Uberizationの波と、社員が会社を“選別する”という時代
続いて登壇したのは、AWS専業ベンダーであるサーバーワークス 代表取締役社長 大石 良 氏。 「クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」というビジョンのもと、2014年より継続してAWSコンサルティングパートナーの最上位であるAPN プレミアコンサルティングパートナーに認定されている同社は、一方で2018年、2019年版日本における「働きがいのある会社(*2)」にランクインするなど、積極的に働き方改革を推進している企業としても知られている。
(*2)
2019年版日本における「働きがいのある会社」
日本の時間当たり労働生産性は 47.5 ドル(4,733 円)、OECD 加盟 36 カ国中 20 位
https://hatarakigai.info/ranking/japan/2019.html
なぜ、同社は働き方改革に積極的なのか。その理由について大石氏は以下のように説明する。
「先ほどSlack Japanの溝口さんがおっしゃったように、日本の労働人口が減っていくという問題があります。それに加えて、Uberizationの波がものすごい勢いで襲いかかってきています。自ら積極的に変わっていかないと、生き残っていけない時代がきているのです」
ITを活用する未知の挑戦者によって既存のビジネスが破壊される「Uberization」。具体的な例としては、タクシーやレンタカー業界おけるUber、ホテル業界におけるAirbnb、レンタルビデオや映画業界におけるNetflixなどが挙げられる。ただし、大石氏によると「これらの潮流は決して悪いことではない」とのこと。
「UberizationでITによるビジネス領域の破壊が起こり、日本の労働人口が減少すれば、相対的にエンジニアの価値や若年労働力の価値が上がっていきます。会社は彼らが働きたいと思われるような努力をしながら、採用して育成する。そして在籍し続けてもらう。この計画を持ってさえいれば、十分に生き残っていけます。別の言い方をすれば、計画なき会社は生き残っていけません」
大石氏は「これからは、会社が社員を選別する時代から、社員が会社を選別する時代に移行していく」と語る。 「優秀な技術者がいないと嘆く声がありますが、それは問題点を見誤っています。優秀な人がいないのではなく、優秀な人が来たいと思わせる会社になっていないのが問題なのです」
クラウドの活用で働きやすい社会を創る
冒頭にも紹介したが、サーバーワークスのビジョンは「クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」である。その言葉通り、同社では様々なクラウドサービスを活用した「はたらきやすさ」の実現を目指している。
同社のオフィスはフリーアドレスで、仕事の内容に応じて自由に場所を選ぶことができる。「集中エリア」では、私語はもちろん上司による話しかけも厳禁。「コラボレーションエリア」は勉強会も頻繁に開催される。「コミュニケーションエリア」には、畳に寝転がって仕事するスペースもある。電話やWeb会議は特定の席でのみ可能。また、昼寝をするスペースもある。
端末は個人保有の機器を持ち込むBYODを推奨しており、そのための手当てを支給している。現状では社員の90%以上がBYODを選択しているとのことだ。
なおサーバーワークスでは、徹底的なクラウド化とBYODの導入によって社員の90%以上がリモートワーク経験者である。そして同社では、この働き方を「クラウドワークスタイル」と呼んでいる。
もちろん、どれだけ働き方改革を実現できたとしても会社として結果が出なければ無意味だ。しかし、サーバーワークスではクラウドワークスタイルを実現してからも、主力であるAWS事業は年率で40%以上の成長という実績を打ち出し続けている。
フリーアドレスの“困った”をSlackで解消
一方で、大石氏によるとフリーアドレスにして困ったことが1つだけあったとのことだ。それは「誰がどこにいるかわからない」問題である。
この問題を解消する方法としてサーバーワークスが選んだのがSlackだ。なお同社では、Slackの利用を定着させるために社内メールを全面禁止するという思い切った施策を打ち出した。現在では、全社向けのアナウンスからAWS監視対象の障害報告、そして社員同士の雑談まで、すべてがSlack上で行われている。
Slackの利用によって、同社ではカジュアルなコミュニケーションが社内の風土として定着しつつある。その結果、社員同士が自由に意見を出し合い、自主的にアイデアを実現しようとする空気が生まれている。
「実は、当社の男子トイレはSlackから予約ができるようになっています。これはある社員が自分のアイデアで作ったものです。ちなみに、予約後に個室が空いたらモバイルに通知が来るようになっています」(大石氏)
AWSやSlackというツール、そしてフリーアドレスのオフィス(ファシリティ)、これらを揃えることで、サーバーワークスは社員にとって働きやすい会社を目指している。ただし、これらの環境を整えただけでは、本当の意味での働き方改革は実現しない。最後に必要なのは「ツールやファシリティを有効に機能させるための文化」である。
「いい文化を定着させるには、ビジョンと評価の整合性を保たなければなりません。例えば、自由な働き方を推奨しているのなら、勤務態度を評価基準に含めてはいけません。働き方改革は社員との信頼関係と、お互いが納得したルールも必要です。それがなければ成り立ちません。例えば先程のクラウドワークスタイルは事前申請が必須で、寝坊したから自宅で作業、というのは認めておりません」
サーバーワークスが取り組む「はたらきかた改革」は以下のURLに詳細が掲載されている。また、オフィスの見学ツアーも随時受け付けているとのことなので、働き方改革の実現に頭を悩ませている方は申し込んでみるのも一考だろう。
オフィスツアー お申込み・お問合せ
「実は、当社では、東京オリンピック・パラリンピック期間中に休業を予定しています。まだ予定であり、具体的にどうするかは決まっていないのですが、2020年だけ使える一時的な有給休暇を支給する方法を検討しています。日本で開催される貴重な機会ですから、ボランティアに参加するなど、なんらかの形で貢献したい。それができるように、まずは会社を休みにしようという考えです。全社的に休業にすれば経営上のダメージはありますが、クラウドが本業なので、開催期間中に休みにしても売上の見込みは立てやすい。よってそれまでに儲かる仕組みを作っていこうと頑張っている最中です。私たちは、この試みを1つのムーブメントにしたいと思っています。もし共感していただけるのなら、ぜひ一緒にやっていきましょう」(大石氏)
セッションに登壇した各社のホームページでは、今回紹介したもの以外にも、様々な事例やデモなどが掲載されている。興味のある方は、それらもご覧になって新たな知見を得ていただきたい。
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