非機能要求グレード検討会には現在、SIベンダのみがメンバーである。受注側と発注側の意識をすりあわせることが目的ならば、「メンバーに発注側企業がいてもよいのでは?」という意見もあった。だが「まずは、主要SIベンダ間で共通認識をもつことが大事」(重木氏)であることに加え、ITの専門知識が少ない発注側は、非機能要求を具体的に提示することが難しい。たとえば発注側から「災害でもしっかり動作してほしい」という非機能要求を提示されたとき、その「災害」とはどの程度のものなのか、また「しっかり」とはどの程度(グレード)を指すのか、あいまいな場合が多い。

だが、もしこのとき、ある程度の選択肢(メニュー)が用意されていれば、受発注者間での意識のすりあわせが容易になるだろう。「震度6以上の地震で、本社のサーバが損傷しても、最低限、基幹業務だけは継続させる。その場合の費用は○○円ほど」などの"グレード表"があれば、両者のコミュニケーションに齟齬を来すことも少なくなるはずだ。したがって同検討会では「最初の参加者はSIベンダだけだが、できるだけ早いうちに顧客側企業の参加をお願いしたいと思っている」としており、6社間でのある程度の案が固まった後、発注側企業にも参加を呼びかけていく予定だ。

日本を代表するSIベンダ間で、システム開発のインフラ部分における共通仕様が本当に策定されるなら、これはまさしく画期的な出来事と言っていい。6社はそれぞれ、個別の開発方法論やフレームワークをもつが、今後は同検討会での仕様策定を、それぞれの製品/サービスに反映させていくという。オープンな共通基盤の上に、独自の仕様を追加していくことで差別化を図る - 長いこと、"内製プロダクト"、"独自開発"が主流だった国内のシステム開発に、本当の意味でオープン化が訪れる第一歩なのかもしれない。

非機能要求グレード検討会の仕様が実現すれば、IT業界の発展だけでなく、安全/安心な社会インフラにつながっていくはず

左から、下間芳樹氏(MDIS 取締役)、寺尾実氏(NEC 執行役員常務)、重木昭信氏(NTTデータ 代表取締役副社長)、弓場英明氏(富士通 経営執行役 上席常務)、中島純三氏(日立製作所 執行役常務)、松下政好氏(OKI 常務取締役 CIO)

同検討会では半年後に中間報告を行い、1年後に「グレード標準案」を提示、そして1年半後の2009年9月まで、普及に向けた活動を展開していく予定。