ゴルフは「腰」が大切
―― スマホを操作するために立ち位置を外さなくていいのが便利ですね。
野嶋氏「そうなんです。フィニッシュを検出すると撮影を終了、動画を切り出してスマートフォンに自動的に転送します。同時にウェアラブルセンサーのデータも一緒に送られていて、EXILIM Analyzer for GOLFアプリの画面で確認が可能です」
岩本氏「ここで注目していただきたいのは、身体にCMT-S10Gを付けて撮影した動画は、単なる動画ではないところです。
「アドレス」、「トップ」、「ダウンスイング」、「インパクト」、「フィニッシュ」という、ゴルフのスイングにとって重要な5つのポイントを自動的に検出して設定し(編注:チャプターみたいなもの)、各ポイントへワンタッチで頭出しができるんです。今までのように、シークバーを動かしながら見るべき場所を探す手間がありません。
この5つのポイントは、2つの動画を比較再生するときにも効果を発揮します。普通、2つの動画を同時に再生しても、スイングスピードやタイミングが人によって異なるので(プロとアマチュアでは特に)、バラバラに再生されてしまいますよね。CMT-S10Gを使って撮った動画には5つのポイントがあるので、各ポイントを基準に動画を同期再生して、再生速度やタイミングを自動的に合わせてくれるのです。
おかげで、とても比較しやすくなりました。さらに、2つの動画を重ね合わせて再生することもできます。撮影モードは映像記録として残るので、あとから何度も見返せるのが利点ですね」
―― CMT-S10Gの装着箇所に「腰」を選ばれた理由は?
野嶋氏「開発にあたり、何人ものレッスンプロの方々にお話を伺ってきました。すると、皆一様に、体の軸を最初に教えます、と仰るのです。ゴルフは頭、肩、腰が安定することが重要というのは、すべてのレッスンプロ共通の意見でした。私たちは装着するセンサーを1個にしたいと考えていたので、優先順位を考えると、まずは腰だろうと。
その先は、もう少し展開が広がってきたら考えようと思っています。というのも、装着するセンサーを2個にすると一気にハードルが高くなるんですよ。2個買う、2個付ける、2個ペアリングする……。というのは、お客様にとっても面倒でしょう」
―― モーションセンサー自体は、デバイス製品の得意なカシオらしい製品だと思います。とはいえ、ジャンル的にはまったくの新規分野ともいえる製品ですよね。製品化の苦労もさぞ多かったのでは?
野嶋氏「もともと、ゴルフイベントに「EX-F1」(最初のハイスピードエクシリム。2008年発売)を持ち込んで試したのがきっかけでゴルフカメラを開発するようになりました。でもカメラの事業部にいると、写真を撮ることが中心になって、なかなか先のステップに行けないんですよ。
ゴルフカメラの進化には、カメラだけでは限界があると思っていたので、研究センターに移ってカメラとセンサーの研究を続けていました。そして再びカメラの事業部に戻って、やっとCMT-S10Gを製品化できたのです」