三洋電機は3月10日、交通信号機用のリチウムイオン電池システムを開発し、日本信号を通じて、徳島県警察本部に納入したことを発表した。同システムは、停電発生時にも消灯することなく、瞬時に電力供給が可能。
日本全国に約20万機ある交通信号機は商用電源で駆動しているため、災害で停電が発生した場合に作動しなくなり、渋滞などの交通障害を引き起こすおそれがある。また現在、国内の主要交差点には自動起動式発動発電機が設置されているが、歩道上に設置スペースが必要であり、定期的な発電機の動作確認などメンテナンス費用もかかる。
徳島県警はこうした課題を解決するために、全国に先駆けて交差点の信号機のバックアップ体制の確立に取り組んできた。同県警と三洋と日本信号は共同で2009年7月から信号機向けのリチウムイオン電池システムの実証実験を行っており、今回その実績が評価され、徳島県内の21交差点への納入が完了した。
同システムは円筒形リチウムイオン電池(18650サイズ)を312本搭載し、バックアップ時間は2時間半以上可能だ。その基本構成は2009年11月に発表し、今年3月から量産開始予定の「蓄電用標準電池システム:DCB-101」と同等で、一部の部品の共用化や充電制御などのシステム化技術の活用が行われている。
従来の自動起動式発動発動機は停電発生後に起動してから動作を安定させ、給電を始めるまでに30秒程度の間、滅灯(消灯)するのに対し、同システムは瞬時に切り替えられるため、停電時も連続点灯が行える。
また通常、信号機は柱に信号機制御ボックスが設置されているが、同システムは制御ボックスと同等サイズに収まる設計のため、新たな設置スペースを確保することなく、柱に追加設置することができる。
リチウムイオン電池は長寿命でメンテナンスが不要なため、自動起動式発動発動機で必要なディーゼルエンジンの定期点検や燃料補給などのメンテナンス費用が発生しない。