Going Green - 省エネルギ対策

今はエネルギコストが大きな要素になっている、という話は別に珍しいものでは無いが、改めて整理する形でこれが語られた(写真6)。

いわく、エネルギコストは民間で毎年2000億ドル、アメリカの産業界では1000億ドルに達している(写真7)。CO2の排出量は1日あたり1600万トンに達しており(写真8)、またアメリカは全世界の人口の5%を占めるだけでありながら、26%のエネルギを消費しているという(写真9)。

写真6 「今はあらゆるもので省電力を考慮しなければならない」という語り口から始まった。

写真7 民間に関しては、このうちの90%が冷暖房費であるとの話だ。ちなみに冷暖房費のくだりでは乾燥機がプレゼンテーションに示されていた。こうしたものまで含むと、確かに冷暖房費は洒落にならない比率になるだろう

写真8 実はこの数字の根拠がいまいち不明。やや古いデータだが、環境庁のパンフレット「STOP THE 温暖化 2005」のp.13~14によれば、2002年度におけるCO2全世界の排出量は241億トンで、1日あたりだと6600万トンに達する計算。"1600万トン" という数値はどこから出てきたのだろうか

写真9 このエネルギの少なくない部分を自動車が占める、というのもこれまた有名な話

さて、ここから話は具体的な製品に移り始める。そのエネルギ消費に影響を与える自動車の燃費やCO2排出量は、ここ30年で次第に向上しつつある(写真10)。ここで大きな効果を及ぼしているのがエンジン制御を行うためのECU(Engine Control Unit)である。

写真10 これは見て分かりやすい部分。もっとも単純に32ビットマイコンを使えば高燃費で低CO2排出になるというわけではない

現在出荷されている自動車の半分には32ビットマイコンを搭載したECUが利用されており、このマーケットでトップシェアを誇っているのが同社のPowerPCである。こうしたプロセッサを使用して、より細かく燃料噴射を調整することで高燃費と低CO2排出を両立できるとした。

また昨年のFTF Chinaでは、上海の大学が燃料電池を使った自動車を展示するなど、こちらに向けての取り組みも行っていることも示した。ほかにもさまざまなDesign Challengeの中で同社の16ビットマイコンである「S12」ファミリを使ったケースもあるなど、自動車の分野で確実なシェアを築いていることをアピールした。

省エネルギに関しては、自動車のみならず、新しいMCU(Micro Controller Unit)を使ったパワーメータや、ZigBeeを使った温度管理などの分野も有用であることを示した。そうしたマーケットに向けての同社の新しい製品が、先日発表された「Flexis」シリーズである(写真11)。

Flexisシリーズは、要するに昨年発表した「ColdFire V1」をベースにさらに互換性を高めた8ビット/32ビットのMCUのラインナップである。最初の製品は8ビット品の「MC9S08QE128」と32ビット品の「MCF51QE128」という2つだった。どちらも待機時の消費電流が1μA未満と低消費電力であり、パワーメータやZigBeeベースの温度管理などに適した製品である。基調講演では、このFlexisシリーズを使った血圧計の動作例が示された(写真12)。

写真11 パッケージがピン互換で、I/Oも共通という点は「ColdFire V1」と同じだが、さらに開発ツールである「Code Warrier」を使うと同じプログラムをそのまま移行できるというあたりが新しい。厳密に言えば8ビットMCUの方は64kバイトを超えるメモリ空間にアクセスできる(メモリポインタが24ビットまで拡張された)などいろいろ違いがある

写真12 ここにFlexisシリーズを使う場合、ハイエンド品とローエンド品で基板そのものは共通化でき、ソフトウェアで差別化を行えるという仕組み。8ビット品の方は性能的なゆとりは少ないので単機能の血圧計となるが、その分安価に提供できる。ここに32ビット品を入れると、CPUの性能が大幅に高くなるので、ソフトウェアベースでさまざまな機能を追加することができる。価格は8ビット品が3.59ドル、32ビット品が3.80ドルである