電気自動車(EV)の普及は進んでいない。日本の新車販売に占めるEVの割合は2%未満にとどまっている。そんな状況下で新型「リーフ」を発売する日産自動車は、どんな販売戦略を描いているのか。EVに対するユーザーの不安は解消できた? 事前取材で聞いてきた。
EVではなく自動車として主流に?
日産自動車が世界初の量産EV「リーフ」を発売したのは15年前の2010年。それから15年を経て3世代目となる新型リーフを発売するわけだが、クルマのユーザーがEVに対して抱く懸念、不安は、初代リーフ発売時と大して変わっていない。
ただ、日産は新型リーフの出来栄えに自信を示しており、今後は「EV車種間の競争にとどまらず、パワートレイン種別を超えて『次の主流になるクルマ』の主導権争いに参入」するとしている。つまり、他社のEVとシェアを争うのではなく、内燃機関搭載車やハイブリッド車などを向こうに回して戦いを繰り広げたい、という意気込みなのだ。
走行距離への不安は解消できた?
では、ユーザーの不安に対応することはできたのだろうか。まずは走行距離を見てみよう。
新型リーフには「B5」と「B7」がある。バッテリーが大きいのはB7で、容量は78kWhだ。
日産では初代リーフ発売から蓄積してきたビッグデータを活用し、ユーザーに最適なバッテリーサイズを割り出したとのこと。「街乗りが主体で長距離移動は週末くらい、充電は普通充電で」という一般的なユーザーから、「長距離移動がメインで急速充電を多用する」というハードなユーザーまで、幅広い使い方に対応可能なところを狙ったそうだ。バッテリーは大きすぎると重くなり、「電費」(EVにとっての燃費のような概念)に悪影響を及ぼす。とにかくたくさん積めばいい、というものではなく、バランスの取れた容量にすることが重要だ。
B7には通常版の「X」と装備充実の豪華版「G」の2グレードがある。一充電走行距離(フル充電でどれだけ走れるか)は以下の通りだ。
Gグレードは685km(プロパイロット2.0装着車は670km)。車両重量:1,920kg、タイヤサイズ:235/45R19
Xグレードは702km(同687km)。車両重量1,880kg、タイヤサイズ:215/55R18
Xグレードの「702km」には開発陣の意思を感じる。600km台と700km超では見え方が違うからだ。
現行型リーフ(2世代目)はバッテリー容量の大きい「e+」というタイプ(60kWh)で一充電走行距離が450km。比べてみると長足の進歩だ。現行型と新型ではホイールベースがほとんど変わっていないのに、バッテリー容量が18kWhも増えているのもけっこうすごい。
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新型「リーフ」のホイールベース(前輪と後輪の間の長さ)は2,690mm。現行型は2,700mmなので少し短くなっているのだが、床下に積むバッテリーの容量は増えている。ひとつのバッテリーモジュールに、いかに多くのバッテリーセルを積むかという部分に、日産の知見がいかされているそうだ。その結果としてモジュールの数を少なくできるので、部品点数の低減につながり、コストも下げられるのだという
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日産初の装備となる「調光パノラミックガラスルーフ(遮熱機能付)」も、航続距離を伸ばすことに貢献している。遮熱機能(断熱効果もあり)が高いのでエアコン(冷房も暖房も)を強くしすぎなくても済み、電気を節約できるからだ
セル特性の改善と温調システムの制御(バッテリーの温度を賢く管理する)により、バッテリー劣化性能も改善している。つまり、長くクルマに乗ってもバッテリーがへたりにくくなった。日産の技術者に聞いた話では、一般的にバッテリーの劣化を早めると言われている急速充電を繰り返しても、バッテリーの劣化速度はそこまで変わらないレベルにまで性能が上がっているそうだ。
充電時間は短くなった?
新型リーフは充電の性能も上がっている。
EVの充電は、受け入れ側(クルマ側)の性能も大事。充電器の出力が高くても、クルマ側の性能が追い付いていないと、最大限の能力は発揮できない。現行型リーフは最大で100kWくらいの出力までしか受け入れられなかったそうだが、新型は150kWの急速充電器に対応している。
その結果、バッテリー残量10%で充電を始めた場合、150kWの急速充電器であれば、35分で80%まで回復させることが可能になった。現行型だったら50分かかるので、けっこうな時間短縮だ。15分間の急速充電で比べた場合、新型は現行型比で230%の航続距離を回復可能だという。
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新型「リーフ」は充電性能が向上。ナビゲーションシステムと連動した「ナビリンクバッテリーコンディショニング」も採用しており、ナビで目的地を設定すれば、走行ルートに応じてバッテリーの昇温・冷却を制御し、エネルギー消費を最適化するとともに充電速度を向上させる。急速充電を行う予定の場所に到着する際に、バッテリーが充電に最適な温度になっているという便利機能だ
ユーザーのEVに対する不安(走行距離や充電時間、バッテリー耐用年数など)に対し、性能向上で対応を図った日産。もうひとつ気になるのは、新型リーフの価格だ。
記事執筆時点で価格は不明なのだが、日産はメイングレードとなる「B7 X」の価格を現行型リーフの「e+ X」(525.36万円)と同等以下に設定したいとの意向を示している。そこに現行型リーフ並みのCEV補助金(89万円)が適用されるとすれば、実質価格は400万円台前半となりそう。バッテリーの小さい「B5」については、最量販のミドルグレードで実質価格を400万円未満に抑えたいというのが日産の考えだ。













