i Couplerの個々の製品についてはやはり関連サイトを参照いただくとして、ここでは特に特徴のある最新の製品について紹介したい。

絶縁電源を1チップで実現「isoPower」

近年では、絶縁機能を必要とするアプリケーションに必要とされる電源もシステムの小型化、高密度化と低コストへの要求から、より経済的でスペース効率の優れた方法によりシステムを絶縁するという要求が強くなっている。

i Coupler技術は磁気による結合方式を使っているので、原理的に電力を絶縁された2次側に供給することができる。このマイクロトランスを使用して絶縁型DC/DCコンバータを作成すれば、1つの表面実装パッケージで電源とデジタル信号を同時に絶縁できるトータル絶縁ソリューションを実現することが可能となる。ADIのisoPowerテクノロジを使用した新デバイス「ADuM540x」ファミリは、2.5kVの絶縁定格を持つ4つの25Mbpsデータ・チャネルと500mWの絶縁型電源を集積しており、1パッケージでトータル・ソリューションを提供している。

このソリューションを使えば、図11に示すようにフォトカプラを使って絶縁電源システムで同様な性能を構成した場合に比べ、部品点数が1/7(21個から3個)、PCボード面積が約27%(578mm2から160mm2)で実現でき、トータルコストの削減にも貢献する。

図11:少ない部品点数によりボード面積を削減

isoPower技術の応用製品

1.絶縁型RS-485トランシーバ

次にisoPower技術を使った製品として、絶縁電源と絶縁RS-485トランシーバを1パッケージにした「ADM2582E」を紹介したい。

ADM2582Eは、特に産業機器などで絶縁を必要とするブロック間や機器間で行われるRS-485通信の機能部分(ラインドライバ・レシーバ)と絶縁電源部分をすべて集積化しており、小型化と同時に使いやすく、設計時間の短縮に貢献できる。また±15kVの高いレベルのESD耐圧性能を同時に備えている。このほかにも多品種の絶縁型RS-485をラインナップしているので、これも関連サイトのリンク先を参照願いたい。

業界初1チップ絶縁型USB製品

PCのペリフェラルであるUSBは、機器とPCとの間をつなぎデータをやり取りする通信ペリフェラルとして最も広く普及している。メディカル機器や産業機器、測定機器ではUSBに絶縁対応が必要な場合がある。最も新しい製品である「ADuM4160」はUSB2.0のフルスピードまで対応した物理層ブロックと信号絶縁をシングルパッケージにした業界初の製品である。特にメディカル用途に対応するため絶縁耐圧を5kVrmsに強化している。また医用機器の安全規格であるIEC60601-1の認定を現在申請中である。

ADIは今後もi Couplerテクノロジを応用したさまざまな分野での個別製品や、i Couplerテクノロジと親和性の高い機能を集積化しアプリケーションに最適化した機能デバイスを製品化していく予定である。

著者:高木秀敏
アナログ・デバイセズ
インダストリー&インフラストラクチャ・セグメント
インダストリー グループ マネージャー