「エレガンス・ダイバー」を標榜するOCEANUS初の本格派ダイバーズウオッチ「OCW-P2000」。その外装やディテールについては、すでに別記事でお届けした。そこで今回は、開発スタッフとのオンライン座談会を開催。広告やカタログでは伝わりにくい、機能的な魅力についてお話を伺いつつ、動画を交えてわかりやすく紹介します!

  • 今回は、OCW-P2000の機能やアプリ連携をメインにご紹介するぞ!

●INDEX
・ダイバーズウオッチの機能にダイバーの命がゆだねられている
・従来のタイドグラフ機能の不満を一気に解消!
・「不可能」を「可能」に
・時計の健康状態をアプリでチェック!

ダイバーズウオッチの機能にダイバーの命がゆだねられている

――はい、というわけで、今回は「OCW-P2000」の機能について、詳しくお話を伺いたいと思います。なお、ゲストはカシオ計算機から本製品の商品企画を担当された佐藤貴康さんと、モジュール企画を担当された黒羽晃洋さんです。

佐藤氏・黒羽氏:「よろしくお願いします」

  • カシオ計算機 開発本部 開発推進統轄部 プロデュース部 第一企画室 佐藤貴康氏

  • カシオ計算機 開発本部 開発推進統轄部 プロデュース部 第二企画室 黒羽晃洋氏

――今回のOCEANUS CACHALOT(オシアナス カシャロ)OCW-P2000は、ISO 200m潜水用防水対応の本格派ダイバーズウオッチということですが、ダイビングに特化した機能としてはどのようなものがありますか?

佐藤氏:ダイバーズウオッチに必須の機能として、まず逆回転防止機構付き回転ベゼルがあります。ベゼルのマーカーを現在の分針に合わせてから潜ると、潜水の経過時間がわかります。潜水装備であるボンベの酸素残量を知るための機能です。

  • OCEANUS CACHALOT OCW-P2000 価格253,000円(税込)

  • ダイバーズウオッチでは定番となる逆回転防止機構付きベゼルを装備

――ボンベの酸素量が30分なので、回転ベゼルは30分位置で色分けされることが多いんですよね。でも、これは20分位置で色分けしていますね。

佐藤氏:安全なタンク残圧を残して、エキジット(ダイビング終了)することを考慮した潜水可能時間内であることと、コンセプトの“エレガンス・ダイバー”に最適な美しいカラーバランスを考えて、20分位置にしました。

  • 20分位置で塗り分けられているのには理由があるのだ

――言われてみれば、確かに半分ずつ(30分)より美しいかもしれませんね。ちなみに、ほかにも潜水時間を知る機能として「ダイブモード」を搭載しているそうですが。

黒羽氏:モードボタン(左下)を2秒間長押しすると、時針と分針が12時位置で重なって1本の合体針となり、ストップウオッチのように潜水時間を計測できる機能です。秒針はダイビングの経過秒を示しています。この合体針が2周分、計2時間分が計測できます。

  • モードボタン(左下)を2秒間長押しするとダイブモードに。時分針は視認性の高い合体針となり、現在時刻は8時位置のインダイヤルへ

左下のボタンを2秒長押ししてダイブモードに入り、右下のボタンを短押しして計測を開始。休息時には右下のボタンを2秒長押しすると、休息時間の計測を開始する。休息時間の計測中は、潜水時と混同しないよう秒針が逆転。もう一度右下のボタンを2秒押すと、潜水時間の計測に戻る。なお、休息時間計測に入る前まで合体針が戻る。左下のボタンを2秒押すとダイブモードを終了する
(音声が流れます。ご注意ください)

――合体針が1周目か2周目かは、どう見分けるんですか?

