アジャイルメディア・ネットワーク(AMN)は4月24日、8回目となるAMNブロガーイベント「インターネットが選挙を変える?」を東京都内で開催した。パネルディスカッションには河野太郎氏ら国会議員も参加、政治におけるネット活用への期待が示された。

米国のバラク・オバマ大統領圧勝の要因についてはさまざまな分析がなされているが、テレビ報道や記事で数多く取り上げられているように、その要因の1つとして「インターネットの活用」が挙げられている。日本でも、こうした大統領選におけるインターネット活用の事例を受けて、インターネットを有効に活用した選挙への関心が高まっている。

4月24日開かれた「インターネットが選挙を変える?~ Internet CHANGEs election ~」

アジャイルメディア・ネットワークでは、ネットの活用によって日本の選挙がどのように「CHANGE」していくのかを、選挙とマーケティング、それぞれの視点をもつパネリストらとともに考えることを目的に、8回目のAMNブロガーイベントとして「インターネットが選挙を変える?~ Internet CHANGEs election ~」を開催することにした。

「多様性を受け入れることで共感を拡大

フライシュマンヒラード・ジャパン代表取締役CEOの田中慎一氏

第1部では、フライシュマンヒラード・ジャパン代表取締役CEOの田中慎一氏がオバマ大統領の米大統領選におけるインターネット活用について、シンクタンクの構想日本の政策担当ディレクターである伊藤伸氏が日本の公職選挙法についてプレゼンテーションを行った。

田中氏はまず、オバマ大統領について、「一元的な価値観に基づいてディベートによって相手を説得するという欧米の伝統的方法とは異なる、多様性を受け入れる姿勢を示すことで共感を拡大していくというコミュニケーションの方法をとった」と分析。「情報過多により常識がなくなっていく時代にあって、いかに共感のメカニズムを作っていくかというテーマをネットで実現した」とオバマ大統領のネット活用の特徴について述べた。

さらにオバマ大統領のネット戦略について、(1)サイレント・マジョリティ(政治参加に積極的ではない国民の大多数)が動いた、(2)インターネットが動いた、(3)著名人が動いた、(4)国境を越えて動いた、の4つの動きをもたらしたとした上で、以下の3つが三位一体となったコミュニケーションがこれらを実現したと述べた。

  1. 土俵の設定

  2. 参画意識の醸成(支持者の囲い込み)

  3. 第三者からのメッセージ発信

オバマ大統領の三位一体となったコミュニケーション

1の「土俵の設定」では、オバマ大統領が「CHANGE・希望・原点回帰という土俵設定によって、無名・無実績・黒人という弱みを強みに変え、共和党の大統領候補だったジョン・マケイン氏の有名・実績・白人という強みを弱みに変えた」と説明。2の「参画意識の醸成」では、「『Yes, I Can』とは異なる『Yes, We Can』という言葉で、感謝・希望・自信といった気持ちを米国民に与えると同時に、インターネットを活用した献金システムによって、参加意識を作り上げた」と述べた。3の「第三者からのメッセージ発信」では、「オバマ・ガール」に代表されるような草の根でのオバマ支持のメッセージがなされたことを挙げた。

大統領当選後も周到なネット戦略

さらにオバマ大統領は、2008年11月での大統領選勝利から2009年1月に大統領に就任してから後も周到なネット戦略を実施。「Change.GOV」では、オバマ大統領への期待や特定の政策に関するコメント質問などを自由に書き込める仕組みを用意し、「世論・民意を透明化した」(田中氏)。また、大統領就任後に立ち上げた「Whitehouse.GOV」では、政策決定プロセスをオープン化し、共通認識の醸成・信頼構築・参加意識の確保などに取り組んでいる。

田中氏はオバマ大統領のネット戦略を「多様性に対応するためのコミュニケーション」だと総括し、「ネットがなければできなかった」と結論。「民意を作るという発想で、Changeという認識をネットを介し広めていった」と述べた。最後に「今後のWhitehouse.GOVがどう進展していくか、ネットと政治の関係が面白くなる」と期待を示した。