デジタル化の必要性が叫ばれる昨今、医療業界も例外ではない。しかし、さまざまな事情が絡み合い、医療業界のデジタル化は遅れを取っている現状だ。そんななか、先進的な取り組みで注目を集めている病院がある。それが福井県吉田郡に位置する、福井大学医学部附属病院だ。

そして、導入された電子カルテ用の超小型パソコンNUC(ナック)は、ユニットコム(パソコン工房)のもの。同病院のデジタル化を推進する医療情報部 副部長の山下芳範氏に導入の背景を聞いた。

驚くべき先見性で医療情報システムの仮想化に着手

同病院は、福井県内唯一の特定機能病院として最先端医療の研究・開発・実践に努め、難治性の病気の克服に挑戦し続けている。診療科は内科部門、外科部門、感覚・皮膚・運動部門、成育・女性医療部門、脳・神経・精神部門、総合診療部門などにわたり、病床数は600床。「最新・最適な医療を安心と信頼の下で」との理念を掲げ、医療安全のレベルアップを目指している。

この医療安全の観点からも欠かせないのが、医療情報部だ。電子カルテを中心とした医療情報システムを整備し、大学病院としての高度な医療や研究に貢献している。山下氏は今から16年も前の2006年、まだ仮想化技術やIoTという言葉が世の中に定着していなかった頃に医療情報システムの仮想化に着手した。ちなみに山下氏は、1989年、国際学会において電子カルテ上で文字情報・時系列情報・画像情報などを統合する論文を発表している。

  • 同院 医療情報部 副部長 山下芳範氏

「どうして始めたかというと、第一にサーバーやパソコンが高額だったからです。かかるコストが重みになってきました。もうひとつは、セキュリティの問題です。当病院の規模だと1,500台くらいの端末が必要ですが、すべてを管理するのは一苦労でした」と語る山下氏。

ちょうど個人情報保護の機運が高まっていた時代、端末自体に患者の個人情報があるリスクを鑑み、仮想サーバーに情報処理を集約。2007年にはシンクライアントでの運用を病棟で開始した。驚くべき先見性といえる。

  • シンクライアントの仕組み。
    ユーザーが使うクライアント端末に必要最小限の処理をさせ、ほとんどの処理をサーバー側に集中させたシステムだ。クライアント側は表示や入力のみを行い、実際の処理や保存はサーバー側で行われる

シンクライアントでの運用で大幅なコストカットを叶える

山下氏の思惑通り、このシンクライアントでの運用を取り入れたところ、大幅なコストカットを叶えた。

「高性能・高品質な端末は必要なくなりましたね。パソコンの導入となると、高性能なCPUが必要になりますが、この仕組みならIntel Celeron程度の性能で十分です」

実際に電子カルテのサンプルを見せてもらったが、画面表示や画面遷移はスムーズだった。見学に訪れた医療関係者らは一様に驚くそうだが、これは山下氏発案の仕組みがあってこそ。また、2006年の仮想化着手から15年が経った昨年にはサーバーをパブリッククラウドへ移行。サーバー管理を外部に移譲し、高いセキュリティの確保とさらなる業務効率化につながった。

  • ナースステーションでシンクライアント端末として稼働するIntel® NUC。ログイン用のICカードリーダーが接続され、医療現場であることを印象つける

まだまだ山下氏の改善は続く。端末の価格を抑えつつよりシンプル・コンパクトにするため、インテルの超小型PCフォームファクター「NUC(ナック)」に白羽の矢を立てた。その導入を支援ししたのが、ユニットコム(パソコン工房)だった。

病院の要望に合わせてNUCをカスタマイズ
臨機応変なスピード対応を評価

NUC導入にあたり、山下氏がユニットコム(パソコン工房)を指名したのには理由がある。

「OSはWindows10 IoT Enterprise LTSCかWindows10 Enterprise LTSCのみなど、当院のような国立病院は条件が細かく決められています。業者の対応も保守的になりがちで、担当がそもそもLTSCを知らないケースもあります。ユニットコムさんのような柔軟なオーダーメイドに対応できる業者さんはあまり多くないのです」

pick up!

Windows 10 IoT Enterprise とは……
特定用途の業務用端末に搭載されるOSで、Windows 10の機能はそのままに強固なセキュリティや長期サポートが提供されている。

また、LTSC(Long Term Servicing Channel)はWindowsの特定分野向けサービスモデルだ。個人や一般企業向けのWindowsと異なりWindows Updateによる機能更新プログラムが提供されないため、同一環境で長期の運用が可能だ。10年の長期保証が提供されるため、昨今話題になったInternet Explorerの場合も、同サポート期間終了までサポートが継続される。

Windows10 IoT Enterprise LTSCをセットアップした数台のサンプル作成からユニットコム側・病院側双方でのOSイメージの作成や厳格な動作検証を経て、納入までには1年ほどの期間を要したという。限りある予算を新型コロナウイルスの対策に優先しなければならなかった時期と重なったことも大きく影響したそうだが、山下氏はユニットコム(パソコン工房)をこう労った。

「病院は要望の難易度も高く、大変だったと思います(笑)。しかし、こちらの要望を踏まえ、NUCをカスタマイズしてくれたり、納入にあたっては患者さんが比較的少ない土日祝に部署単位で順次入れ替えを実施してくれたりしました。あと、とにかく対応が早く、サポート能力が高いですね。こちらが気になることを質問したとき、誠実に答えてくれるのはありがたいです。知識が豊富なのでしょう」と笑顔を見せる。

  • 診察室で稼働するNUC。様々な医療機器が設置されている中でも省スペース性をいかした自由なレイアウトが可能だ

導入したNUCは、医療現場からも好評だという。

「今回導入した製品はファンレスですので、音がしない点が非常に喜ばれています。これまでスリムPCを使っていましたが、古くなるとどうしてもファンの音が大きくなり、特に診察室では困っていましたから」

現在、ユニットコム(パソコン工房)が同病院に導入したNUCの台数は303台にのぼる。

医療業界のデジタル化には支援の余地あり
ユニットコムに込める期待

ユニットコム(パソコン工房)に対し、山下氏は次のような期待を込める。

「今回のような事例は現時点では少ないと思いますが、だからこそもっと広めていってほしいですね。医療業界は特殊なので、既存の製品では活用できないことが少なくありません。例えば、スマートフォン。

NFC(端末をかざすと通信ができる技術)が搭載されていますが、日本のスマートフォンは特定メーカーの規格に固定されているために医療現場にあるタグを読み取れないのです。RFID(RFタグのデータを、電波を用いて非接触で読み書きするシステム)のリーダーとして使いたいのに、それができない。このような課題に対して新しい技術や製品をいち早く紹介し、導入を支援する価値はあるのではないでしょうか」

新しい技術・製品の導入、開発の支援が病院の働き方改革にもつながると山下氏は力を込める。確かに支援の余地はありそうだ。

「今や医療情報がなければ、診療は回りません。その一方で、セキュリティの厳格化はますます求められます。例を挙げるなら、令和9年度には医療情報システムの多要素認証が義務付けられることが決定しました。当院ではすでに多要素認証を採用していますが、こういった流れはますます加速するでしょう」

今後は、人に依存しないオートマチックな仕組みを構築したいと展望を語る山下氏。ユニットコム(パソコン工房)は、医療業界のデジタル化を牽引する同病院をこれからもサポートしていく。

Universitv of Fukui Hosoital
福井大学医学部附属病院
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