心を癒してくれる唯一無二の存在であり、人生の大事なパートナーとして考える人も多い「ペット」。ですが、室内で犬や猫などを飼うペットオーナーにとって、部屋の換気に気を遣うのは避けられない問題ではないでしょうか?

犬や猫は季節によってペット臭が強くなり、換毛期には暑さや寒さに備えて毛が生え変わって古い毛が大量に抜けます。ですが、マンションの高層階などでは窓を開けるのもままなりません。

そんなペットオーナーに向けて、空気環境を整えるために何を心がければ良いのか、東邦大学医療センター大森病院 呼吸器内科の関口 亮先生(以下、関口氏)にお話を伺ってきました。

  • 東邦大学医療センター大森病院 呼吸器内科の関口 亮先生

ペットのフケや抜け毛が気管支喘息や鼻炎の悪化につながることも

――さっそくですが、室内で犬や猫などのペットを飼うことによる、室内の空気への影響について教えてください。

関口氏:「室内で犬や猫をペットとして飼育する家庭では、空気中にペットの毛やフケなどの粒子が浮遊します。これらは空気中のハウスダストに分類され、ペット飼育家庭では非飼育家庭よりもハウスダストが多いことがデータとして報告されています※1

※1参照:白井秀治氏・坂口雅弘氏 「 室内アレルゲンの測定法 THE CHEMICAL TIMES.」/2017;243(1);12-17

――それがペットオーナーの体に及ぼす影響には、どのようなことが考えられますか?

関口氏:「ペットオーナーが空中に浮遊するペットのフケやハウスダストに触れると、気管支喘息や鼻炎の症状が悪化する可能性があります。これはスギやヒノキなどの花粉と同様です。

子どもの場合は、幼少期から家庭でペットと生活することで、鼻炎や気管支喘息などの発症を軽減する可能性があるとの報告※2がありますので、悪影響しかないわけではございません。しかし、元より上記の疾患や花粉症などにかかりやすい体質の方には、ペット由来のハウスダストを吸い込むことで症状が悪化する可能性があると報告※3されています」

※2参照:Dennis R. Ownby, Christine Cole Johnson・Edward L. Peterson「Exposure to dogs and cats in the first year of life and risk of allergic sensitization at 6 to 7 years of age/JAMA. 2002; 288: 963-972

※3参照:David Peden, Charles E Reed, Environmental and occupational allergies, J Allergy Clin Immunol. 2010; 125: S150-60.

――部屋の空気環境が悪くなる原因で、ペット以外にはどのような要因がありますか?

関口氏:「大きく要因としては4つあり、まず1つ目としてダニが挙げられます。ダニは人間とペットのフケやアカをエサにしながら、寝具、絨毯、カーテンなど布製品に生息しています。ダニの死骸はペットのフケと同様、空気中に粒子として浮遊し、ハウスダストになって空気環境を悪くします。

2つ目が花粉です。花粉は室外に多く浮遊していますが、衣類への付着によって室内に持ち込まれます。そのため飛散期から飛散終了後、しばらくは室内でも浮遊し、これらに人が触れることで、ペットのフケなどと同様に気管支喘息や鼻炎が悪化する可能性があります。

3つ目はタバコの煙です。タバコの煙は、喫煙時に発生する煙だけでなく、家具や内装の表面に付着したタバコ煙の成分が時間の経過とともに少しずつ気化した「サードハンド・スモーク(残留受動喫煙)」となります。サードハンド・スモークには、タバコ煙と同じく多種類の有害物質が含まれているほか、禁煙6カ月後でも残存する※4と言われています。

※4参照:「禁煙学 改定4版」日本禁煙学会・南山堂, 2019

最後に、空気環境が悪くなるという点では加湿器も原因の1つです。加湿器内に発生したカビが空気中に散布され、そのカビの吸入がきっかけで肺炎になることがあります。加湿器内の洗浄や定期的なフィルターの交換、加熱式の使用が対策として重要です」

ペットとペットオーナーのための快適空間のためにできること

――ペットを飼う際に、ペットとペットオーナーにとって適した・快適な環境を整えるためには、どのような対策をどの程度の頻度で行うのが効果的でしょうか?

関口氏:「ペットオーナーが室内の環境改善に向けて注意すべきことは、ペットのフケと抜け毛予防、そしてダニの増殖予防です。

フケが出るのは皮膚の新陳代謝の結果であり、皮膚の乾燥がフケの増える原因となっています。人間同様ペットも、保湿剤や室内の適切な湿度管理で皮膚の乾燥を予防するのが重要です。

フケの除去にはシャンプーも効果的。犬は月に1、2回のシャンプーが望ましいです。猫は自分で毛づくろいできますので、犬ほど頻回なシャンプーは不要と考えられており、短毛種で年に1~2回、長毛種でも月に1回程度が目安といわれています。

抜け毛はハウスダストの原因となるため、ブラッシングによる抜け毛の除去がオススメです。長毛種と短毛種で最適なブラッシングの頻度は異なりますが、基本的には毎日のブラッシングが抜け毛予防に効果的であると考えます」

――ペットが触れる家具や寝具、床などへの対策はどうでしょうか?

関口氏:「ペットとソファーや寝具を共有するとフケや抜け毛が付着します。加えてペットのフケをエサとするダニも増殖し、ダニ死骸の付着が加わることも。これらが座る、叩く、布団やシーツを上げ下げする、寝返りを打つなどの発じん行為によって、付着した粒子は空気中に舞い上がり、前述したように、これらを吸入することで人体に悪影響を及ぼす可能性があります。

対策は第1にペットと寝具を共有しないことです。これだけで寝具へのフケや抜け毛の付着を予防でき、結果的に発じん行為によって浮遊するペット由来の粒子を減らせます。それでも、ペットと寝室で過ごされる方や寝具を共有している方がいることも事実です。

そこで効果的なのは、第2の対策としての寝具の乾燥と洗浄です。ダニは60℃以上で死滅するといわれており、乾燥機やアイロンの熱が有効なほか、ダニの死骸や糞は水洗いで落とせるので、シーツや枕カバーを週に1回の洗濯・乾燥することで除去に有効だと考えます。

第3に清掃です。フケ、ペットの毛、ダニの死骸は、PM2.5や細菌などと比べると粒子が大きく、常に空気中に浮遊しているわけではありません。前述した発じん行為によって空気中に撒き散らされます。そのため、床に落ちたものは掃除機で吸引することで、舞い上がりを予防できます。

また、掃除機によってフケが除去されれば、ダニの増殖も抑えられるので効果的です。清掃の頻度が多いほど除去できるため、ペットを飼っている家庭では、可能であれば毎日の清掃が重要です。

このようにまずは原因物質を撒き散らさないよう、予防することが重要となります。 もちろん完全な除去は困難ですが、上でご紹介した3つの対策や換気を心掛けて、大切なパートナーとの空間を清浄に保てるよう心掛けましょう。