――出版社にとって、紙媒体とネット媒体のそれぞれのポジションをどう位置づけるかは難しい課題です。ラガルデールグループ、そしてアシェット婦人画報社では、双方のメディアをどう捉えていきますか

ビヨ氏 雑誌とネットはジャーナリズムという点では同じですが、けっして同じメディアと捉えることはできません。ネットは速報性のあるニュースを提供できるとともに、長期的な視点での情報が提供できる。いまの流行も知ることができるし、過去の流れも調べることができる。実に、パラドックスに満ちたメディアです。これは雑誌メディアにはないものと言えるでしょう。

一方で、雑誌はプッシュ型メディアとして、編集者が伝えたいものをまとめて伝えることができる。つまり、女性がなにを望んでいるかを的確に捉えて、情報を提供することができる。我々の主要読者である女性にとっては、雑誌とネットの片方があればいいというのではなく、両方のメディアが必要であると考えています。

そして、加えるならば、「モバイル」というメディアは、雑誌やネットとはまた別の第3のメディアだといえます。パーソナル性が高く、モビリティがある。占いのサイトが、パソコンよりも携帯電話からの利用が多いのも、パーソナル性の高さを裏付けるものだといえるでしょう。モバイルによって、どんなことが提供することができるのかを、これから早急に確立する必要があります。

組織上は、メディアの違いを理解して、違うチームでなければならないが、ジャーナリズムの切り口や、女性になにが受け入れられるのかを追求するという点では、雑誌もネットもモバイルも同じ。この点が、組織を運営する上では大事であり、難しいポイントです。セパレートにはなっているが、つかず離れずの体制にしなくてはいけない。ビルは一緒だけど、階が違うぐらいの関係でしょうか(笑)

――たとえば、「ELLE」(雑誌)の読者と「ELLE ONLINE」(Web)の読者は、どのていど重なるのでしょうか

ビヨ氏 基本的には違う読者だと思っています。フランスを例にとると、ELLEのマガジンの読者は約100万人。これに対して、ネットの読者は250万人。しかも、雑誌にくらべて年齢層が圧倒的に若い。ですから、ELLEの雑誌の読者が必ずしもネットの読者であるとは考えていませんし、ネットだけの読者というケースもかなりある。

ただ、雑誌にはELLEという強力なブランドがある。このブランドを知っているために、ELLE ONLINEにアクセスするという読者はいるでしょう。また、逆のケースも考えられる。ネットビジネスは、雑誌ビジネスにとってもプラスになると考えています。強い雑誌としてのブランドを持っているからこそ、強調できる部分でもあります。雑誌とネットは、競合するのではなく、補完する関係にあるというのが私の考えです。