研究の場から営利事業へと化したトマト花園

海賊版ソフトの問題は、中国において多くの人の道徳観を麻痺させている。多くのユーザーに親しまれている海賊版ソフトウェアは、低価格または無料という魅力のほかに、原版を改良したいという一部ユーザー需要にも応えたものとなっている。

初期のトマト花園でWindows XPに行われた改造は、使いやすさを追求したものであり、その目的もユーザー間での体験と交流に限られていた。そしてトマト花園は、ソフトウェアを研究するマニアたちが会する場所となっていった。

しかし、次第にこうした性質が変化していく。トマト花園は大量のユーザーを抱え、商業化の道をたどることとなった。

人気の高いWindows XPの「改良版」とあって、トマト花園版XPは多くのアプリケーションの広告または販売ルートとなり、中国国内のソフトウェア業者はこぞってトマト花園に投資し、新規のユーザーを求めたのだった。

トマト花園は、他社のアプリケーションを強制的にインストールさせるようにし、その対価として金銭を受け取った瞬間、単なるパソコンマニアの研究の場から営利事業へと変化してしまった。

しかし、ビジネスの世界における裏取引の法的リスクはあまりに高い。トマト花園の場合はたまたまそのリスクが現実のものとなってしまったが、今回のようなMicrosoft絡みでなくとも、現代の法治社会では海賊版業界の存続に限界があることは確かだ。

「もしトマト花園が存在しなかったなら、中国にここまで多くのPCユーザー、インターネットユーザーは出現しなかっただろうし、アメリカを超えるインターネット大国になることもなかっただろう」という記事を見かけた。中国において海賊版ソフトのユーザーが計り知れない程多いこと、海賊版Windowsなくしては、Windows OSの生き残りすら難しかったという現実を衝いたものだ。この2点は今回の事件の根本的原因であり、現状打開と今後の再発防止を図る上で、何としても解決されなければならない問題と言われている。