日産自動車が電気自動車(EV)の初代「リーフ」を発売したのは、今から約15年前の2010年12月だ。この間、日本でEVが本当の意味で普及することはなかった。2025年10月に出たばかりの3代目リーフは、EVの在り方を変えられるのか。試乗で実力を探った。
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新型の狙いは「スーっと滑らか」
初代リーフは、まだ自動車市場にEVが少なかった2010年に登場した。ガソリンを一切使用しないクルマの登場はインパクト抜群で、「ついに次世代の自動車が登場したか」と思ったものだ。2017年のフルモデルチェンジで登場した2代目リーフは、エクステリアも含め大幅な変化を遂げていた。
初代、2代目とハッチバックだったリーフは、3代目でクロスオーバーSUVに姿を変えた。先代モデルに比べ全長は短く、全高は低く、全幅はわずかに広くなっている。歴代モデルとサイズ感が大幅に変わったわけではないが、新型は大きく立派に見える。
日産 商品戦略本部 商品競争戦略部 チーフプロダクトスペシャリストの遠藤慶至さんは、新型リーフの開発の狙いについてこう語る。
「これまでリーフに乗っていただいた方のうち、93%は満足と答えています。ただ、EVであることを理由にリーフを選ばなかった方に対しては、航続距離やインフラ、充電時間などの課題を改善していく必要がありました。そこで最も注力したのは、『スーっと滑らか』な、これまでよりも快適なドライブフィールと、航続距離を心配せずに安心して乗れるEVであるという点です」
「スーっと滑らか」はシンプル過ぎてイメージしにくいかもしれないが、具体的にいうと、日本の路面環境に合わせて、スムーズで滑らかな、いつまでも乗っていたいと思わせる快適な乗り心地を目指したとのこと。また、アクセルペダルを離したときに減速する「回生ブレーキ」の効き目を調整するパドルを採用するなど、快適なドライブ体験を追求した。日産のお家芸ともいえる「プロパイロット2.0」(メーカーオプション)は安心感が高い。
試乗した「B7 G」グレードの航続距離は685km。EVとしてはかなり長い。「B7 X」グレードなら702kmだ。充電時間も短くなっており、バッテリー残量10%の状態から80%まで戻すのにかかる所要時間は90kW充電器なら約45分、150kW充電器なら約35分だ。
Googleマップと連携した「ニッサン コネクト インフォテインメントシステム」があれば、バッテリーの昇温や冷却を自動制御し、エネルギー消費を最適化・効率化したルートプランを案内してくれる。目的地まで電費を稼げるルートで走行できて、最適な充電場所を提案してくれるので、バッテリー切れの不安なくロングドライブを楽しめるはずだ。
EVだけど、ワープするような加速感を追求しない理由
乗り込むと、ホワイトとブルーパープル(ネイビーに近い)のコントラストが効いたインテリアに目を奪われる。シート(座面)の先端だけ濃い色味とすることで、車内を広く見せる効果も得られるそうだ。定番のブラックやグレーの配色も選べる。
電源をオンにしてアクセルを軽く踏むと、開発陣の言う通り「スーっと滑らか」に走り出す。進化したEVパワートレインは、アクセル操作に対するレスポンスと踏み込み加減に合わせた力強い加速を両立させているとのこと。さらに、1/10,000秒のモーター制御により、ギアの接触ショックを低減し、滑らかな加速を実現している。
アクセルをベタ踏みしてみたが、車体が上下左右に振られることは少なく、どこまでも滑らかだ。ガソリンエンジン車にはない、EVらしいスムーズさは健在だった。
ただ、素早い加速力とはいっても、高性能なスポーツカーでアクセルを踏み込んだときのような、カラダがシートに押し付けられる強烈な加速をすることはなかった。この加速性能について、乗り心地を担当した技術者は次のように説明する。
「誰でも快適に過ごせることを重視して設計しています。穏やかで柔らかい乗り心地で、心地いいと思ってもらうことを最優先しました。例えば高速道路での合流時にアクセルを踏み込んだとき、カラダがシートに押し付けられると不快に感じる方もいると思います。そのようなスポーティーな走りではなく、ラグジュアリーな乗り心地でありながら、素早い加速力を感じられるようにしています」
プロパイロット2.0も試した。驚いたのは、ハンドルから手を離して走行しているとき、ハンドルはほぼ動いていないにも関わらず、クルマとカラダが左右にブレにくくなっていることだ。「ラックアシスト式電動パワーステアリングを採用し、剛性は48%向上しています。ハンドルが動いていないように見えても、左右の揺れをクルマやドライバーに伝えないように、ステアリング内部で微調整をしながら走行しています」と開発担当者は話していた。
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プロパイロット2.0はハンドル左側の青いボタンを押すと作動する。制限速度よりも遅いクルマが前にいるときには「追い越し」を提案してくれて、その際にはボタンひとつでウインカー操作と進路変更を自動で行ってくれる
誰でも満足できるEVになった?
細かい点だが、気になる点もある。補助金でかなり安くなるが、もともとの車両価格は600万円近い高価なクルマであるにも関わらず、パワーウインドウをオートで開閉できるのは運転席のみ。それ以外の席はすべて、ボタンを押しっぱなしにしないと最後まで開閉できなかった。
この点について聞くと、遠藤さんからは「開発にかけられる予算をどこにつぎ込むか、優先順位を決めました。その中で、モーターやステアリングなどの走行性能を優先しました。その結果、オートパワーウインドウの採用は運転席のみとなってしまいました。今後はお客様の声を聞いて、改善できる部分は見直していきたいと思います」との回答が得られた。
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調光パノラミックガラスルーフ(遮熱機能付)は新型リーフの目玉装備だ。光の入り方を調整可能で、全体の半分ほどが閉じた状態にすると、写真のように「LEAF」の文字が現れる。光の差し込み具合によってはリアシートに影文字が投影されるというのも憎い演出だ
全体的に見れば、新型リーフのEVとしての完成度はかなり高い。走りも使い勝手も十分に満足できるレベルだ。これまでいくつかのEVに乗ってきたが、その中でもトップクラスといっていい。
遠藤さんはこう語る。
「EVの開発については、初代リーフの登場から15年以上の知見と経験、実績があります。お客様の意見を取り入れつつ、乗りやすいEVを目指してきました。EVの上位モデルにはアリアがあり、軽EVのサクラもあります。新型リーフはEVにおけるスタンダードになることを目指しています。ターゲットは40~50代で子育て中の家族、あるいは子育てを終えた家族としていますが、あらゆる世代を魅了するチカラが新型リーフにはあると思います。どなたにもご満足いただけるはずです」
新型リーフには、2025年1月末時点で約5,000台の受注が入っているという。バッテリー容量が小さく、価格の安い「B5」というグレードの受注は始まったばかりだ。
例えば「B7 G」は航続距離685kmで価格が599.94万円だが、「B5 S」であれば航続距離521kmで438.9万円と、より安価に購入できる。ここから国と自治体の補助金を差し引くと、住んでいる地域によっては200万円台から新型リーフが買えてしまう。選択肢が増えれば、より多くの受注が入ることも予想される。
15年にわたってEV界をリードしてきた日産リーフは、3代目の登場により、いよいよEVのスタンダードになれるのか。注目したい。

















































