矢野経済研究所は7月21日、植物工場に関する調査結果を発表した。同発表によると、植物工場の新規工場建設市場は、2008年度が16億8千万円であったのに対し、2009年度は農林水産省・経済産業省による補助金の影響で市場規模は53億円に拡大する見込みと、大幅な増加が期待されている。

同社では、植物工場市場を、新規工場建設市場と工場運営事業市場(植物工場で生産された作物の出荷市場)とに大別している。新規工場建設市場については、農林水産省と経済産業省が合計146億円の補正予算を植物工場関連事業に関して組んでいることから、規模が大幅に拡大すると見ている。

工場運営事業市場も、2009年度は新規工場建設市場と同様に大幅の伸びが見込まれる。2008年度は、完全人工光型工場が13億4千万円、太陽光・人工光併用型工場が14億4千8百万円と合計27億8千8百万円だった。これに対し、2009年度は既存工場の生産性の向上や、前年度に建設された大規模工場が軌道に乗ることもあって両工場合わせて42億4,200万円に上るという。

また、植物工場市場は2012年以降に離陸期を迎えると予測されている。「ユビキタス環境制御システム」の普及など、特に太陽光・人工光併用型や既存の施設園芸の分野でも高度化が進む一方、栽培品種も多様化の時代がスタートし、水耕栽培だけでなく、培地を使った養液栽培の普及もこのころから始まる見通しだという。

さらに、2016年度以降に大規模工場時代に突入するとしている。2017年度ごろにはフレキシブルな生産ラインも実用化の段階に入り、完全人工光型工場では多品種化や高付加価値製品、超高付加価値製品の生産が本格化し、新たな時代を迎えることになるとのこと。

市場規模については、新規工場建設市場は最終的に2018年度に100億円を超え、2020年度には129億円の規模に拡大する一方、工場運営事業市場は2013年度には100億円を超え、2018年度に200億円、2020年度には288億円になると予測されている。

ただし、これらはいずれもレタスを中心とした葉菜類換算によるものであり、実際には、2018年度ごろを境に葉菜類の占める割合は半数以下になる見通し。高機能・高付加価値製品やトマトやイチゴ等の製品単価の高いものも今後かなり増えていき、さらにバイオや医薬向けの超高付加価値製品市場も拡大していくことになるという。

国内新規植物工場建設市場規模予測(左)と国内植物工場運営事業市場規模予測(右) *資料 矢野経済研究所