――ELLE ONLINEの強みはなんでしょうか。また、弱みとは

ビヨ氏 いまお話ししたように、ELLEという強いブランドを持っているのがELLE ONLINEの強みです。強いブランドという点では、ELLEがファッションやビューティー、スタイルを代表するブランドであること、そして、42カ国で展開する世界的に著名なブランドであることの2つの観点があります。また、当社がインターネットに強くコミットしていることも大きな強みです。同じファッション誌であるVOGUE(ヴォーグ)は、ネットの世界では300~400万UU。それに対して、ELLE ONLINEは全世界で2,000万UUを有する。これは広告主にとってもメリットを享受できることになる。

一方で課題をあげるとすれば、もっとUUが大きくてもいいかなと(笑)。また、これは、ELLEという大きなブランドであるが故の裏返しでもあるのですが、コミュニティ機能が打ち出しにくいという点がある。子育て、家族、親子の情報がないのも課題ですね。全世界の多くの女性が、子育てや出産にも関わるわけですが、これをELLEブランドで展開するには無理があります。

現在、ELLE ONLINEは、全世界でインターネットを利用している女性の10~15%に利用されていますが、このままで50%、60%、70%という数字に引き上げていくことはできない。ここでは、別のサイトを立ち上げていく必要があるでしょう。ELLE ONLINEとは別に、米国では「Woman's Day」というサイトを、フランスでは「Doctissimo」、英国では「Digital Spy」というサイトを持っている。ELLE ONLINEでは提供しきれない情報をここで提供しています。これをロシアや中国、日本でも展開していきたいと考えています。

当社がダイレクトにビジネスを行っている10カ国における基本戦略は、ELLE ONLINEによる女性向け情報の提供に加え、子育てといったELLE ONLINEとは違うポジションのサイトの確立、そして、クルマのサイトや男性向けの情報をバランスよく展開する、ということになります。

――日本では、どんなスケジュールで導入することになりますか

ビヨ氏 いまの経済環境が、スケジュールにどの程度の影響を及ぼすかという点に加え、あまり詳細に話しますと競合に情報を知らせることになりますから(笑)、限定的なお話ししかできませんが……。

ELLE ONLINEの強化とともに、eコマースへの参入には積極的に取り組む姿勢は変わりません。これらは、3つの観点から取り組みます。ひとつはラグジュアリーの面、もうひとつは子育て情報など、最後に、若い女性を対象としたモバイルでの展開。それぞれにELLE ONLINEとeコマースの機能を充実させ、2009年の終わりにはモバイルでの活動を開始する考えです。

いま、「ELLE girl ONLINE」を提供していますが、この読者の年齢層は、モバイル(携帯電話)での情報提供がもっとも受け入れられるユーザーでもありますから、ELLE girlを対象にしたモバイルサービスの「ELLE girl mobile」を軌道に乗せたい。日本で地下鉄に乗ると、ほとんどの女性が携帯電話を使っている。10代、20代、30代の数多くの女性が、携帯電話を使ってELLEのモバイルサイトを利用してもらうことに期待していますよ。私は、ラガルデールに入社する前には携帯電話会社のオレンジ(フランステレコム傘下)に在籍し、モバイルビジネスの経験があります。ですから、モバイル利用に先進的な日本の女性の動向はとても気になります。

日本では、もっと多くの方にELLEのオンラインサービスを活用していただきたい。利用者が増えることで、我々の収益も拡大することになる。ELLEの創刊は1946年、第2次世界大戦が終わったときで、「女性に多くの自由を」という理念を掲げました。ファッションだけでなく、女性のあるべき姿を提唱するという位置づけからスタートしたのです。その点でもELLEは、女性に対してオンリーワンとも言えるブランドとなっている。デジタルメディアが、このELLEの理念を拡大していくことになります。

将来的にELLEは、マルチメディアによって構成されるブランドになる必要があると思っています。フランスでは、すでにネットを使ったオークションや、テレビから情報を提供することも行なっている。そしてIPTVへも対応したい。これらがすべて、ELLEというブランドのもとに展開される。すべてのマルチメディア機能を持ったELLEというブランドがこれから構築されることになります。日本の女性の方々も、こうした発展をぜひ楽しみにしていただきたいですね。