2010年のIT戦略

2010年のIT部門の取り組みとしてはどのようなことが予定されているのか。これについて同氏は、「PCの更新比率(全体の25%)を維持し、そうして新しく導入されるPCにはWindows 7とSSDが搭載されることとなる」と説明するほか、既存PCでも性能さえ満たしていれば随時Windows 7へとアップグレードを行っていく方針でその際にはHDDからSSDへの変更も同時に行われる予定としている。

また現在、全体の54%のPCがvProに対応しており、今後2年間ですべてのPCがvProを搭載する予定となっている。vProの活用により、「これまではその場に行かないとサポートできなかったものが、vProを活用することによりコスタリカとマレーシアにサービスデスクを集約、そこからリモート管理で対応できるようになった」(同)とのことで、結果的にサポートコストなどの削減につながったことを強調する。

2010年における同社IT部門の取り組み。vProのリモート管理機能を活用することで、遠隔地からのサポートも可能となり、サポートコストなどの低減が可能となる

データセンターの戦略

同社のデータセンターに対する方針は過去から一貫したものとしてのサーバの更新や仮想化の推進、エネルギー効率の改善などがある。特にエネルギー効率の改善は、空調管理や外気の活用などもあるが、サーバの更新による消費電力の低減の割合が大きく、全体の75%を占めるという。

これら一貫した取り組みと、同社の「設計」「オフィス」「製造」「基幹アプリケーション」という4つのビジネス領域を組み合わせることで、「データセンターとしての価値を向上させることが可能となる」(同)というのが同社の考え方。特にサーバの更新については、「例えば2010年には前年比で45%程度のコンピューティング性能の向上が求められている。また、ストレージも同35%の容量増大の要求があり、そうした要求に今だけでなく、4年先の次の更新まで毎年どの程度の性能向上が必要となるのかを考えた上で、4年後まで活用可能な"適切なサーバ"に更新する必用がある」(同)としている。

同社IT部門のデータセンターに向けた戦略

なお、もし不適切なサーバを選択してしまった場合について同氏は「前もって適切なサイズを選ばず、コストを出し惜しんで小さいサーバを導入してその場をしのいだとしても、後々サーバをアップグレードしないといけない状況に追い込まれる。そうなった場合、始めから適切なサーバを選んだ場合に比べてTCOが1.5~2倍に増大する」と指摘、加えて「結果的にそうしたITコストの増大が実ビジネスの障害につながる可能性もある」とし、ストレージやネットワークなども含めて次の更新までをどう考えていくかが重要なポイントだとした。

今求められているパフォーマンスのみでサーバを更新すると、後々パフォーマンス不足などで追加投資などが発生することもあるので、始めから将来を見据えた投資計画を検討しておく必要があるというのが同氏の主張

同社では4年ごとに更新することが最適という考えに基づきサーバの更新を行ってきた結果、データセンターへのパフォーマンスを2006年比で約2.5倍に向上させつつ、設備投資額は同65%削減することに成功しているほか、実際のシリコンのテープアウト時間も従来の25日から10日へと短縮するなど、実ビジネスへも良い影響を及ぼす結果を出している。

プロセスの微細化に伴う半導体設計の複雑化、大規模化による演算時間の長期化なども開発期間が長引く要因となるが、それがパフォーマンスの改善で解決されれば、市場への投入時間も短縮することが可能となる

仮想化とクラウドへの取り組み

サーバのパフォーマンス向上に伴い、同社は仮想化も進めている。2009年末段階でデータセンター全体の使用率の内15%が仮想化で、2010年末までにはこれが30%へと引き上げられ、2011年末には同60%、2012年末までには同80%まで引き上げられる計画。「データセンターの仮想化は投資コストの削減にもつながる。2009年に行った仮想化によって得られた(同年に実際にサーバを導入した場合にかかったであろう)純コスト回避額は2,900万ドルにもおよぶ」(同)とのことで、サーバ更新戦略の継続によってもたらされたコスト削減額と合わせると、実に4,000万ドルを超す削減効果を得ることができたこととなる。

仮想化により設備投資コストの抑制とパフォーマンス向上の両立が可能となる

また、クラウドについても同氏は「Intelにも重要なポイント」としている。同社のクラウドに対する戦略は単純なもので、「クラウドを社内から社外へと発展させる」(同)というもの。社内クラウドでは基幹アプリケーションやユーザープロファイルの管理、1次データストレージなどが活用されている。一方の社外クラウドとしては福利厚生や経費精算、ソーシャルメディアなどの諸々のSaaSアプリケーションなどが活用されている。

同社IT部門によるクラウドの活用戦略

ただし、「現状、クラウドサービスのようなものはITベンダやサプライヤを選別すると、それをスタンダードとして使う必要性がでてくる。それでは使い勝手は決して高いとは言えない。我々としては、社内外ということを意識せずに運用できることを目指しており、標準化に向けた提案などを行っている」(同)とのことで、そこでも仮想化が重要な役割を果たすことが強調された。

なお、同氏の上司でありIntelの副社長兼CIOのDiane Bryant氏によると、Intel IT部門の2010年の課題は「Intelの着実なイノベーションをサポートし続けること」とのことであり、効率的にITの効率性向上を推進していくことで、社員とビジネスの生産性向上の促進を促し、全社の競争力を高めていくことに注力していくとしている。