――デジタルメディア事業の業績が加速しはじめた2年前には、どんなことがあったのですか

ビヨ氏 日本と米国のELLE ONLINEは、10年以上に渡る長い歴史があるのですが、それらは個別に展開していたもので、グループ全体としてインターネットにフォーカスするという姿勢がありませんでした。

2年前にディディエ・キヨがラガルデール・アクティブのCEOに就任、私がラガルデール・アクティブに参加し、それによってデジタルメディア事業を加速する体制を整えたのです。フランス、英国、米国では、ネット企業を買収し、アセットを手に入れて成長させる地盤も整備。たとえば、現在のフランス版ELLE ONLINEは、その時に買収した会社が運営を行なっています。さらに、フランスで開発したものを共通プラットフォームとして、中国、ロシア、イタリア、スペイン、そして日本にも展開している。いまや、各国で展開しているELLE ONLINEは、ひとつのプラットフォームの上で推進する体制が整ったと言えます。

そして、グループ内でのベストプラクティスを見つけだし、それぞれの地域で最適化するといった試みも実践しています。たとえば、日本はタイアップへの取り組みが得意ですし、モバイル利用では先進性がある。また、フランスはサーチ技術、SEOに強い。米国では"サービス"が強いですね。人気の髪型や洋服、靴などを着せ替え的に見られるツールを提供し、ショッピングリストのサーチ機能なども提供している。着せ替え用のツールを使って、この口紅がいいなと思ったら、そのままeコマースサイトで購入するというように、新たなビジネスへの発展も期待できる技術です。

こうした各国の強みを吸収して他の国での展開に利用する。我々には数多くのベストプラクティスがありますから、これらを積極的に利用できることが強みでもあります。ですから、私自身、いつも全世界を飛び回っていますよ(笑)。

――2015年に、デジタルメディア事業が全体の15%の売り上げ構成比を占めるという目標に対して、成長エンジンとなる取り組みはなんでしょうか

ビヨ氏 おそらくメインは広告収入になるでしょうが、一方で、eコマースの成長にも期待しています。eコマースは、まだこれから始まるビジネスなので、パーセンテージを言える段階にはありませんが、当社にとっては大きなビジネスチャンスがあると思っています。たとえば、オバマ大統領夫人であるミシェルさんが着ていたドレスがどこに売っているのかを知るために、米国の女性はELLE ONLINEから情報を得て、それから購入しにいく。これを連動させるようなことができれば、我々のビジネスが広がる。雑誌の場合は、写真として掲載されたものをその場で直接購入する、という行動には結びつきませんが、インターネットではそれを直接の購買行動につなげることができる。我々にとって、ポテンシャルの高いビジネスだといえます。