ガートナー ジャパンは6月10日~12日、年次カンファレンス「ガートナー データ & アナリティクス サミット 2019」を開催した。その最終日、堀内秀明氏(ガートナー マネージング バイス プレジデント)は「BI環境の改善を、今どう進めればよいか」と題し、BI市場を取り巻くテクノロジートレンドと今後の展望を紹介。ユーザー企業がBI環境をどのように改善して行くべきかについて提言した。
BI市場トレンドの変遷
ガートナーではBI市場が次のような世代を経て、発展してきたと考えている。
第1世代
IT部門が、ビジネス部門の必要とする分析インフラを一元的に提供することを前提としている世代。RDBMSに格納されているデータをETLツールで抽出し、データマートやデータウェアハウスにロードする。ただし、そのままでは使いにくいため、ユーザー部門にわかりやすいかたちでデータを管理するセマンティックレイヤーを介し、ダッシュボードやレポートを出力する。製品例としては、IBM、SAP、Oracleなどが提供するBIスイートが該当する。
第2世代
ユーザー部門が必要とする分析は標準的なものとは限らない。インメモリ化による高速処理や、スマートフォンでの感覚的なデータ操作の実現など、テクノロジーが進化したことでユーザー部門主導型の分析が可能になった世代。IT部門に頼らず、自由な分析ができると思ったユーザー部門からの高い支持を集めるのがこの世代の製品である。Microsoft Power BI、Tableau、Qlikがその代表例だ。
第3世代
第3世代の新しいBI製品を理解するためのキーワードが「拡張アナリティクス」である。UIだけを見ると第2世代の製品と似ているが、データ分析にあたってIT部門が頑張るのではなく、ユーザー部門が頑張るのでもない。”機械が頑張る”のがこの世代の製品の特徴だという。その代表例として、堀内氏は次の2つの製品を紹介した。
●Yellowfin:あるグラフを見て、なぜその結果になったかを調べたいと思ったとき、通常はユーザー自身がドリルダウンをしてインサイトを獲得するが、Yellowfinの分析プラットフォームでは、自動的にグラフの説明をテキスト化する。
●ThoughtSpot:検索窓に単語を入力すると、最適なグラフをツール側で提案してくれるデータ分析ソリューション。グラフのインサイトを自動提供する機能も備え、範囲を指定すると深掘りした分析とインサイトを得られる。さらに、それが役に立ったかどうかをフィードバックすれば、その結果も学習する。
現在は、ちょうどこれら第3世代の製品の提供が始まったばかりの時期であるという。
安定するまでに2~5年ぐらいかかるとしても、「ユーザー部門がデータを『試す』ことができる状況にあることを念頭に置く必要がある」と堀内氏は語った。