黒羽氏:インダイヤルが右半分を指針していれば1周目、左半分を指針していれば2周目です。

  • ダイブモードでは、10時位置の24時間計が2時間で1周する

――この合体針はわかりやすいですね。実際に見ると実感できますが、時針がなくなるのがいいですよね。余計な情報がないことで、分針と時針の読み間違いがなくなります。

  • 例えばこの写真は、潜水を開始してから24分28秒が経過した状態。情報が整理されるので、針を読み間違えることがない

佐藤氏:そこは大変重要であると考えています。万が一、時分針を見間違えると大変なことになるので、そういうアクシデントが起こる可能性をなるべく排除したかった。それに海中って、我々が思う以上に暗いんですよね。ですから、視認性についてはやや過剰なくらい配慮しています。

黒羽氏:軽量なカーボンを時分針に使用して針の大型化を実現したり、そこに蓄光をたっぷり塗布したりしているのも、視認性向上の工夫です。なお、ダイブモード時は8時位置のインダイヤルに現在時刻が表示されます。

――視認性という点では、ライトが明るいのもいいです。これはクォーツならではの利点ですよね。

佐藤氏:OCEANUSでダイバーズを作るなら、他社ダイバーズとの差別化としてライトは絶対に必要だと以前から思っていました。そこで、設計に頼み込んで搭載してもらったんです。

また、フェードインで点いてフェードアウトで消える情緒的な演出が、ほかの機種でも好評なんですよ。

  • 暗所でも安心なスーパーイルミネーター

――このライト、点灯時間が意外と長いんですよね。G-SHOCKと比べて、もっとふわっと上品に消える印象です。残照機能のフェードアウトだけで1秒くらいある。その辺もエレガント要素かなと。優しい感じがします。

スーパーイルミネーターの残照機能。デジタルが可能にする技術でありながら、アナログの温かさを感じさせる演出だ
(音声が流れます。ご注意ください)

佐藤氏:点灯時間は3秒間。G-SHOCKの初期設定よりは長いですね。前述のように蓄光をかなり盛っていて、そのまま潜っても大丈夫なんです。けれど、さらにダイバーの安全を守りたいとライトを搭載しました。

――なるほど、優しい光は優しさの“光”でもあるんですね。

従来のタイドグラフ機能の不満を一気に解消!

――OCW-P2000には、G-SHOCKのG-LIDEなどでもおなじみの潮の満ち引き(潮汐)がわかる機能「タイドグラフ」が搭載されていますね。これをダイバーズウオッチに搭載した理由について教えてください。

黒羽氏:例えば、付近のダイビングスポットが現在潜れる状況かどうか、船が海に出られるかどうかを確認するといったシーンで、ご利用いただけると思います。

――タイドグラフは、サーフィンや釣りに使うイメージが強いんですよね。

佐藤氏:もちろん、そういった目的でもお使いいただけます。とはいえ、やはりダイビングでお使いいただきたいという思いはありますね。お気に入りのダイビングスポットに合わせておいて、今日は潮の状態がこうだから海が荒れているなとか、海へ繰り出すのに参考にしていただければ、と。

――OCW-P2000はBluetoothを使ったモバイルリンクにも対応していますが、このタイドグラフも専用アプリ「OCEANUS CONNECTED」との情報連携があるのですか?

黒羽氏:はい。OCEANUS CONNECTEDとリンクすると、世界の主要ダイビングポイント約3,300地点から潮汐の情報を選択できます。それを時計に転送していただく形です。

  • アプリで設定できるタイドグラフは、世界約3,300地点のデータを収録。九州周辺だけでもこの充実ぶり!

――約3,300地点! 多くのタイドグラフは自分が行きたい場所の潮汐データが必ずしも入ってない(ことのほうが多い)のが一番不満というか、物足りないところなんですが、それが解消される期待感があります。

黒羽氏:それに加えて、自分で緯度経度を入力したり、地図上で場所をタップすることで、任意のポイントを登録することもできます。

――それはいいですね!

