登場するか、MVNO業者

放送通信委員会は、周波数を持たない事業者でも、既存事業者の設備やサービスを提供してもらい、通信サービスを提供できる制度、いわゆるMVNO制度の実施に向け、「通信事業法」の改正を推進していると明らかにした。これが承認されれば、たとえば携帯電話最大手のSK Telecomのネットワークを、他社が借りて携帯電話事業を行うことが可能となる。

同委員会では実際にMVNOが実施されることになった場合における、いくつかの決めごとを提示している。それは「MVNO事業者が既存事業者に支払う対価は、市場が自律的に決定する」「MVNO事業者と既存事業者が90日以内に合意できるよう、既存事業者に義務付ける」「既存事業者は、ネットワーク提供時、差別や拒否、合意内容の不履行などは、事後的に規制する」といったことだ。

MVNO事業者に対しては、料金制度を引き下げる場合は、その事実を同委員会に対して報告すれば良いだけにし、自律的な料金引き下げを推し進めるとしている。また一度許可を受けさえすれば、市内/市外電話、インターネット接続サービスなど、多様な通信サービスを提供できるようにする。許可のための審査基準も緩和し、通信事業への進出が以前と比べ大変楽になる。

こうした規制緩和を行う目的は、通信市場の競争の活性化と、家庭の通信費負担を緩和する目的がある。飽和状態の市場状況に加え、このところの物価上昇と不景気で通信費に対する負担感が増す一方の韓国市場に、刺激を与えたい考えだ。

上記の改正案は、規制改革委員会などの審査を得たのち、国会に提出される予定だ。

周波数は競売で競り落とす時代に

今後、新規に割り当てられる予定の通信事業用周波数の中で、「経済的価値および技術的波及効果が大きく、競争的な需要が高い」(放送通信委員会)帯域は、現行の対価割当方式以外に、競売を通して割り当てできることになるかもしれない。

これまで韓国では、放送通信委員会などが事業者を比較審査することで、周波数を割り当てていた。しかしこれを競売制にすれば、周波数が最高価格を提示した企業のものになる。

こうした政策を行うのは、最近多放送と通信の融合サービスが多くなり、市場自体が変化しているためだ。これにより「周波数割り当ての対価を、事前に算定するのが難しくなってきている」(放送通信委員会)という。そのため周波数の価値算定も、市場に任せたい、というわけだ。

ただし競売制度により、周波数が安値で取引される恐れもなくはない。そのため最低価格は設定する。そしてその金額の10%の範囲内で保証金を納付するようにした。競売で支払われた対価は、放送通信発展基金の財源にするという。

またこうした制度で懸念されるのが、大手資本による周波数の独占だが、これに関しても、割り当てを行う際、競売に参加できる企業の範囲を決め、保有可能な周波数の条件を付加するなどして対応する。

これらの内容は、12月に開かれる公聴会において意見収集がなされ、必要であれば修正などが行われる予定だ。

韓国で「黄金帯域」と言われる800MHz帯域は現在、SK Telecomのみが使用している。これに対しKTFやLG Telecomなどの他社は、これを再割り当てするよう再三に渡って要求してきているが、SK Telecomでは最初に割り当てられた際、2011年まで利用可能という条件があったということで、これを拒否している。

しかし競売制度が承認されれば、SK Telecomが使用する周波数も競売にかけることが可能となる。KTFやLG Telecomだけでなく、それ以外の企業も競売に参加すれば通信市場に参入する道も開かれる。SK Telecomの黄金帯域独占時代が終わる際の他社の動きが大いに注目される。