6日から10日にかけて幕張メッセで催された「CEATEC JAPAN 2009」は「Challenge! 豊かな暮らしと低炭素社会への挑戦」を開催メッセージに掲げ、環境やエコを前面に出した展示が多く見られた。このレポートでは、住宅内配線の新システムを提案するパナソニック、自動車用太陽光発電パネルの開発を進めるシャープ、大気中の情報の見える化システムを構築するNTTドコモの取り組みを紹介しよう。

「CEATEC JAPAN 2009」会場の様子

DC(直流)による住宅内配線システムを提案するパナソニック

パナソニックのブースでは、住宅内への電力供給の新配線システム「AC/DCハイブリッド配線システム」を展示していた。これはAC(交流)電力とDC(直流)電力を組み合わせて住宅内に供給するもので、AC配線に加えてDC専用の配線およびコンセントを設置する。DC配線システムが開発された背景には、家庭における太陽光発電システムの普及や家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」の出荷がある。これらの機器が発電する電気はDCのためACへの変換を行ない出力されているが、変換時にエネルギーのロスが発生するという。変換ロスを抑制し、発電した電気を効率よく使用することを目的に考えられたのが同システム。

「AC/DCハイブリッド配線システム」の全体イメージを説明したパネル

同システムでは、商用電源として供給されるAC電力と家庭で発電したDC電力を「AC/DCハイブリッドパワーステーション」と呼ばれるコントローラで制御。家庭内の設備にあわせて効率的に配電する。LED照明器具、換気扇、住宅用火災警報器等はDCで直接配線することにより、変換ロスの削減による省エネ効果が得られるとしている。発電した電力は、ACに変換して通常の電化製品用としても活用される。ACで駆動した方が効率が良い場合はACで給電し、DCの方が効率がよい機器にはDCで給電するという考え方だ。

「AC/DCハイブリッド配線システム」で電気の状態を示すエネルギーモニターの画面

DC配線対応機器を接続するための「DCコンセント」も用意される。ACコンセントと同じ規格で設計されているため、コンセントスペースの共有が可能で見た目に大きな違和感は感じない。予定されている定格性能は、DV6/12/24/48V、15A。同社はDC入力の電源コネクタを持ち、ACアダプタによる電源供給を行なう機器に着目している。ACアダプタを使用する機器が増加しているとし、メリットとしてDCコンセントを利用すればACアダプタは不要となりスッキリと配線できる点を挙げている。そのほかDC対応機器の製品化も検討されており、パソコン、薄型TV、DVDレコーダーなどを想定しているとのこと。

左上にDCコンセントを備えた「AC/DC対応マルチメディアコンセント」。AC用と異なる形状により誤挿入を防止する。LAN用のコネクタも装備

「DCコンセント」各種。「SELVDC48V」は住宅向け、「Class l DC48V」はデータセンター等非住宅向け

さらに、発電した電気を蓄える「家庭用リチウムイオン電池」を展示。電力消費のピーク時など必要な時に蓄えた電気を効率的に利用し、家全体のCO2削減を目指すという。同電池は「リチウムイオン電池モジュール」を6個搭載するタイプで、参考出品のため詳細は公開されていない。電池モジュールは、ノートパソコン等で使用されている直径18mm×65mmのリチウムイオン電池を140個内蔵したもので、電圧は25.2V、電気容量は58Ah。一部のセルに何らかの障害が発生した場合でも、モジュール全体の稼動停止を回避する機能を有する。AC/DCハイブリッド配線システムに家庭用リチウムイオン電池を組み合わせることにより、停電時の電力バックアップも可能となる。

参考出品された「家庭用リチウムイオン電池」。横はエネファームの燃料電池ユニット

「リチウムイオン電池モジュール」のカットモデル。内部に円筒形のリチウムイオン電池本体が見える

同社ではエネルギーの消費をへらす「省エネ」、必要なエネルギーをつくる「創エネ」、つくったエネルギーをためる「蓄エネ」を実現する機器を提供。これらをAC/DCハイブリッド配線システムなどで接続してホームエネルギーマネジメントで制御することにより、家まるごとのCO2排出量±0(ゼロ)を目指すとしている。

省エネ、創エネ、蓄エネ機器と「AC/DCハイブリッド配線システム」による接続を解説した画面

自動車用太陽光発電パネルの実用化を目指すシャープ

シャープは「ソーラーパネル搭載電気自動車」を参考出品した。ルーフ全体に太陽光発電パネルを搭載したもので、ベースは三菱自動車工業の電気自動車「i-MiEV」。発電能力などの性能や発電した電力の用途、開発日程は未定としているが、説明員によれば電気自動車やハイブリッド車などバッテリー駆動車の需要増を踏まえ早期の実用化を目指すとのこと。

シャープが参考出品した「ソーラーパネル搭載電気自動車」

「i-MiEV」のルーフ全体を覆う太陽光発電パネル

太陽光発電システムは5月にトヨタ自動車が発売したハイブリッド車「プリウス」で既に採用されており、太陽光発電パネルの供給は京セラが行なっている。「ソーラーベンチレーションシステム」としてオプション設定され、発電した電力は車内の換気用として利用。炎天下での駐車など車内の温度上昇を抑えることができる。ただし、この電力はバッテリーへの充電用としては使われない。プリウスの太陽光発電パネルの面積はムーンルーフの後端からルーフアンテナまでと小さいもので、バッテリーの充電用としては発電量が足りないという。パネルの大型化なども検討するようだが時期などは未定だ。

燃料を必要とせず発電コストが不要な太陽光発電は、炎天下に駐車される機会が多い自動車にとって効率の良いエネルギーといえる。バッテリーへの充電が可能になれば電気駆動による航続距離を伸ばすことができ、特に広範囲における充電器スタンドの設置が普及拡大の鍵とされる電気自動車にとっては大きなメリットとなる。パネルの大型化にともなうコスト増やノイズ対策、搭載方法など課題もあるが、各メーカーの今後の開発に期待したい。

全国で花粉情報を測定・蓄積するNTTドコモの取り組み

NTTドコモは、大気中の情報を「見える化」することを目的とした「環境センサーネットワーク」の構築を進めている。花粉や紫外線などの環境情報を測定し、FOMAを介して蓄積サーバへデータを送り保存するもので、測定データは複数プロバイダーのコンテンツを通じてNTTドコモのユーザーへ提供されるという。

「環境センサーネットワーク」のシステム構成イメージ

測定用機器は「センサー」と通信を行なう「データ多重装置」により構成され、同社の基地局、自社ビル、ドコモショップ等へ設置。10,000基を目標に、2010年以降全国で設置を行なうとのこと。基地局やドコモショップといった拠点を利用することで全国をカバーすることが可能となり、機器設置場所を新たに取得する必要が無いため経費を押さえることもできるとしている。

拠点に設置される測定用機器。「データ多重装置」には通信用のFOMAモジュールを搭載、発電用の太陽電池パネルも備える。機器上部の箱状の装置が「花粉センサー」

当初は「花粉センサー」を搭載して、2010年の花粉シーズンから花粉の飛散状況を測定・蓄積する。データ提供ビジネスとしての事業性などを検証し、紫外線、雷雨、気温など測定項目の追加を行ないたいとしている。