"破壊"のデザイン
次に、イェーガー氏は最近携わったクリエイティブワークを例にあげ、3DCG制作の現状について紹介した。2009年に公開されたマイケル・ベイ監督の『トランスフォーマー:リベンジ』では、実に46体もの新しいロボットを生み出したというイェーガー氏。「マイケル・ベイ監督の作品では、回を重ねるごとにどんどんキャラクターが大きくなっていっているんです(笑)」と語り、続けて「前回、前々回以上に巨大なロボットが登場するんじゃないかな」と現在新たな『トランスフォーマー』シリーズの制作に取り組んでいるとことも明かしてくれた。
では、制作現場はどのようなものだったのか。ILMでは制作を効率よく進めるために、"パーツライブラリ"を作成している。「しっかり数えたことがないので正確な数は判りませんが……、恐らく400位のパーツがライブラリになっています」とし、汎用性の高いパーツ類を管理し、適宜キャラクター制作時にピックアップし、利用していることを明かした。また、イェーガー氏は「トランスフォーマー:リベンジでは敵方のロボットが巨大化し、主人公のオプティマス・プライムはかなりボロボロになるんです。なので、さしずめ私の仕事は破壊をデザインすることでした」と述べた。前述したように、破壊を描くということは、表面だけではなくその内部構造までキチンと作り込んでいなければ不可能だ。細部のディテールまでしっかりと構築するという『スター・ウォーズ エピソード3』でのノウハウが、ここにも活かされているというわけだ。
さらに、『スター・トレック』では、J・J・エイブラムス監督から「スター・トレックをもっと格好良く作り直してくれ」というリクエストがなされたとのこと。そして、そのリクエストに応えるため、新旧様々な作品のリサーチを行った。敵役が乗る超巨大宇宙船"NARADA"や主人公が乗船する"エンタープライズ号"など、様々な宇宙船のモデリングや仮想環境の構築を行うなかで、ことエンタープライズ号に関してはデザイン的なチャレンジが盛り込まれたそうだ。従来のエンタープライズ号のディテールを踏襲しながら力強さを演出しつつ、それでありながらセクシーにする。相反する要素が高い次元で纏め上げられている。このセクシーさや力強さは単にデザインだけではなく、ワープする瞬間のエフェクトなど、様々な視覚効果を含め構築されているのだ。