  • 自分で任意のポイントを登録することも可能。ただし、満潮時刻は自分で調べて入力する必要がある

「不可能」を「可能」に

――OCW-P2000の開発で苦労した点について、お聞かせください。

黒羽氏:今回、カシオのアナログのフラッグシップモジュールを新開発したわけですが、本機種ではカシオの強みである小型モーターを合計で5つ搭載しています。分針と時針もそれぞれ個別に独立したモーターで動かして、さらに秒針、ワールドタイムの小針、モードを示す機能針。で、そのうちの分針と時針とワールドタイムの小針は、カシオ独自のデュアルコイルモーターです。

  • 搭載されている新モジュールは、3つのデュアルコイルモーターを含む5モーター仕様

  • 10時側の24時間針は時針と連動、カレンダーはモード針と連動する

――デュアルコイルモーターは、OCW-G2000で使われているものと同じですか?

  • オシアナスの人気シリーズ「OCW-G2000」

黒羽氏:そうです。ダイブモードへの切り替え時やワールドタイムの設定時には針が大きく動くのですが、それに数分かかったりしては、便利さより煩わしさのほうが目立ってしまう。そこで、高速回転が可能なデュアルコイルモーターが不可欠なのです。5つのうち3つがデュアルコイルモーターというのは、当社史上最多の搭載数です。ただ、これが多方面に影響していまして……。

ダイバーズウオッチは信頼性確保のために、磁界に強くて正確な時刻を刻まなければなりません。これはISO規格やJIS規格でも決まっている。そのため、本機もISO 200m潜水用防水に加え、JIS規格の1種に対応しています。

このモーターを磁界の影響から守るため、耐磁プレートをムーブメントの中にセットしているのですが、ここで問題になるのが、標準電波を使った時刻補正(電波時計)を使った時刻の修正機能。この電波の受信アンテナの搭載と耐磁性能の両立は、かなり難易度が高いのです。

――耐磁と受信って、相反するものですよね?

黒羽氏:はい。それにダイバーズウオッチは防水性を担保するために、ただでさえ外装が肉厚で、裏ぶたの構造も頑丈です。5つのモーターを磁界から守りつつ、なおかつ標準電波もきちんと受信できる構造で、防水性も確保するという要求になってしまう。

――まるで禅問答のようですね(笑)。

黒羽氏:ホントですね(笑)。そもそも電波時計を搭載しながら、ここまでモーターコイル数が多いモジュールは過去にないので、解決例もない。スペースも限られた中で、耐磁プレートの形をどうするかとか……。かなり設計チームと悩みました。

――やはりモーターやアンテナの配置とか、ケースの形状を工夫するといった方法でクリアしたのですか?

黒羽氏:基本的にはそうです。モーターを守りすぎると電波が受信しづらくなるので、アンテナとモーターを離したりといった工夫を重ねました。

――G-SHOCKのMASTER OF Gの取材をさせていただいたとき、そんなお話を聞いた記憶があります。モーターやアンテナ、耐磁プレートをどこに置いたときに、どのくらいの磁力の影響を受けるから、各パーツの距離関係を条件に入れながら設計しなければいけないですよね。

  • MASTER OF Gの「GPW-2000」制作の際に培われたノウハウも生かされている

黒羽氏:そうですね。ただ、それについてはケースの形状や体積など、さまざまな要因があって、実物を作ってみないとわからないんです。こういうのはコンピューターのシミュレーションだけでは難しくて、何台も、何パターンも試作して、それらをモジュール設計のチームと外装設計のチーム、そしてデザインを含めて、みんなで協力してやっと解決にこぎ着けました。

――そもそもケース素材がチタンですもんね。それだけでも受信しにくいじゃないですか。

黒羽氏:そう考えると、かなり難産なモデルでしたね(笑)。OCEANUSブランドのダイバーズウオッチがようやくできたのも、実はこれらの課題を解決する技術がやっとできたからでもあるんです。

――デュアルコイルモーターといえば、針が止まる前にスーって回転がスローダウンしてからピタッと止まるじゃないですか。あれが良いですよね。

黒羽氏:あれは、デュアルコイルモーターのポテンシャルの高さあってこそですね。スピードに緩急が付けられるからこそできた演出です。元から回転が速いので、ブレーキをかける動作がスムーズに見えるんですよ。

佐藤氏:スピーディーに動く針は、機能的なだけではなく、見る楽しさもあると思っています。ですので、このような情緒的は針の表現も大切にしています。操作しないと分からない拘りポイントなので、ここに気付いて「良いね」といって頂けるのは、嬉しいですね。

時計の健康状態をアプリでチェック!

