーザに与えているという点ではないでしょうか。もちろん他のベンダーが同様のツールの提供をはじめる可能性も十分にあります。しかし我々としても、他者が革新的なツールを出すのを、脇で指をくわえて見ているような姿勢でいるつもりはありません。常に我々が革新を引っ張っていくという気持ちで開発しています」