日産自動車の新型「エルグランド」は、トヨタ自動車「アルファード」のライバルとなり得るのか。これまでサイズ、デザイン、車内、走りで両モデルを徹底比較してきたが、今回は「まとめ」として、アルファードの現在地を押さえつつ、エルグランドを選ぶべきはどんな人なのかを考えてみた。
新型エルグランドと現行型アルファードの写真を一気に見る
ラージサイズミニバン市場の現状は?
日本のラージサイズミニバン市場が“アルファード一強”であることは間違いない。2025年の登録車(軽自動車ではない自動車)販売台数ランキングを見てみると、アルファードはなんと8位に入っている。
200~300万円台で買えるヤリス、カローラ、ノートなどのコンパクトカーや、セレナ、ノア/ヴォクシーといったミドルサイズミニバンに肩を並べる形で、500万円台半ば~1,500万円の超高額車であるアルファードがランクイン(年間8万台以上売れている)していること自体が驚異的だ。兄弟車であるヴェルファイアの台数を足すと、毎月約1万台が売れていることになる。
街中や高速道路で頻繁に見かけるだけでなく、日本の中枢である霞ヶ関周辺をはじめ、高級ホテルの車寄せやタワマンのパーキングに行ってみると、そこはアルファードだらけだった、などという状況も、もはや珍しいことではないのだ。
アルファードが大人気な理由
アルファードは若者からファミリー、政治家やVIPなど、幅広い層から愛されている稀有な高級車であるといえる。庶民派のファミリーにとって、豪華でリセールバリューの高いアルファードは魅力的で、「残価設定ローン」を使えば比較的簡単に手に入れることができる(いわゆる残クレアルファード)というのも有名な話だ。
オラオラ感のあるデザイン=ステータス性やアルファードに乗る=成功者というイメージを抱くユーザーも多く、周りの仕事仲間や友達に自慢できることから若者にも人気が高い。いまや「いつかはクラウン」ではなく、「いつかはアルファード」というのが一部でモチベーションになっている。
いわゆるお金持ちの政治家や芸能人、企業のVIPたちに愛されるのは、圧倒的に静かで広い室内空間(特に2列目シート)によるところが大きい。移動中に仕事をこなしたり、豪華なシートでくつろいだり、睡眠時間に充てたりできるアルファードは、彼らにとって最高のビジネスツールになるのだ。
とにかくアルファードは、利用するみんなが満足できるクルマに仕上がっているのである。
あえてエルグランドを選ぶのはどんな人?
大型ミニバンに乗るなら、大人気のアルファードを選んでおけば間違いないのでは……。こんな考えがあるかもしれないが、新型エルグランドを取材してみると、必ずしもそうとは言えないことがわかった。エルグランドを選ぶ意味は十分にあるのだ。
新型エルグランドを選ぶべきはどんな人か。以下にいくつか例示してみたい。
アルファードかぶりを回避したい人
まず、「他の人と被るのが絶対にイヤな人」だ。多くの人が乗っているアルファードは、間違いなくいいクルマだとは思うものの、人とは違うクルマに乗りたい……こんな風に考える富裕層、個性を主張したい人は間違いなくいるはず。新型エルグランドは、彼らにとって最高の選択肢となる。
ギラギラしたくない人
次は「ギラギラ、オラオラ系の押し出し感に違和感を感じる人」だ。そうしたエクステリアに対して、上品さが足りないとか、自分のキャラクターに合わないと感じる人は、エルグランドを考慮してみる価値がある。
エルグランドはリニアモーターカーを彷彿させる未来的かつシンプル・クリーンなデザインが特徴。さらには日本の伝統工芸である組子のような精緻なデザインがフロントグリルやホイールに採用し、知的なイメージを与えることにも成功している。
従来型ラグジュアリーに飽き足りない人
3つ目は、「従来のクラシカルな高級感ではなく、新しいデジタルラグジュアリーを求める人」だ。
エルグランドのインテリアは、従来の高級車が採用してきたタンやホワイトでなく、“紫檀”という独特の内装色を採用している。紫と青の組み合わせで、日本の美意識に息づく気高さを象徴する色を使ったというのが日産の説明だ。
さらに、和モダンな間接照明などで新たな世界を表現する一方で、14.3インチ×2の大画面統合型インターフェースディスプレイを搭載し、そこに走行に関する各種データやカメラ画像、ナビなど多くの情報をカラフルかつわかりやすく配置することで、最新のデジタルモデルらしい仕上がりを見せている。
運転の楽しさを求める人
4つ目は「運転の楽しさを求める人」。
新世代アクティブノイズコントロールや高遮音ボディ、インテリジェントダイナミックサスペンションで圧倒的な静粛性やフラットな乗り心地を達成しているのが新型エルグランドの売り。第3世代e-POWERによる大排気量V8エンジン並の500Nmを超えるビッグトルクと、コーナーや加減速時の姿勢をデジタル制御でコントロールするe-4ORCEの組み合わせにより、あらゆる場面でドライバーズカーらしい魅力的な走りが楽しめる。後席に乗る人のための“運転手さん”ではなく、純粋なドライバーとして運転自体を楽しめるクルマに仕上がっているのだ。
まとめると、新型エルグランドを選ぶのは、洗練されたデザインや最先端の移動の質感、他にない特別感を味わいたい人だといっていいだろう。あとは価格。執筆時は未発表だが、アルファードと同じ価格帯で登場するであろうことは想像できる。そうなるとガチンコの一騎打ちになって、アルファード一強という体制にも変化があるはず。日産の“逆襲”が始まるのだ。












