Anniversary Updateの変更点 Microsoft Edge編
MicrosoftはWindows 10のメインWebブラウザーである「Microsoft Edge」の改良に取り組んでいる。残念ながらバージョン1511までのMicrosoft Edgeは、機能面で不満を覚える場面が少なくなかった。だが、Insider Preview版の間で着々と成長を進め、性能面では他のWebブラウザーと比較してバッテリー駆動時間がもっとも長いとアピールし(関連記事)、Webブラウザー内の動画再生機能も最大解像度/ビットレートが1080p/7,500bpsに対応していると公式ブログで説明している。
確かにMicrosoft Edgeはレンダリングも速く、スペックに余裕があるPCであれば快適に動作するWebブラウザーだ。その半面、Intel Core Mシリーズなど低スペックPC上で複数のタブを開くと、タブを切り替える際の応答性に若干の問題がある。個人的にはコンテキストメニューにアクセラレータキーが存在しないため、矢印キーで操作するのを煩わしく思い、デスクトップPCに限ってはサブWebブラウザーとして使用中だ。それでもビルド11082では、<戻る><進む>のコンテキストメニューに履歴を追加し、ビルド14291では、タブのピン留め機能や<貼り付けて移動>をサポートし、機能面の強化も行われている。
だが、バージョン1607におけるMicrosoft Edge最大の特徴は拡張機能の存在だ。ビルド14291からサポートを開始し、執筆時点では13種類の拡張機能をストア上で公開している。広告除去系の「AdBlock」「Adblock Plus」から始まり、Webサービスサポート系の「Amazon Assistant」「Evernote Web Clipper」「LastPass」「Office Oneline」「OneNote Web Clipper」「Pin It Button」「Reddit Enhancement Suite」「Save to Pocket」「Translator For Microsoft Edge」、機能拡張系の「Mouse Gestures」「Page Analyzer」がインストール可能だ。この数は順次増えていくことだろう。
例えば「AdBlock Plus」をインストールした場合、メジャーな広告はブロックされるが、実のところ国内Webサイトを見て回る場合、あまり意味をなさない。下図に示したとおり多くの広告がそのまま表示されてしまう。これはAdBlockおよびAdBlock Plusが、広告のURLをマッチするリストとして作成したフィルターを購読していないからだ。今回は豆腐氏の「豆腐フィルタ」を購読してみると、ご覧のとおり、主な広告は除去される。ただし、AdBlock Plus拡張機能 バージョン0.9.4.0では、購読設定が保存されない問題が確認できた。
豆腐フィルターに限った話ではないが、広告フィルターリングツールは、時にして必要なJavsScriptやCSSなどをブロックし、Webサービスが意図するとおり動作しないことがしばしば発生する。また、過剰に広告をブロックしていくとWebサイトの運営が滞る可能性もあるため、バランスを考えつつ、利用してほしい。
さて、一見するとMicrosoftが主導してソフトウェアベンダーに拡張機能をリリースさせ、Mozilla FirefoxやGoogle Chromeと違って、開発者が活発にコミットする状況ではない。だが、筆者はこれでいいのではないかと考えている。例えば他のWebブラウザー向け拡張機能ストアを目にしても、必要な動作を提供する拡張機能を見つけるのは一苦労だ。
スマートフォン系アプリケーションのオンラインストアも珠玉混合となっている様を見ると、一定のフィルターを掛けつつ、本当に必要な拡張機能だけがストアに並ぶ状態が利用者としては好ましい。今後、開発者がMicrosoft Edgeの機能拡張を積極的に作成するか否か判断できないが、日本マイクロソフトのエバンジェリストを務める物江修氏のブログでは、Microsoft Edge拡張機能の開発方法を説明している。開発に興味がある方は1度ご覧頂きたい。
なお、Windows 10 MobileのMicrosoft Edgeは、拡張機能のサポートが見送られる可能性が高い。Windows 10 Roadmapを確認すると、以前はあった「Microsoft Edge - Extensions」の項目から"mobile/handheld"が取り除かれているのだ。海外のIT系ニュースサイトでは以前はあったと報じているため、Anniversary Update直前で仕様変更に至ったようだ。確かにスマートフォンのWebブラウザーで拡張機能をサポートしているのは希であり、iOSのSafariもPROXYサーバーをローカルに作成するなどして、機能を実現しているのが現状である。Microsoftの判断は致し方ないが、"異なるデバイスでも同じUX"という観点から見ると少々残念だ。