発表の2番目は、Kinetis K30を使った単相電力メータのリファレンスデザインを発表したことだ(Photo15,16)。これはSmartMeterへの取り組みの第一歩として、とりあえず簡単にシステムを構築できるという実例である。ただこれはあくまでリファレンスデザインであって、Freescaleからは設計資料という形でデザインは出るものの、開発キットの様な形での供給は今のところ考えていないという話であった。
Photo15:これ単体で85~265V・5A(ピークは120A)までの電力測定を行い、それをその場で画面に表示したり、ZigBee Stack経由で外部にデータを送り出すこともできる |
Photo16:これが実際に稼働中のプロトタイプ。意外に大きかった。ちなみに透明ケースの中のボタン電池はCalender ClockのBattery Backup用だそうである |
3つ目は日本における開発パートナーの確立である。「外資系ということでドキュメントも問い合わせも全部英語というわけではなく、日本語のドキュメントや資料の充実に今後も費用を投じてゆく」ということでFreescale自身も提供する製品やサービスの日本語化を充実してゆくが、これに加えて日本のパートナーによるKinetis向けのツールやサポートも行い始めるというのが今回の趣旨で、OSベンダに加えてデバッガや開発ツール、Audio/Video Codec、さらにはトレーニングコースも日本のベンダから提供されるようになるので、もう敷居は高くないというのがFreescaleのメッセージであった。
Photo17:TMCはこのTechnoMathematicalという社名であるが、実は日本の会社である。同社はこの後のサミットにおけるテクニカルセッションの中で、Kinetisの上でH.264のデコードをリアルタイムで行うという実演を行ってくれた |
ここまではKinetis関連の話であったが、4つ目はいきなりPowerPCである。従来Freescaleの戦略ではPowerPCはAutomotiveとNetwork向けという分類であったが、例えばAutomotiveであれば冗長性とか信頼性、Networkなら高性能といった要件が強く求められる訳だが、他の分野でもこうした特長が求められるケースがあるため、こうした目的に向けて産業向け汎用MCUとしてラインナップしたのがPXシリーズである。PXシリーズは4つのファミリから構成されており(Photo18)、ES開始は今年後半、量産開始は(製品にもよるが)概ね2011年末~2012年といった具合だ(Photo19)。以下に4つのファミリの内部構造を紹介する(Photo20~23)。
Photo18:PXRとPXSは、ほぼ自動車向けから持ってきた感じ。PXNはQorIQというよりも、昔のPowerQUICCを思わせる構造である。謎なのがPXDで、i.MXあたりのコアを使ったほうが良かったのでは? という気がちょっとする |
Photo19:PXNだけ早いのは、これのみ特定のアプリケーションがもう決まっており、これにあわせたのかもしれない |
Photo20:CPUコアはe200z7。e200シリーズの中では唯一Dual Issueのpipeline構造を持っており、このため性能も2.3DMIPS/MHzとかなり高いものになっている。またDSPも搭載しており、Flashが4MB、SRAMも256KBとMCUに分類される製品としては間違いなくハイエンド構成 |
Photo21:構成的には、2010年に発表されたMPC5643Lに近い。2つのCPUコアをDual Coreとして使うことも出来るし、冗長性を高める二重化として使うこともできる |
なぜARMコアが選ばれるのか
マイコンサミットの方はというと、同日午後からスタートし(Photo24)、まずは記者発表会同様にユーゼ社長の挨拶から始まってKazerounian氏と西島氏の説明に続いてBock氏による説明が行われたあと、休憩を挟んで「変わり始めたマイコン市場の行方を探る」というテーマでパネルディスカッションが開催された(Photo25)。議論は「なぜMCUベンダはARMコアを選ぶのか」と「ARMコアが普及してゆくと、エンドユーザーからみて各社の製品の違いはどう見えるのか」という2点について議論が行われた。
次いでやはり休憩を挟んだ後で、イーフォース(Photo26)、テクノマセマティカル(Photo27)、IARシステムズ(Photo28)とフリースケールの4社が、それぞれの立場から自社製品の紹介やKinetisへの取り組みを紹介し、午後6時過ぎに無事終了した。
ということで新製品とマイコンサミットの紹介はこれで終わりだが、実はこれとは別に、Jeff Bock氏に個別にお話を伺う機会を別途設けていただいた。こちらの方は項を改めてまた記事にさせていただく。