米OracleのVice President,Asia Pacific Embededd Business UnitであるMark Barton氏

日本オラクルは4月8日、同社の組み込みシステムソリューションに対する説明会を開催、米OracleのVice President,Asia Pacific Embededd Business Unit(EMB)であるMark Barton氏による組み込み市場のグローバルの現状などが説明された。

同氏は、何故Oracleが組み込み分野でビジネスを行うことについて、「ITの進化により従来のビジネスモデルに変化が生じている」と指摘。「特に日本は顕著で、エンタープライズの領域から航空/宇宙や医療、産業機器(FA)などに技術の展開が進んでおり、新たなビジネスモデルの登場と市場成長のチャンスが生まれてきているため」(同)と語る。そのため、同社では、2004年の5月に組み込み分野に特化した事業部を設立、OEMやISVなどのパートナー企業と連携して同市場でのビジネス展開を図ってきた。このパートナー企業は、すでにワールドワイドで2万社を超え、日本だけでも3,000社以上に達しているという。

ビジネスの進化により対象とする領域が拡大している

こうしたビジネスの現状について、同氏は「この4年間におけるアジア太平洋地域の成約件数は約500件、その内の250件程度がこの1年で成約されたもの」とし、「何故、Oracleが選ばれるのか。それは機器を販売を行うメーカーの販売モデルが変化したことによる、新しいビジネスコンポーネントへの要求に対しOracleが支援してきたからだ」と地道な取り組みが功を奏しているとした。

特に組込機器用のソフトウェアについては、システムが複雑化、高性能化するのとは反対に、コンテンツがリッチ化したが故に納期内に完成できなかったことや設計予算の超過、予定された性能や機能の要件が満たされなかったなどの問題が発生するようになり、「そうした問題にこそ、Oracleが、支援を行い解決を目指した取り組みを行っていく」(同)とし、「Oracleの統合されたプラットフォームを用いることで、パートナーはコストリスクの低減や納期の厳守が可能になるほか、パートナー同氏で成果物を提供し合えるエコシステムの構築が可能になる」(同)ことを特長として示した。

ハードウェアの高性能化に伴いソフトウェアの開発負担が増大している

同社は提供するソフトウェアを「Database」「Fusion Middleware」「Applications」の3つに大別しているが、その内、"Database"と"Fusion Middleware"が組み込み向けに提供されている。残る"Applications"については、「現在のところ、組み込み向けに提供するつもりはないが、将来的には提供する可能性もある」(同)と曖昧な答えにとどめた。

Oracleの提供する組み込み向け製品の概要(左の2つのカテゴリが組み込み分野の対象となっている)

日本オラクルのシステム事業統括本部 Embeddedビジネス推進部 部長である竹爪慎治氏

また、日本オラクルのシステム事業統括本部 Embeddedビジネス推進部 部長の竹爪慎治氏は、日本市場での取り組みを述べ、「組み込みデータベースを中心としたクライアント組み込みミドルウェアソリューション」「データ管理+ネットワーク連携を中心としたトータル・ミドルウェア・ソリューション」「組み込みビジネス向けトータル・サポート・サービス」の3つを柱にビジネスの展開を図っているとした。

Oracleの組み込み対応製品の一覧

中でも中心はデータベース製品であり、組み込み分野での使われ方も単体の機器のみといった使われ方から、ネットワークで接続されるFA機器やリモート管理への対応などが求められるようになってきたという。このほか、提供される製品はアプリケーションの実効基盤やオフィスでの支援ソリューションなど多岐にわたる。

同社の組み込み分野に対する特長は「フルレンジの組み込みデータベースとミドルウェアを提供」(Barton氏)すること。つまり、各種組込機器には「Edge/Client Solution」としてデータ収集やデータ管理などを行うデータ収集基盤を提供。そこから得たデータがネットワークを介してサーバに蓄積、ここには「Server Solution」としてクライアント/サーバ間のデータ同期やクライアント管理、大規模トランザクションの管理などを行うデータ流通基盤を提供。そして、そこから得られた知見を「Backend Solution」として、PDCA支援やデータ分析スキームのほか、他のシステムとの連携などを行うデータ活用基盤、いわゆる「次のビジネスのための支援」(竹爪氏)を提供している点にある。

Oracleの組み込みソリューションの全体像(同社ではこれを「プラットフォームソリューション」として提供しているという)

組み込みソリューションの体系図(下がデータベース部分、中央がミドルウェア部、上部がビジネスアプリケーション系)

また、各種ソリューションに対するパートナー側からのライセンス料などの支払いも特長的となっている。「柔軟な価格設定」(Barton氏)というように、価格設定は大別すると「ロイヤリティ・モデル」「ロイヤリティ+前払いモデル」「無制限の買い切りモデル」「上限付きの買い切りモデル」となる。エンタープライズなどでは、ライセンスを受けた段階でライセンス料などを払うのが一般的だが、「組み込みビジネスはパートナービジネスとして行っており、ディストリビューション契約を交わして、エンドユーザー向けに製品が納品された時点や問屋に卸された時点など、それぞれの事例に応じてロイヤリティを発生させる」(同)仕組みであり、契約は通常2年だが、「本当は20年位にしてもらえるとありがたい」(同)としつつも、「パートナーの売り上げが立たないとOracleの売り上げも立たないので、できるだけ早く市場に出てもらいたいというのが本音」(同)とした。

ロイヤリティは組込機器ごとに決定されるため、単価の安い機器については1個あたりのロイヤリティは相当抑えられることとなるという。

なお、竹爪氏は、「機器に入って付加価値を出していくだけではなく、パートナーのビジネスが広がっていくような取り組みも行っていく」としたほか、「日本では通信が5割程度を占め、それ以外として医療、FAといった分野が強い。こういった分野では、パートナーの先のカスタマのシステムに当社の業務システムが入っていることが多く、その連携が強みになっているのではないか」(同)としており、今後もそうした分野を中心にビジネスを拡大していくとした。

現在の案件の多くがメディカルや通信、FA用途という