日本オラクル 執行役員 CRM統括本部長 藤本寛氏

日本オラクルは3月23日、同社が提供するアプリケーション統合基盤「Oracle AIA(Application Integration Architecture)」のプロセス統合パックとして、同社の「JD Edwards EnterpriseOne」と「Oracle CRM On Demand」をSOAで連携する「Oracle CRM on Demand Integration Pack for JD Edwards EnterpriseOne: 見込みから受注」を提供開始した。同社は3月に入ってから立て続けにSaaSアプリケーション製品群を拡充してきたが、その核となっているのがOracle CRM on Demandだ。今回のJD Edwardsとの連携開始によって、OracleによるSaaSアプリケーション基盤が「本格的な運用フェーズに突入した」(日本オラクル 執行役員 CRM統括本部長 藤本寛氏)としている。SaaSは単なるバズワードからユーザのインフラへと大きく飛躍することができるのか - 藤本氏は「SaaSは、その基盤の上で動くアプリケーションが魅力的でなければ普及しない。今回の一連の強化策でその準備は調った」と自信を見せる。

今回発表を含む、CRM関連のSaaSソリューション強化ポイントは以下の通り。

  • Oracle CRM on Demand Release 16(3/2) … シングルテナントエディションの追加などサーバ運用環境の拡充、パートナー情報の管理機能、ディザスタリカバリ対応、業界向けテンプレートの拡充(金融、ライフサイエンスなどの業務支援)
  • Oracle CRM on Demand Integration Pack for JD Edwards EnterpriseOne(3/23)
  • Oracle Self-Service E-Billing On Demand(3/11) … 電子請求アプリケーション(単独アプリケーション)
  • Oracle Deal Management On Demand(3/16) … 提案価格適正化ツール(単独アプリケーション)
  • Oracle PRM On Demand … パートナー情報を管理するOracle CRM On Demandの一機能(パートナーへの配布はオプション提供)

共通する特徴としては、より直感的なインタフェースとなったことで優良顧客の囲い込みが行いやすくなったこと、業界向けのテンプレートが充実したことで分析機能が大きく改善したこと、他のアプリケーションとの連携機能が強化されたこと、などが挙げられる。 オラクルが日本市場に本格的にSaaSを投入し始めてから2年強が過ぎたが、この間、市場はどう変化してきたのか。同社でSaaS事業、そしてCRM事業を中心となって牽引してきたを藤本氏は「ワールドワイドでも国内でもすこぶる順調」であることを強調する。だが、「コスト削減、早期導入と早期効果、業務改革へのインパクトといった部分では(SaaSは)すでに大きな成果を上げており、顧客の目はどのくらい効果を体感できるかに移っている」とする一方で、課題として、「インターネットに大切なデータを置けないという顧客はいまだ多い。またパフォーマンスの課題は依然として大きな課題だ」とし、さらに「小さくシステムを作ってスケールアウトしようとする場合、SaaSだとかなり難しいことも多いのは事実」(同氏)という。

これらの課題に対するオラクルの答えのひとつが、今回の一連の機能強化リリースだとみることができる。SaaSを構成する最初の"S"、すなわち"Software"の機能を充実させ、さらに他SaaS事業者とのコラボレーションも見据えた強固なインフラを目指している。また、顧客のインフラの上に載せる形のSaaSである"@Customer"を業務システムの一部として提供を行っている。既存の顧客にはさらなる効果、そしてまだ掘り起こせていない顧客層の開拓 - オラクルのSaaSビジネスは今年、あらゆる意味で正念場を迎えるといえそうだ。

Oracle CRM On Demand R16の概要。今後、さらなるユーザの"深掘り"を目指すという