絶縁(アイソレータ)の必要性

はじめに絶縁の必要性について簡単に説明する。産業用や医用機器などのアプリケーションでは、電気的絶縁が必要なアプリケーションが多く存在する。たとえば、電気機器では人体に電気ショックやその他の甚大な影響を与えるような高電圧を扱うことがあるが、その際に機器が取り込んだデジタル・データを通信によって外部に取り出したり、オペレータが直接、操作盤を操作する場合がある。このような場合は感電事故を防ぐため電気的絶縁が必要であり、高電圧部からの電流を遮断しデジタル・データまたは通信を可能にするために信号絶縁(アイソレータ)部品が必要となる。

図1:アイソレータを間に挟むことで電流が流れるのを防ぐことができる

実際には高電圧を扱う機器またはデバイスと低電圧部分とは、デジタル・アイソレータなどによって大きな電流フローが発生しないように電気的に絶縁する(図2)。

図2:高電圧部と低電圧部は電気的に絶縁する必要がある

機器間または回路ブロック間での電圧ポテンシャルに大きな差がない場合でも、たとえばアナログ回路とデジタル回路とがグランド共用となっている場合、アナログブロックにデジタルノイズが影響することがある。この場合は共通グランドを電気的に完全分離し(グランドループを遮断)絶縁することによって、不要なノイズの混入を防ぎシステム性能を改善することができる(図3)。

図3:共通グランドを電気的に分離することにより不要ノイズの混入を防ぐことが可能

従来の信号間絶縁方法

これまで最も広く使われていた電気的な絶縁方法は図4のようなフォトカプラによる信号絶縁である。

図4:フォトカプラによる信号絶縁

これは入力信号に応じたフォトダイオードの光の明暗変化を、シリコン樹脂などの絶縁体をはさんで一定の絶縁間隔(>0.4mm)をおいて設置したフォトトランジスタによって電圧の変化に変換させるもの(光学的結合)で、構造がシンプルで高い絶縁性能が得られる(図5)。

図5:フォトトランジスタとLEDを絶縁体を挟んで配置することで絶縁性を得る

このように内部構造がシンプルなため、デジタル信号を伝送するためには適切な外付け部品が必要となる。また、本質的にフォトダイオードは設定するIfと動作温度条件によって発効効率が時間経過に伴って減少するため、フォトトランジスタを電圧変化させるのに十分でなくなり通信も不可能となり寿命を迎える。このためシステムの寿命が重要である設計の場合、Ifと動作温度を十分考慮する必要がある。