様々な業種でIT化が進む現在、コロナ禍を経た時代の急激な変化に対応するためにデジタル技術を通じた変革=DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性も叫ばれるようになった。一方でIT化が進みづらい業種もあり、医療業界はそのひとつと言われている。しかし、現状のままでは将来的な医療ニーズに対応しきれず、医療を安定的に提供するのが難しくなると懸念されている。
そんな中、兵庫県神戸市にある済生会兵庫県病院は、IT化の遅れに危機感を抱き、大改革を進めている。
この大規模プロジェクトをITインフラの面で支援したのが、ユニットコム(パソコン工房)である。同病院の情報システム室長兼DX推進担当の西海潤氏に話を聞いた。
仮想化は待ったなし。院内ネットワークの大改革に踏み切る
2019年に創立100周年を迎えた同病院は、神戸市の北神地域の基幹病院として、急性期医療を中心に提供している。最近では、新型コロナウイルス感染症の蔓延初期から積極的に対応を行い、地域の中核病院としての責任を果たした。また、兵庫県の地域周産期母子医療センターに指定され、24時間体制でハイリスク妊婦、低出生体重児、ハイリスク新生児を受け入れているのも特徴だ。
このように大きな役割を担う同病院だが、西海氏は「当院の医療情報システムやITインフラ環境は、他の病院と比べても周回遅れの状態にあった」と赴任してきた2019年当時を振り返る。
電子カルテシステムの老朽化に伴い、医療情報システム全体を更新する院内ネットワークの大改革に踏み切ったのが2022年のことだ。
「医療情報システムをリプレースするには一定期間新旧のシステムを並行稼働しなければなりませんが、手狭のサーバー室はすでにサーバーラックで埋まっていました。あと5本のラックを追加で設置できるかどうかといった状況でしたし、電気容量も少なく不足するのが目に見えていましたので、サーバーの仮想化が“待ったなし”だったのです」
ここで白羽の矢が立ったのが、ユニットコム(パソコン工房)だった。同病院とユニットコム(パソコン工房)との出会いは、2018年に遡る。2019年頃からPCパーツを納入していたユニットコム(パソコン工房)は、西海氏が情報システム室に所属したことを機に急接近。別棟へのネットワーク拡張工事や、患者用のフリーWi-Fiの構築を担当した。
「ユニットコムさんは、当院の施設用度課から紹介されました。別棟へのネットワーク拡張工事の際、最初は失礼ながら相見積もりの位置づけだったのですが、提案内容が良く製品やソリューションの事情にも通じていたため、お願いすることにしたのです。その後も、コロナ禍でニーズが高まった患者用のフリーWi-Fiの構築を依頼するなど、いつの間にか頼れる相談相手になっていました」
ハードウェアの販売以外にも地場のパートナーと連携したインフラの導入や運用など約3年にわたって信頼関係を築いたことが、今回の取り組みにつながったのである。
全体最適に悪戦苦闘。プロジェクト成功に導いたユニットコムの高い連携力
肝いりでスタートした院内ネットワークの大改革だが、稼働までの道のりは相当に険しいものだった。
「プロジェクトの予算に限りがあったため、要件を満たしながらコストを抑え、費用対効果を最大化することを重視しました。そのため、仮想化基盤上で動作するゲストOSは前例のない数になってしまいましたが(笑)」
ユニットコム(パソコン工房)は同病院にヒアリングを行い、物理サーバーを極力抑えた折衷案を提案した格好だ。加えて、プロジェクトマネージャー兼リーダーを務めた西海氏は、マネジメントにも苦労したと明かす。
「今回のプロジェクトは、22台のサーバーを仮想化・統合するだけではなく、それらを土台にした約50にも及ぶ医療情報システムの更新も必要でしたので、全体最適のためにすべてを横断的にチェックしなければなりませんでした。ユニットコムさんには、ITインフラプロジェクト担当の視点から気になる点をご指摘いただいたり、スケジュールを管理してもらうなど、非常に助かりました」
同病院は特定のベンダーに依存しないオープンな環境を志向していたため、複数の企業が参画するプロジェクトにおいて、ユニットコム(パソコン工房)は調整役として尽力。
移行作業を担うパートナー企業の株式会社TOKAIコミュニケーションズやヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)などと連携しながら、西海氏とともにプロジェクトを牽引した。本プロジェクトにはこの統合仮想基盤以外にも基幹ネットワークの更新やIT資産管理システムの構築も行われている。これらもユニットコムがパートナー企業と連携して同時期に進められた。
医療改革にも柔軟に対応可能な次世代ネットワーク基盤を整備。
ネットワークを統合管理し、通信安定性と利便性、セキュリティを確保。
「また、大手電子カルテベンダーのクラウド版カルテ初のβユーザーということで前例がなく、院内ネットワークとクラウドの接続にカルテベンダーが苦戦していましたが、ユニットコムさん率いるITインフラチームが献身的に関わってくださったことで、正常通信が叶いました」
コロナ禍の影響による製品の長納期化を経て、昨年10月に新しい医療情報システムは無事に稼働した。
「今回の大改革によって、当院の医療情報システムやITインフラ環境は、医療業界の中では先頭集団に入り込むことができたのではないでしょうか。ネットワークについては仮想化・統合によって省スペース化と効率化を実現し、各所が冗長化され、帯域も十分に確保されています。無線でつながる範囲が広がり、障害にも素早く対応できる体制が整いました」
そのうえで、現時点の満足は一時的なものでしかないと言葉を続けた。さらなる改善に向け、西海氏は先を見据えている。
全体最適と効率化を追求。DXを推進して地域医療を守り抜く
同病院がDX推進に力を注ぐのには理由がある。
「人口減少で働き手が減っているのは医療業界も例外ではありません。ITやシステムでカバーしないことには、いずれ立ち行かなくなるでしょう。
ただ、クラウド型のサービスやビッグデータ、AI技術を活用するとなると、今まで以上に外部と接続することになり、万全なセキュリティ対策が求められます。例えば、電子カルテネットワークをゼロトラストセキュリティで守るのも今後は定着するのではないでしょうか」
「これからも変わらず地域医療を守り抜く」という社会的使命から、DX推進に邁進しているのだ。ユニットコム(パソコン工房)に対し、併走してほしいと西海氏は期待を込める。
「ユニットコムさんは情報量が豊富で、雑談にも花が咲き、心強い存在です。取り扱う商材の幅広さはもちろん、パートナー企業さんと密に連携できる力も魅力に感じています」
三田市民病院との統合も予定されている同病院。地域医療を守り発展させていくため、DXの推進が不可欠なのは異論の余地はないだろう。
「電子カルテをはじめとした医療情報システムをきっちりと運用するには、ITインフラの整備が鍵を握ります。凄まじい時代の変化に合わせて、医療業界のITインフラも変わっていかなければなりません。
電子カルテのネットワークとインターネットを隔離した従来の分離型ネットワークから、統合型ネットワークにシフトする兆候も見えてきました。ユニットコムさんに協力していただきながら、DXを前に進めていきたいです」
全体最適と効率化を追求し続けたいと展望を語る西海氏。ユニットコム(パソコン工房)は、DXを推進して地域医療を守り抜く同病院をこれからもサポートしていく。
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