皆さんに日頃ご愛読いただいているTECH+は「高度なテクノロジーであってもわかりやすく理解できる」「必要なテクノロジーが適切に選択できる」といった姿を目指すテクノロジーとビジネスの課題解決をつなげるメディアです。

TECH+は、主に「企業IT」と「テクノロジー」という2つのジャンルに分かれて記者が所属しており、それぞれの担当のニュースを日々追っています。

この企画は、そんなTECH+の記者としてITの先端に日々触れている編集部員たちが「バーチャルとリアルが高度に入り混じった未来」「病気にならない未来」「遊園地がITでより進化した未来」の3点からITが進んだ未来について徹底討論するというもの。

座談会にはTECH+編集部で記者として活躍する5名と営業部やイベント部の10万人記念企画メンバー3名が参加し、テーマに沿って自由にトークを繰り広げました。

「病気にならない未来」を考える

-- 前編では「ITが進んだ未来」について考えましたが、後編では「病気にならない未来」「遊園地がITでより進化した未来」の2点を皆さんと一緒に考えていきたいと思います。IT・テクノロジー両方の目線から、「健康経営の現状や医療の進歩、未来の健康の定義ってなんだろう?」「自分たちが80歳になる時の寿命や定年の年齢って変わっているか?」といったことを討論しましょう

早川:最近、行った医療関係の取材で記憶に残っているのは、ソフトバンク、Holoeyes、Dental Predictionの3社が行った「インプラント手術の遠隔支援」ですね。東京と大阪間を5Gで接続して、XR技術を活用する遠隔からの歯科手術の支援をするという内容で、東京のソフトバンク本社にいる指導医と大阪のなんばアップル歯科にいる若手歯科医を接続し、患者のインプラント手術の遠隔支援を実施していました。

髙橋: 手術を遠隔操作する技術について、最近耳にする機会が増えてきましたが、まだまだ現実味がないですよね。新型コロナウイルスの蔓延の時も感じましたが、今後も流行病などの影響で医療関係者の人手不足がひっ迫することもあると思うので、このような技術がもっと普及したらいいですね。

鶴海: それで言うと「ダヴィンチ」というアメリカ発の手術支援ロボットが最近注目を集めていますよ。患者に触れず、医師が患部の立体画像を見ながら遠隔操作でアームを動かす、ハイテク技術を駆使した画期的な手術法を確立したロボットで、日本でも2012年に保険適用となり、広まっています。

浅野: こんな風に遠隔操作のロボットが発達してくると、「名医」という概念はなくなるかもしれませんね。「ゴッドハンド(医者の手術の腕前などにおいて非常に優れた手腕、腕前、技術などを形容する語)」に集中するような気がします。

今井: 医療技術だけではなく、ロボット操作にも長けた「ゴッドハンド増殖計画」みたいなことが起こるかもしれませんね。

浅野: 本当にあるかもしれませんね。また、このロボットによる遠隔操作が浸透したら「サイバー診療科」のような新しい科が当たり前に設置されるかもしれませんね。

熊谷:私はデジタルを活用する上で最もメリットとなるポイントは「やり直しがきく」ことだと思っているのですが、これは医療の世界でも大いに生かされると思います。トライ&エラーが早くなれば、創薬や手術の練習など最初の一歩に時間が掛かる作業の効率がかなり上がると思います。

田鍋: 確かに今後はVR技術を活用した「完全没入型の手術練習」なども一般化するかもしれませんね。

熊谷: また、近い未来「オンライン診療」が広く普及するようになると思っています。定期的な通院をしている人も負担の軽減にもなりますし、高齢者の方や病院に来ることすら難しい病気の方も、オンラインであれば問題なく診療を受けることができます。

今井: 特に精神疾患系の病気を患っている方のカウンセリングなどにも活用できそうですね。生身の人間には話せないことでも、画面越しやアバター相手にだったら話せるという人も多くいるような気がします。

浅野:寿命は今後もどんどん伸びていくと思います。と言っても、実際の寿命が長くなるというよりも「健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)」が長くなるという側面が大きいと思います。

鶴海:確かにこれだけ医療や医療を支援する技術が発達したら、大抵の病気や怪我はミスなく治せるようになっていくかもしれません。健康寿命だけでなく、本当の寿命もどうせなら150歳くらいまで生きられるようになったらいいなと思います。

「遊園地がITでより進化した未来」を考える

-- 続いては「遊園地がITでより進化した未来」について討論していきたいと思います。スマートキー・電子チケットなどスマートデバイスの進化や空飛ぶ車・ドローン技術などのアトラクションへの応用といったことを考えていきましょう

髙橋:2016年にディズニーワールドに行った時の話ですが、「マジックバンド」という、ホテルの鍵、パークのチケット、ファストパスの連携などを1つで賄える腕時計のようなバンドを使用していました。当時は、今のようにキャッシュレス決済も浸透していなかったので、とても驚いたことを覚えています。

今井:そのマジックバンドですが、年々アップデートを繰り返し、より便利になっているようですよ。ポイントを貯めることで特別な体験が受けられるようなサービスなどもあったら、たくさん遊園地に行きたくなってしまいますよね。

浅野:今、挙がったようなサービスは、仕組みとしてはすごく簡単で、導入しようと思えばどこでもすぐに実施できそうなものばかりです。なので、私は「やる技術がない」のではなくて、「あえてやっていない」のだと思います。

鶴海:あえてやっていない?どういうことでしょうか?

浅野:テーマパークを楽しむという観点からすると、「便利すぎる」のもマイナスということです。家族や友人とアトラクションの順番を待っている時間のおしゃべりや、前日に自分で持ち物の用意をする時のワクワク感、こういったものが遊園地の魅力をかき立てているような気がします。

早川:確かにそういった時間は楽しいですよね。遊園地の話とは離れますが、カップラーメンは技術的には3分よりも早い時間で完成させることができるけれど、お湯を入れて麺が完成するまでに空腹感やワクワク感を増幅させるために、あえて3分という時間を短縮していないという話を聞いたことがあります。

熊谷:個人的に技術の発達でできるようになったらいいなと思うのは、遊園地内で遊んでいた1日の自分の様子を写真に撮ってもらって、最後に写真集として渡してもらえるサービスです。たまにジェットコースターなどに乗ると、落ちる瞬間の写真を撮ってもらえることがありますが、あれのように園内のカメラでご飯を食べているところや園内を歩いている様子などの写真も撮ってもらえていたらいいなと思います。意外とそういう瞬間って写真に撮れないですからね。

田鍋:その技術があれば、園の入退場などの管理もやりやすくなりそうですね。今までに何回来ているといったことや、前回いつ遊びに来たか、といった情報も知ることができたら楽しそうです。

--今回はたくさんの楽しいお話をありがとうございました。わたしも編集部員として日々、さまざまなテクノロジーに触れていますが、なかなか周りの方と共有する機会はなかったので楽しかったです。