7月28日のデビューから何かと話題のBYD「ラッコ」。発表直後から、早くも「ここがいい」だの「悪い」だの、また「おすすめのグレードはどれ」かなど、さまざまな記事が巷にあふれているけれど、クルマの価値ってやっぱり、乗ってみないとわからないでしょう。

というわけで、メーカー主催のメディア向け試乗会に参加してきた。

富士スピードウェイホテルを起点に8月3日~5日の3日間にわたって開催された試乗会には、なんと180名ものジャーナリスト(筆者もその中の1人)が参加したというから、注目度の高さがわかる。見て、乗って、走った印象を素直にお伝えしよう。

  • BYD「ラッコ」

    乗ってわかった「ラッコ」の○と×

BYD「ラッコ」の写真を一気に見る

クルマとしてはスーパーハイトワゴンそのもの

BYDらしく海洋生物の名前を車名として採用した「ラッコ」(RACCO)。海外自動車メーカー初となる日本の「軽自動車」規格専用設計で、EV(電気自動車)専用スーパートールボディと両側スライドドアを採用しているのが特徴だ。

ボディは全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,800mm。普段、街中でよく見かける軽スーパーハイトワゴンそのもののカタチとサイズ感だ。日本専用だからといって、いたずらにギラギラしたフェイスをまとっていないのは“英断”で、無国籍(といっても日本のみだが)かつすっきりとした見た目は、鼻先のBYDのブランドロゴを取り外して「H」や「S」、あるいは「D」のマークが入っていても、違和感がないほどだ。

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モーターは最高出力47kW、最大トルク160Nmという軽自動車らしいパワーの持ち主。BYDのEV専用プラットフォーム「e-Platform 3.0」をベースとし、同社お得意のリン酸鉄リチウムイオン(LFP)バッテリーを車体構造の一部として組み込んだ「CTB」(Cell to Body)技術を採用している。さらにそこに、電子制御ユニットやDC-DCコンバータ、車載充電器、高電圧制御ユニット、バッテリーコントローラー、エアコン制御ユニットなどを統合した軽自動車専用技術「X-PACK」を組み合わせた。

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ボディの約70%に高強度鋼板を採用したり、高級車に使われるレーザー溶接を採用したりすることで、スーパートールと左右電動スライドドアの組み合わせという難しい構造にも関わらず、日本の新車安全性能評価プログラムである「J-NCAP」で最高レベルを獲得できる軽EVの実現を目指したという。

グレード構成は、バッテリー容量22.4kWhで航続距離210kmのエントリーグレード「200」(214.5万円)、同じく35.8kW/320kmの中間グレード「300Plus」(239.8万円)、装備違いで最上級の「300Premium」(249.7万円)の3種類。CEV補助金は一律15万円となっている。

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走りは軽自動車レベルを軽々と超越

試乗した場所は、日本の象徴である富士山の麓(この日は見えなかったが)にある富士スピードウェイ周辺の一般道。試乗車は淡いクリーム色の「チーズイエロー」をまとった最上級モデルの「300premium」だ。

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スイッチではなく、見慣れたエンジン車のような楕円形のシフトレバーを「D」に入れて走り出すと、すぐに前段で述べた車体の剛性感がしっかりと伝わってきた。背が高く、左右にスライドドアを備える開口部の大きなボディであることを忘れさせてくれる。これはもう、軽自動車のレベルを超えた、登録車(いわゆる普通車)並みのフィーリングだ。

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一方のモーター出力は軽自動車レベルであり、車重が1,200kgもあるので、一般的にEVでいう「すごく速い」とか、「加速感がすばらしい」といった感じではなく、走り的には静かで普通。ただし、そこに硬い殻に包まれたどっしり感というか、そうしたものが加わるので、新しい乗り物に乗っている感は味わえる。

ドライブモードはシフトレバー横のダイヤルで「エコ」「ノーマル」「スポーツ」「スノー」が選べる。回生ブレーキのレベルは「スタンダード」と「ハイ」の2つだ。

  • BYD「ラッコ」
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1人で乗る時はスポーツモード&ハイ、家族を乗せる時はノーマル&スタンダードの組み合わせがよさそうに感じたが、ハイにしても強い減速Gが発生せず、ワンペダルのように停止までは持っていけない設定で、フットブレーキを使用して停車するしつらえだ。重い車重に合わせて前後ディスクブレーキを採用している。

ちょっと気になったのは、標準で取り付けられていた中国「サイルン」社製の165/65R15タイヤ。決して扁平率が高いわけではないのだが、路面からのインフォメーションが薄く、ちょっと硬いかな、という印象だった。荒れた路面を通過する際にはステアリングセンターも緩く感じてしまう。試乗後に担当者に聞けば、タイヤ選びには苦労したと語っていた。

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考え抜かれたインテリアと機能

インテリアについては、同社の上級モデルのようなちょっとクセのある独特のデザインではなく、シンプルで上質なイメージ。物理ボタンが多く、夜間照明までもが美しい、使いやすいものに仕上げられている。

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300Premiumのシートは肌触りのいい合皮で、色はブラック&ベージュの2トーン(ブラックも選べる)。300plusはブラックの防水ファブリック、200はブラックファブリックだ。

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前席のシート調整は電動式(300Premiumのみ)で、標準装備のチルト(上下)&テレスコピック(前後=軽では稀)機能付きステアリングと合わせて調整すれば、ドライビングポジションがぴたりと決まるのがいい。

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リアシートは移動量の大きな前後スライドやチップアップ格納機能を備えていて、さまざまなアレンジが可能。その多才ぶりはホンダ「N-BOX」もびっくり、というレベルだ。

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後席用トレーや水滴受け付きの傘置きという便利小物だけでなく、幼児置き去り検知(警告後に救助されない場合、エアコンを自動作動させて命を守る)や挟み込み防止機能付きドアウインドウなど、高度な安全装備も備えている。

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「便利だな」と思ったのは、左右電動スライドドアに備わるハンズフリー機能だ。キーを持ってクルマに近づくと、地面に円形のLEDマークが投射され、それを踏むだけでドアを開けることができる。床下に足入れするキック式では空振りに終わって何度もトライする姿を見かけることがあるが、こちらはそうした失敗が少ないのだ。

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出足は好調、今後は?

ラッコの販売が好調なスタートを切ったことは別稿でお伝えした通り。ただし、日本の軽自動車ユーザーは、近所にあるディーラーなどとの結びつきが強く(特に地方では)。日常の足代わりとなる軽自動車のため、遠くにあるBYDの店舗まではなかなか足を運ばなさそうなイメージもある。

一方で、個人的には、開発スピードの速い中国メーカーなのだから、スタンダードモデルだけでなくカスタムバージョン、さらには軽トラバージョンやオープンバージョンなどがあれば面白くなってくるのでは、などと勝手に思っている。

BYDでは年間1万台を目標にラッコを売っていきたいとしている。

【フォトギャラリー】BYD「ラッコ」