1年余に渡りコミュニケーション改善ツールを探していたなかで、新妻氏が下した決断は、店舗運営に特化したことをうたうSaaS(Software-as-a-Service)ソリューションを採用することだった。具体的には、今年1月にネクスウェイとドリーム・アーツ、IIJ参加のもと発表された多店舗運営支援サービス「店舗matic」の検討を開始し、7月から全店舗と本部との間の新たなコミュニケーション基盤として稼働することを決めた。

このサービスは、店舗運営のなかでも、本部と店舗間のメールやFAXによる指示通達を確実に行うことを目的にしたもので、Webブラウザ上から指示通達の確認やスケジュールの共有ができることが大きな特徴となっている。

たとえば、連絡事項は、Webメールのように一覧で表示されるが、一覧の中から「今日作業が必要な連絡」だけは別の枠内に表示させ、すべての連絡を見ずとも優先順位付けが行え、作業の実行漏れを防ぐことができる。また、各連絡を店舗担当者が閲覧すると、その情報は自動的に本部担当者のもとへと伝わるとともに、閲覧済みとして別の一覧として表示される。また、作業やアンケートの実施状況などについては、店舗担当者がボタンをクリックしていけば、各店舗の実施状況やアンケートの回答が自動的に集計され、本部担当者が実施率を確認することができる。年間スケジュールをカレンダー形式で表示し、共有するといったことも可能なほか、店舗内の掲示版に貼ってスタッフが閲覧できるように、指示の一覧を印刷できる機能を備えるといった細かな工夫も施されている。

イオンフォレストが採用した「店舗matic」の画面。左が本部側、右が店舗側の画面。それぞれにとってプライオリティの高い情報が表示される

作業実施状況や結果内容確認など、通達事項の徹底がしやすく、またスピードアップできるところがポイント。ITに強くない担当者でもマニュアルなしで操作できるほど簡易なユーザインタフェースも特長だ

新妻氏は、特に「店舗運営の細かなノウハウが盛り込まれているほか、必要な機能を割り切っている」点を評価した。業務の効率化を図るうえでも、簡単なインタフェースを備え、どの店舗からも一定の水準の作業を等しく操作できることは欠かせない要素だった。実際、サービスの展開にあたっては、操作マニュアルを特に用意しなくても、画面を見てすぐに使い始めることができたという。

導入してまだ間もないが、事前検証で得た「店舗当たり30分/日の時間削減」という試算以上の効果が得られているようだ。新妻氏が大きな効果として挙げるのが、社員のモチベーションの向上だ。マネージャは以前より長く店頭に立てるようになり、ショップ・アドバイザーは、電話での通達確認に忙殺されることもなくなった。いわば、それぞれが創業の理念に則った店舗での取り組みに専念できるようになったというわけである。