2019年の登場と同時に人気となり、今や完全にG-SHOCKの新しい顔となった「GA-2100」。その後メタルカバードモデルやBluetoothによるスマートフォンリンク機能搭載モデルなど、外装やモジュールの進化を経て、ついにフルメタルモデル「GM-B2100」として登場した。そこで今回は、商品企画の担当者に直撃。GM-B2100のコンセプトや見どころについて掘り下げたインタビューをお届けする。もちろん、ディテール写真も満載だ。ぜひチェックしていただきたい。
今回お話を伺ったのは、カシオ計算機 技術本部 企画開発統轄部 企画部 第一企画室の泉 潤一氏と井ノ本脩氏。
---G-SHOCKのウレタンモデルをフルメタルモデル化した例としては「GMW-B5000」「AWM-500」に続き、今回のGM-B2100で3作目となりますね。そのベースモデルとして、G-SHOCKのなかでは比較的ニューフェイスともいえるGA-2100が選ばれた理由を教えてください。
泉氏「フルメタルG-SHOCKのシリーズの企画は、ふたつの要素が両輪としてあります。ひとつはウレタン外装のモデルをフルメタル化していく、いわば技術的な挑戦。もうひとつは、G-SHOCKの代表的なモデルの付加価値をさらに追求してラインナップを拡充するという目的です」
---なるほど。そう考えると、メタルカバードモデル「GM-2100」、Bluetoothによるスマートフォンリンク機能搭載モデル「GA-B2100」と進化してきたGA-2100は、フルメタル化への道筋ができていたように思えます。
泉氏「おそらく、多くのお客様が予想されていたでしょう(笑)。そもそも、カシオとしてもGA-2100はオリジンのコンセプトを受け継ぐモデルとして開発してきましたし、G-SHOCKの新しい顔として育てていきたいという位置付けで考えています」
---ということはGA-2100自体、最初からフルメタル化の流れまで含めて企画された商品だったのではないですか?
井ノ本氏「ところが、そうではないんです。なぜなら、登場時には、このモデルのポテンシャルが誰にもわからなかったので」
泉氏「実は、それほど期待されたモデルではなかったんですよ。発売前に試作機を持って有識者調査などを実施しても、 とくにグローバル市場では『どうしてこんなのを作ったの? 』と。当時、海外ではビッグフェイスのラギッドなデザインがヒットしていて、その正反対のようなコンパクトでシンプルなデザインは求められていなかったという背景があったので」
---しかし、発売した途端にスマッシュヒットになりましたね。
井ノ本氏「現在は幅広いお客様にご支持いただいています。世代的にも、オリジンやかつてのG-SHOCKブームを知らない若い世代や女性のお客様にも受け入れていただいて……。今思えば、これがGA-2100の最大のポテンシャルといえるかもしれませんね」
泉氏「この『新しい層のお客様にアピールする』という点は、今回ベースモデルとしてGA-2100が選ばれた大きな理由のひとつでもあります」
---フルメタル化された「GM-B2100」の見どころを教えてください。
泉氏「大きく分けてふたつあります。ひとつはサイズ。もうひとつは質感の高さです」
---サイズは、ベースモデルとあまり変わらない印象ですね。
井ノ本氏「GA-2100のケースサイズは48.5×45.4×11.8mm。対してGM-B2100は49.8×44.4×12.8mmですから、ほとんど変わらないといっていいと思います」
泉氏「ベースモデルが同じなのだから当然、と思われそうですが、GM-B2100はBluetoothのアンテナやタフソーラーの回路などを新たに搭載しているので、モジュールの構造がまったく違います。また、外装が金属であることに加えて、裏ぶたがスクリューバック仕様なので、そのぶんも厚くなってしまいます。
さらに、フェイスの質感を高めるために、ダイヤルを2層式としました。たとえば9時位置のインダイヤル底面を見てください。ベースモデルではダイヤルの凸凹は一体成型でしたが、本作では上層のダイヤルを開孔して、そこから2層目のダイヤルが見えるようになっています。こうしてパーツを分けることで造形のエッジがシャープになり、より高品質な印象を与えるのです」
---なるほど、一見GA-2100のデザインを完全に再現しているように見えますが、よく見ると細部はアレンジされていますね。インデックスには縦筋のモールドが入っていたり、9時位置のインダイヤルリングは別パーツ化されて立体的になっていたり。
井ノ本氏「インデックスは蒸着で金属感を演出しています。立体感を出すために、9時位置のリングは別パーツ化しました。インデックスもそうですが、時分針の通過や落下時の針のたわみなどを計算しなければなりません。風防とダイヤルの空間を考えると、もうギリギリのクリアランスです」
---厚みが増す条件は山ほどありながら、それをどのようにこの薄いケースに収めているのですか?