黒羽氏:実はモバイルリンク機能も進化しています。2019年に小型化したBluetoothのシステムを省電力化して採用することで、Bluetoothの接続時間が飛躍的に伸びました。従来の機種では1日に4回、時計とつないで時刻を調整していましたが、本機は常時接続となっています。

時差を跨ぐ海外渡航で空港に到着してBluetoothの自動接続を待つ場合、例えば1時に着いてしまうと、従来の機種では6時半まで待つ必要がありました。そのため、ボタン操作による手動接続の時刻合わせを推奨しておりました。

でも、OCW-P2000なら空港に着いたら、操作不要で現地時刻に切り替わります。これは、なるべくユーザーの操作を減らして、ストレスフリーに貢献しようという、カシオの伝統的な思想(※)から生まれた仕様です。


初めてカシオが時計業界に参入した製品「カシオトロン」(1974年)は、フルオートカレンダーの搭載が大きな特長だった。これは小の月やうるう年の日時・曜日の修正といった、時計使用のストレスからユーザーを開放することが目的だった。

黒羽氏:時刻取得だけでなく、ダイビングのログもアプリに自動転送できるのですが、これも考え方は一緒ですね。海から上がってくるなり、時計やスマホをあれこれ操作してログを転送するのは、ユーザーにとってストレスじゃないですか。

でも、常時接続ならダイビングから船や陸上に上がってスマートフォンに近づくだけでアプリに自動転送されます。スマートフォンを見れば、潜った日時、場所、潜水時間が確認できる。後から写真を追加できたり、メモを追加したりも可能です。カシオならでは、電子的な計測ならでは、さらにBluetoothならではの魅力を感じていただける機能だと思っています。

  • ダイブモードを使用した地点のログを自動で登録。後からメモや写真を追加することもできる

黒羽氏:ちなみにOCEANUS CONNECTEDでは、シリアルナンバーを含めて山形カシオの生産証明書を確認できたり、ステータス表示でソーラーの発電量の履歴やサマータイム、タイムゾーンのアップデート情報を確認できたりします。

また今回、アプリの新機能として「セルフチェック機能」を搭載しました。時計の自己診断を自動で1日1回実行(任意で実行も可能)して、時計の健康状態を確認できる機能です。アプリを開いたときも「時計は正常です」など、時計の状態を表示します。

せっかく買った時計だから大事に使いたいという方、道具としてハードに使うので心配な方など、多くのユーザーが安心されるのではないかと。フラグシップモデルには、こういった信頼を担保する機能も必要だと思うんですよ。

  • 新機能の「セルフチェック機能」(任意実行時)

  • アプリ「OCEANUS CONNECTED」起動時にもセルフチェックの結果が表示される

  • ワールドタイムの設定もアプリからラクラク。300以上のタイムゾーンに対応

  • 時計の基本操作もアプリから参照できる

  • 針位置補正もアプリから行えるのだ!

――最新技術とユーザーオリエンテッドな思想、アナログ的な情緒、そして信頼性と、お話を聞けば聞くほど、OCEANUS CACHALOT OCW-P2000に込められた、企画や開発に携わるみなさんの熱い思いがひしひしと伝わってきました。外観、機能ともに、見どころと楽しみ方がぎっしり詰まった時計だと思います。佐藤さん黒羽さん、本日はどうもありがとうございました。

[PR]提供:カシオ計算機