日産自動車が新型「リーフ」を発売する。電気自動車(BEV)を取り巻く昨今の状況は、はっきり言って「逆風下」。そんな中で登場する新型リーフは、どれほどの実力を備えたクルマに仕上がっているのだろうか。発表前のプロトタイプに試乗してきた。
リーフを取り巻く環境は?
2010年に世界初の量産BEVとして登場し、2017年には2代目に進化していた日産リーフは、これまでの15年間で世界累計70万台以上(日本では18万台)が売れており、総走行距離は280億km超、CO2排出量の削減はトータルで19億kgに達するという。世界で100以上の受賞数を誇る日産BEVの屋台骨となるモデルだ。
一方、現在のBEVを取り巻く環境といえば(国によって程度の差はあるけれども)、充電インフラの整備不足、車両価格が高く補助金に依存しているというコストの問題、走行中の環境性能は高いが製造時のCO2排出量が多いという環境コストの矛盾、リセールバリューの低さ、中国一強状態に対する各国の政治的な思惑などなど、ネガティブな要因が多いのも事実。とてもじゃないけれども“追い風”が吹いているとはいえないのだ。
新型リーフの基本スペックは?
BEVに対してだけでなく、日産という会社の状況にもネガティブな“逆風”が吹く中で船出する3代目の新型リーフは、どんなクルマなのだろう。今回の試乗では日本仕様の「B7」モデル(他にバッテリーの小さい「B5」がある)に乗ることができた。グレードは高級版の「B7 G」と標準版の「B7 X」の2種類だ。
2世代目までハッチバックだったボディタイプは、今回の3代目でクロスオーバースタイルに変わった。一言で言うと、「ミニ アリア」だ。
日本仕様のボディサイズは全長4,360mm、全幅1,810mm、全高1,550mm、ホイールベースは2,690mm。前後のオーバーハングを切り詰めることで、先代比で全長が120mm短くなった。コンパクトで流麗な形状になったのが特徴だ。「ルミナスターコイズ/スーパーブラック」の鮮やかな2トーンカラーをまとった新型リーフの姿については、広報写真が出回っているのでご存じの方も多いと思う。
フロントは一文字のセンターLEDアクセントランプと、左右に「フ」の字型に配された6つの長方形で構成する小型ランプによる、新型を象徴した顔つきに。サイドは日産ブランド初となる電動格納式ドアハンドルと空力を意識したフラット形状の新型ホイール、リアには「Ⅱ」と「三」(つまりニッサン)を組み合わせた世界初の3Dホログラム式LEDリアコンビネーションランプを採用して、一目で新型リーフであることを主張する。
インテリアは「CMF-EVプラットフォーム」の採用によりフラットフロアが実現。足元の空間は広い。横長フローティングデザインのインストルメントパネル、そのセンターに配されるフラットボタン式のシフトセレクター、12.3インチ大型デュアルディスプレイ、日産初採用となる遮熱機能付き調光パノラミックガラスルーフ(ボタンでガラスの透明度が変わり、影になった部分に「LEAF」の文字を映し出す)、デジタル式のインテリジェントルームミラー、スマホで見ることができるドライブレコーダー、前席ヘッドレストにスピーカーを配したBoseパーソナルサラウンドシステムなどでまとめ上げられていて、すっきりとした快適な空間の演出がなされている。
B7グレードが搭載するのは最高出力160kW(218PS)、最大トルク355Nmを発生するYM52型モーターで、バッテリーの容量は78kWh。駆動方式は2WD(前輪駆動)のみだ。性能面の詳細は別項に書くが、主要3コンポーネントを一体化した3-in-1構造のEVパワートレインによって、モーターの最大トルクは4%向上している。
車重1,920kgで235/45R19タイヤを使用する「G」の一充電航続距離は685km。1,880kg、215/55R18タイヤの「X」は「700km超」の一充電走行距離702kmを公称する。充電能力は最大150kWに対応。SOC(バッテリー残量)10%で充電を始めると、35分間で80%までリカバリーできる。
実際に走ってみると
テストコースを走ったのは、濃紺に近い「ディープオーシャンブルー」の「B7 G」と、エンジ色に近い「ディープクリムゾン/スーパーブラック」2トーンの「B7 X」(のプロトタイプ)だ。
これまで、鮮やかで先進感のあるターコイズカラー/ホワイト内装の新型を見慣れていたため、初めて見るカラーをまとった2台(ブラック内装)が醸し出す雰囲気は“意外に普通”。これなら東京でも北海道でも、ビルに囲まれていても自然の中でも、すぐにさまざまな風景に違和感なくなじんでいけそうだ。また、日本仕様は米国仕様に比べてよりコンパクトなので、最小回転半径の5.3mや全高の1,550mmをいかして、機械式駐車場にも難なく入っていくことができるだろう。
3代目が目指したという「スーっと滑らかで、気持ちの良い走り」は、「D」ボタンを押して走り出すとすぐにわかった。音振性能を高めた高剛性のEVハウジング、ねじり剛性86%アップのボディ、応答性の高いマルチリンクサスペンションの採用、滑らかさと手応えを両立してチューニングしたラックアシスト式EPS(電動パワステ)などの相乗効果だ。
中低速域の走りは無音で滑らか。コース内の荒れた路面や繋ぎ目を再現した部分では、しっとりとした“いなし”を見せる。コーナーでは操舵量が一発で決まった。
パドル(Gモデル)やD/Bボタン(Xモデル)、ドライブモード、さらに「e-Pedal」など、さまざまな選択肢を切り替えれば、自分が思ったような走りを再現できる。15年間という長きにわたってBEVを製造し続けてきた日産の、経験と実績をいかした最新モデルであることが確認できた。
市街地を走る速度域では「もう完璧!」と思えた新型リーフだが、一方で気になったのは、高い速度が出せる長い直線部分に進入した時のこと。車速が80km/hを越えると、Aピラーとドアミラーのあたりから小さな風切り音が聞こえ始め、90km/hではさらに大きくなり、100km/hではかなり気になるほどの音量になるのだ。他が静かなだけに、余計に目立ってしまう。日産でもここは把握しているようで、市販モデルまでには何らかの対策が施されるはずだ。
また、リアシートに座った際には、後頭部のあたりから「サーっ」というノイズが結構聞こえてくるのも気になった。ラゲッジフロアボードにタイヤからの音を低減するハニカム構造の新素材マテリアル(M-Light)を採用したため、かえってリアガラスから剥離される空気の音が目立って聞こえてくるのかも。アリアのようにルーフスポイラーを取り付けたら案外解決するのでは、と思ったりした。
さて、とりあえずプロトタイプの初見はこんな感じ。日産が「先代と同程度に抑えていきたい」とする価格面も含めて(掲載時には発表されているはず)、その動向を見守りたい。
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「B7 G」グレードで日産のテストコース「グランドライブ」を走行しているところ。新型「リーフ」は長きにわたってBEVを作り続けてきた日産の経験と実績がいかされたクルマだった(この写真のみ編集部が撮影)










































