12月1日から12月3日までの3日間、パシフィコ横浜において、組み込み専門技術展&カンファレンス「Embedded Technology(ET)2010」が開催されている。

同イベントは今回で28回目の開催となる。出展者数は358社・団体で、前回の384社よりも減るものの、「小間数としては前回の724小間から、今回は754小間へと規模を拡大した」と組込みシステム技術協会(JASA)の会長である松尾隆徳氏は語る。

開催におけるテープカットの様子。左から、JASA会長の松尾隆徳氏、横浜市経済観光局局長の渡辺巧教氏、アーム代表取締役社長の西嶋貴史氏、インテル インテル技術本部 本部長の及川芳雄氏、ルネサス エレクトロニクスMCU事業本部 汎用MCUシステム統括部 統括部長の川下智恵氏、JASA ET事業本部長の藤木優氏

また、今回はカンファレンスの数も拡大し、3日間の合計で134セッションが予定されている。さらに、ETロボコンのチャンピオンシップも1日目、2日目に開催されるほか、「新企画としてJASAが技術開発や育成プログラムなど、この1年の間に研究開発してきた成果の発表の場としての役割も与えた」(同)ということで、「JASAとしては、組み込みシステムおよび組み込みソフトウェアは、今の日本の産業をリメイクするためのキーワード、キーテクノロジーとして活用されつつあり、それにより混迷する日本経済の再構築に寄与できる。また、新たな産業や商品を作るためには組み込み技術が不可欠であり、なければ何もできないのが現実。そうした意味では自信を持って、業界の拡大を目指していく」と宣言した。

今回は、そうした日本経済の再構築を目指した同展において、興味を惹いたデモなどを展示していたデバイスメーカーのブースを中心にレポートをお届けしたい。

会場風景

RX200とRL78の影に隠れながらも面白い試みを実施

国内大手半導体デバイスベンダのルネサス エレクトロニクスのブースでは、前面に発表を行ったばかりの新マイコン「RX200」と「RL78」のデモが展示されている。

RX200のデモは、「RX210」と従来マイコン「M16C/65」を用いて円周率演算速度比較を行おうというもの。一方のRL78は、同シリーズがサポートする全20種のパッケージをゴンドラに見立てた観覧車の中心のモニタに「RL78/GB」、「78K0/KC2-L」、「78K0R/KE3-L」のそれぞれの動作時およびスタンバイ時の消費電流を表示して、その差を見せるというものとなっている。

「RX210」と「M16C/65」の比較デモ。左のボードにRX210が搭載されており、モニタの反対側にM16C搭載ボードが置かれている

観覧車を模したRL78のデモ。ちなみに対応のオンチップデバッキングエミュレータも展示されている

同社のデモとして、それ以上に目を惹いたのは参考出展されていた可視光通信システム。これは、送信側にLEDを、受信側にフォトダイオードを設置し、それぞれを78Kマイコンで処理を行うことで、LEDの光信号を受信し、データとして処理するもの。4.8Kbpsの通信デモだが、同様の実験を別の企業が行った可視光通信実験では160Mbpsの速度を達成したという。

上が発光部で下が受光部。後ろが黒くなっているのは、設営時のデモで後ろの壁に光が反射してしまい、手で受光部を覆っても、そちらから受光してしまうことが判明したため、急遽用意したものとのこと

可視光ということで、気になるのは太陽光や室内照明などの外乱光。これに対応するためソリューションとして、外乱光と信号を分離する機能を受信側にソフトウェアとして搭載しており、太陽光の下でも実験段階ではデータ受信に成功しているという。また、室内照明の場合、高周波を発することがあり、それがノイズとして問題になること、および反射光なども問題になることがあるが、それらもフィルタ処理を行うことで、影響を受けないようにすることが可能となっているという。

なお、今回の参考出展は、技術的にはほぼ完成しているが、その用途としての使い方が定まっていないため、とのことなので、興味を持つ人は同社ブースに行ってみると良いだろう。