井ノ本氏「モジュールを高密度実装技術で小型化すると同時に、外装の内側を耐久性が確保できるギリギリまで削り込んで対応しています」
---うわぁ、ここまで攻めているんですね!
泉氏「そのほか、特殊な技術も投入しています。お話した通り、ギリギリのクリアランスのなかで可能な限りダイヤルに立体感を与えるため、9時位置のリングを別パーツにしました。この固定に、山形カシオの特殊な技術「レーザー溶着」を使用しています。リングのパーツの裏面にレーザーを照射して溶かし、そのままダイヤルに固定する技術です。主にG-SHOCKの最高峰であるMR-Gなど高価格帯のモデルで使用しますね。技術的な難易度が高いうえにコストもかかって贅沢な技術ですが、今回はこれを使うのがベストだろうと(笑)」
---バンドはGMW-B5000と共通ですか?
泉氏「まったく同じものです。そもそもGA-2100がオリジンをリスペクトする形で同じバンドを採用していましたから。GM-B2100は、モジュールもG-STEELの『GST-B400』 のものをベースに使っているんですよ。(※)
※GST-B500については こちらをチェック
このような『モデルを横断してパーツを共有化する開発』にもカシオは力を入れていて、金型製造やパーツ管理の効率化を推進しています。それは製造段階でのサプライチェーンの安定や環境負荷の低減にも繋がるんです。いわゆる持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みですね」
---時代の潮流としても、ものづくりにはそういった要素が求められるのですね。それに修理や交換用のパーツが長期間手に入るなど、製品を安心して選べるメリットに繋がりますし、私たちユーザーにとっても歓迎できることですね。
---また、「GA-2100-1AJF」の価格が14,850円に対して、「GM-B2100D-1AJF」が71,500円。その価格差に見合った付加価値のためには、質感の向上や新しい時計表現を求めていく。そう書くと当たり前に聞こえますが、実は難しいことですよね。ちょっと間違うとベースモデルとは別の方向に進化してしまいかねない。
泉氏「その通りです。このシリーズはあくまでG-SHOCKのレジェンドと呼べるウレタンモデルのコンセプトや世界観をそのままに、フルメタルモデルに進化させたもの。したがって、ベースモデルの個性を引き出すアレンジが大切ですし、いろんなモデルをとにかくフルメタル化すればいいというものではないと考えています」
---ベースモデルへのリスペクトがあってこそのフルメタルシリーズ、ということなんですね。
そしてカラー展開についてですが、GM-B2100は3色のモデルでローンチされています。定番のシルバー、フェイスをブラックで統一したファッショナブルなステルスモデルはいいとして、私は個人的にローズゴールドが意外でした。
泉氏「イエローゴールドのイメージでしたか? ただ、イエローゴールドはG-SHOCKでは想像以上に定番色なんですよ。海外ではとくに人気も高くて。私の経験からも、ユーザー層が幅広い印象があります。スケートボードやヒップホップなどストリートカルチャーをはじめ、カジュアルファッションでも外しアイテムとして使用されたりとか……。
そこで、ファンの皆さんの予想を『いい方向に』裏切りたかったのです」
井ノ本氏「その結果、今回はちょっと意外性のあるローズゴールドで行くことにしました。ファンの皆さんに少しでも『おっ?』と思っていただければ成功です(笑)。それに、ローズゴールドは色々なファッションに合わせやすいのではと思います」
泉氏「流行りのくすみ色でアースカラーにも合わせやすく、腕との馴染みもいいですね」
---確かに、落ち着いた色ですからスーツ姿に合わせてもいいアクセントになりそうですね。本日は興味深いお話をありがとうございました。最後に、読者の方々にメッセージをお願いします。
井ノ本氏「G-SHOCKならではの実用性はもちろん、フルメタルならではの質感の高さにとにかくこだわったので、ぜひそこを見てください」
泉氏「質感については、もう自分が小さくなってダイヤルの上を歩きながら隅々まで眺めるような、そんな感覚で見てください。また、使えば使うほどモノとしての良さが見えてくる時計です。長くパートナーとして色々なシーンで着けていただけたら嬉しいですね」
[PR]提供:カシオ計算機