アマゾン ウェブ サービス ジャパンは、6月1日から3日間にわたり、年次イベント「AWS Summit Tokyo 2016」を都内で開催。初日には、イベント初の「Enterprise Day」が開催され、AWSクラウドを利用している企業の事例などが披露された。

イベントのスタートにあたり、アマゾン ウェブ サービス ジャパンの代表取締役社長、長崎忠雄氏が登壇。今年は3日間で約16,400名もの応募があったことを明らかにした同氏は、「わずか10年ほどの間に売上を一兆円規模にまで成長させるというのは、おそらくIT業界でも初めてのことではないでしょうか。これも、AWSを支えてくださっている顧客の皆様のおかげです」と感謝の意を表した。

この日のテーマは「クラウドジャーニー」。これまでに積み重ねられてきた事例から、クラウドの導入ステップには、一定のパターンがあることが読み取れるという。

「まず小さく始め、その後ワークロードを広げていき”クラウドファースト”となります。それが最終的には、”クラウドネイティブ”にたどり着くというパターンです。そこまで到達した企業は、最初からクラウドに最適化したアプリケーションを開発し、120%AWSのポテンシャルを引き出すようになります」と長崎氏は強調し、基調講演へとつないだ。

デジタル産業へと変貌するGE - ポイントは洞察力の活用

基調講演のスピーカーを務めたのは、General Electric(GE) Global ResearchのIT CTO、エリック・タッカー氏。氏は「GEが語る、ビジネストランスフォーメーションにおけるクラウド活用の重要性」というテーマの下、同社のクラウドジャーニーを紹介した。

GE Global ResearchのIT CTO エリック・タッカー氏

「GEの歴史は、イノベーションの歴史でもあります。その中で学んだのは、たゆまぬ努力が必要だということ、そして、デジタルテクノロジーの持つ破壊的な力によって、ビジネスが大きく変わったことです。今やGEは、デジタル産業へと変貌を遂げています」
──冒頭、タッカー氏はこう熱弁を振るった。

と言っても、GEにとっての変化とは過去に背を向けることではない。交通やエネルギー、ヘルスケアなど同社が事業展開する幅広い産業分野において、人々に価値を提供し続ける点は変わらない。「そこに、いかにデジタルテクノロジーを取り入れていくか」に力点が置かれるようになったのである。

「この5年の間、当社は人工知能やロボティクスなどに精通した人材を何千人も採用してきました。なぜなら、これらの分野が将来GEの礎になると考えているからです。その戦略において、クラウドコンピューティングは極めて重要な要素となります」とタッカー氏は言う。

2011年以降、GEではAWSの利用を拡大し続けている。その目的は、コスト削減や業務効率化だけではなく、組織の潜在能力を埋もれさせずに引き出すことにもある。

「ポイントは、洞察力(=Insight)をいかに活用するかということです。いつか人々は、ロボットによっていわゆる”3K”の仕事から解放され、工場や農場はスマートに生まれ変わります。今はまだイノベーションの第一歩を踏み出したに過ぎませんが、目指す未来は洗練された洞察力によって作られていくことになるのです」(タッカー氏)

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