Analog Devices(ADI)の日本法人であるアナログ・デバイセズは1月29日、都内で事業方針説明会を開催、2010年度の世界および日本戦略を明らかにした。

回復傾向に入った半導体市況

ADI Vice President,Strategic Market Segment Group and Global SalesのVincent Roche氏

世界市場の動向などの説明を行ったのはADI Vice President,Strategic Market Segment Group and Global SalesのVincent Roche氏。2008年秋からの世界不況は半導体業界にも影を落としたが、2009年に入ると市況は徐々に回復、2009年度第4四半期(2009年8月~10月)には売り上げが5億7,200万ドルと5億ドル超えを達成、「年末にかけてさらに市況の回復傾向は高まっており、過去のピーク時の売り上げに向けて売り上げ拡大が進んでおり、利益も回復が進んでいる」(Roche氏)と市況が順調に回復していることを強調する。

同社の売り上げをマーケット別に見ると、大別して産業機器、通信、コンシューマ、車載、ヘルスケア、コンピュータとなる。Roche氏は、「中でも日本はコンシューマ分野の中核地域、そして車載やヘルスケアの分野でも 重要な地域となっていきている」と説明する。

ADIの四半期別売り上げ推移

ADIの分野別比率

同社の2010年度の戦略は、これまで回路技術やコンポーネント、システムアーキテクチャとしてカスタマのニーズに対応してきたが、現代のようなソフトウェアでさまざまな機能を実現するシステムが主流の世の中では、ソフトウェアとハードウェアの統合による複雑なシステムデザインへの対応によりユーザーエクスペリエンスを高める方向を目指すとする。

こうした方向性に自社のビジネスを進めるため、同社は組織体制を変更、先端技術開発を行う「Core Products&Technologies Group(CPT)」というグループと。高度なシステムレベルでの主要アプリケーションへの統合を狙うアーキテクチャのシステム化を行う「Strategic Market Segments Group(SMS)」の2つのグループに再編した。

ADIの新体制(CPTとSMSの2つのグループに分割しなおした)

CPTは、技術分野別に「Converters」「MEMS/Sensors」「Processor-DSP」「Power」「Linear&RF」に分けられ、一方のSMSは「Automotive」「Communications Infrastructure」「Consumer」「Healthcare」「Industrial&Instrumentation」に分けられ、2つのグループは相互に技術や市場からのニーズなどの交換を行う構成となっている。

この組織再編により、「カスタマをビジネスの中心におき、その接触点を簡素化。これにより、より細やかな部分までカスタマの要求に対応することが可能になる」とRoche氏は語るが、その背景として、世界的な動きとして、グリーン化という要求が高まっていることを挙げる。グリーン化も、インフラレベルから産業機器やコンシューマといったすべてのシステムを横断し、さらにデバイスレベルでも求められるようになっており、安全性の向上なども含めてより使いやすいユーザーインタフェース(UI)への要求もグリーン化に相まって高まっている。「我々はそういった意味では良い位置に付けている。それは、アナログ半導体はすべてのマーケットで使われているし、UIとしてのタッチパネルなどではMEMSセンサなど が活用されており、それらをすべて統合して提供できることが強みとなってくる」とし、よりデジタルとアナログの統合を意識した取り組みを進めていくとした。

同社のビジネスは徐々にエコシステムの上流に向かったビジネスへと変化してきた

日本市場も回復傾向

アナログ・デバイセズの代表取締役社長である馬渡修氏

Roche氏の後にはアナログ・デバイセズの代表取締役社長の馬渡修氏が登壇。日本法人のビジョンと戦略の詳細を語った。

日本法人も本社同様に組織変更が行われ、「テクノロジー・グループ」と「ストラテジック・セグメント・グループ」の2つに再編。セグメントグループごとにセールスグループを配置することで、「各セグメントごとに営業を分けることで、より迅速な行動が可能になった」(馬渡氏)とその効果を説明する。

アナログ・デバイセズも米国ADIの組織再編に併せて組織体制を再編

日本法人の業績は2009年度で前年度比約30%減となる3億4,900万ドル。大きな落ち込みではあるが、四半期ごとに業績の推移を見ると、「第2四半期(2009年2月~4月)をボトムに市況が回復。第4四半期には前年同期と比べて90%程度の売り上げ規模まで回復した。2010年度で、ピーク時のころの売り上げに回復できると見ている」(同)と市況が好調に推移していることを強調した。

日本法人の四半期別業績推移

そんな同社のビジョンは「名実ともにNo.1の高性能アナログ信号処理プロバイダとなる」こと。コンセプトの段階からカスタマと一緒にシステムの開発を行うことで、いち早く、そしてより深いサポートを実現することを狙っていく。また、2010年度の目標としては、売上高前年度比15%増、全社売り上げの20%以上のシェアを獲得することを掲げた。「20%あれば、本社に対して日本のカスタマに良い提案が可能となるよう発言力を増すことができるようになる」(同)と、より日本でのビジネスの拡大に目指し、中小カスタマへの注力やコンシューマ以外の分野(産業機器、通信など)への注力を行っていくほか、アナログ技術者のためのコミュニティの推進などを行い、業界全体の活性化も図っていきたいとした。

アナログ・デバイセズの2009年度市場別売上高比率

カスタマサポートのイメージ図