ソフトバンク、Holoeyes、Dental Predictionの3社は8月27日、東京と大阪間を5Gで接続してXR技術を活用する遠隔からの歯科手術の支援の様子をメディアに公開した。東京(ソフトバンク本社)にいる指導医と大阪(なんばアップル歯科)にいる若手歯科医を接続し、実際の患者のインプラント手術の遠隔支援を行った。

  • インプラント手術の遠隔支援

インプラント手術とは、歯が欠損(虫歯や歯周病により抜歯された状態)した場合に行う手術で知識的にも技術的にも比較的難易度の高い処置といわれている。今回行ったのはインプラント治療だが、すべての症例に対応できるという。

まず手術の前段階として、Holoeyesのオンライン遠隔共有カンファレンスサービス「Holoeyes VS」を活用し、過去に手術を受けた患者のデータを基に作成した顎骨の3Dモデルで症例検討と解剖手順の確認を遠隔で行った後、同じ患者の3Dプリンティング模型を使って、若手歯科医が手術の一連の流れを体験した。

  • 3Dモデルと3Dプリンティング模型のイメージ

次のステップとして、実際に手術を受ける患者のデータを基に作成した顎骨の3Dモデルで同様の手順を踏む。VR空間で、歯茎の切開位置や神経の位置などを念入りに確認する。「経験を積んだ状態で初めての手術が可能で、若手歯科医師の自信につながる」と、遠隔指導を行ったDental Prediction 代表取締役の宇野澤元春氏は語った。

  • Dental Prediction 代表取締役の宇野澤元春氏(歯科医師)

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今回の手術は、遠隔(東京)からの指導医1名と、大阪の若手歯科医師の術者1名、介助者1名の計3名体制で実施された。具体的には、介助者がARゴーグルを装着し、Holoeyesの医療用画像表示サービス「Holoeyes XR」による患者の顎骨の3Dモデルが映っているAR映像を確認しながら術者を支援する。術者は、介助者によるサポートに加え、東京の指導医から音声で指導を受けながら手術を行う。

指導医は、介助者が見ているAR映像や、術者の視点のカメラ映像、手術室全体のカメラ映像で大阪の手術の様子を確認しながら的確な指示を送る。宇野澤氏は、「事前に念入りに手術の流れを確認しているので、術中は術者の気を散らさないようにあまり喋らず確認に専念している」と説明した。

3つのカメラを使用していることで、指導医だけでなく周りの動きを把握することができ、指導医は過不足なく手術の状況を把握することが出来ていた。また5Gの高速大容量と低遅延通信により、タイムラグが生じることなく円滑に治療を進めていた。

「今回のような遠隔で手術の支援を行うことには、3つのメリットがある」と、宇野澤氏は説明する。1つ目は、手術前に手術の流れを確認することに加えて、VR空間には場所問わず多数の人が集まることができるので、一対一の指導ではなく、一体多数の指導が出来ること。さらに指導医に関しても、全国各地のさまざまな指導医からノウハウを共有することが出来る。

2つ目は、術中にARグラスを付けることで3Dデータで口腔内を確認できること。一般的にはレントゲンやCTでの2次元的な画像データしか参考にできず、若手の歯科医師にとってはイメージがつきにくいものという。3Dデータは等倍率になっており、神経の位置も一目瞭然で、経験が少ない術者でも安全に手術を行うことが出来る。

そして3つ目のメリットは、術後に映像データを確認することで、患者への説明や術者へのフィードバックにつなげられること。データとして残していく事で、今後の遠隔手術支援の精度の向上にもつながる。

3社は今後、ビジネス化を視野に入れ、引き続き検証を進める方針だ。