マンション建設にかかる費用は実際にどの程度かかるのか、そして建設費の計算をどのように行うのかご存知でしょうか? もしお持ちの土地にマンションを建てて運用することを検討中なら、ニーズに合致したマンションを構想し、建設費の算出をする必要があります。
本記事では、マンション建設にかかる費用の相場や建設費の計算方法を紹介するとともに、費用を抑えるコツなどについても解説します。土地活用としてマンション建設・経営を検討している方必見の内容になっていますので、建設計画を本格的に始める前の参考にしてください。
マンションを建設して経営するメリット
そもそも土地活用のなかでマンション建設・経営は最良の選択と言えるのでしょうか? まずは最初にマンション経営をするメリットを客観的に見てみましょう。
- 安定した収入が得られる
- マンションそのものが資産となる
これらのメリットを以下で詳しく見ていきます。
安定した収入が得られる
マンション経営の安定した収入を支える要素は2つあります。それはマンションの価値と経営です。
マンションは、耐用年数により多少は値下がりはするものの、株式投資などに比べて突然価格が暴落することはありません。そのため、安定した価値を保ち、その収入を長期間得ることができるというメリットがあります。経年劣化による価値の低下が懸念される場合でも、リフォームや建て替えなどを行い、価値を更新することでカバーすることも可能です。
また、経営する上でもマンションは長期的に住む人が多いため、収入が安定しやすいという面もあります。賃貸経営ではマンションとアパートがよく比較されますが、入居者がより定着されやすいのはマンションと言われており、それゆえに安定した収入を得られやすい傾向があります。
マンションそのものが資産となる
マンション建設はローンを組んで運用を始めることになりますが、その返済が終われば、マンションそのものが自身の資産となることも大きなメリットになります。
返済中は収入の何割かが経費とローン返済に取られるため、手元に残る利益が損なわれます。しかし、ローンを完済すれば削がれるのは経費だけです。後は全て利益となるため安定的な収入源とすることができます。
また、極端に資産価値が減ることが少ないため、将来的に配偶者や子どもなどに相続することもできます。ご家族がいる方なら、安定的な収入が得られる資産を継承できるというのは大きなポイントになるのではないでしょうか。
マンション経営についてはこちらの記事もおすすめです。

マンション建設に必要な費用
マンションのメリットがわかったところで重要となるのが、実際にそれを実現する費用です。ここからはマンション建設に必要な費用の計算法と相場を紹介します。費用を試算する方法を身につけて、シミュレーションをしてみましょう。
建設費を計算する方法
マンションの建築費を計算するには、以下の計算式を使用します。
この計算式における「坪単価」とは、建築費を床の面積で割り、1坪あたりで算出したものです。例えば2,000万円の建築費で100坪なら、1坪あたりの単価は20万円ということになります。
また「延床面積」とは、建物の床の総面積のことを指します。例えば各階30坪の2階建てマンションなら、単純計算で30坪が2階分ということで建物の総床面積は60坪ということです。
これらの坪単価と延床面積を合わせて計算することで建築費のおおよそを算出することが可能です。
建ぺい率による制限について
マンション建設では、建ぺい率に制限があることについても知っておきましょう。
建ぺい率とは、土地に対し建物が何割を占めているかということを指しており、土地によってその数値に制限があるのです。そのため、その土地の制限に合わせた建ぺい率の建物しか建てることができません。
建ぺい率の計算式は以下の通りです。
これを元に建ぺい率を試算してみましょう。100坪の土地で60%の建ぺい率を想定します。
この場合の建てられるのは100坪の土地に対し、60坪に収まるサイズの建物ということになります。ただしこれは土地に対する面積が制限内に収まれば良いため(水平投影面積)、例えば60坪の3階建てマンションなら、合計180坪とすることできます。
また、階数によって建ぺい率が違う場合は最も広い面積を採用します。
容積率による制限について
建ぺい率とあわせて、容積率についてもチェックしておきましょう。
容積率とは、土地の面積と延床面積の割合を指すもので、建ぺい率と同じく土地により制限があります。
容積率の計算式は以下の通りです。
これを踏まえて、100坪の土地で60坪の2階建てマンションを想定してみましょう。
この場合は容積率は120%までに納めなければならないということになります。
また、容積率を試算する際は、容積率の前面道路制限という、土地に面した道路幅の情報にも注意しましょう。容積率の前面道路制限とは、土地に面した道路幅が12m未満であるなら、その道路幅に定数をかけなければならないというものです。数字が小さい場合はその数字が容積率の上限になります。定数は0.4が多いですが、地域によって変わります。
容積率についてより詳しく知りたい方は、次の記事もご覧ください。

構造・階層別の建設費の相場
マンションの建設費は設計する構造や階層によってかなり変動してきます。尚、マンションで一般的な構造は以下の3つの造りです。
- S造(鉄骨造)
- RC造(鉄骨コンクリート造)
- SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)
構造と階層別の相場を比較してみましょう。
S造 | RC造 | SRC造 | |
2階建て | 約7千万円 | 約9千万円 | 約1億2千万円 |
3階建て | 約1億1,000万円 | 約1億4千万円 | 約1億8千万円 |
4階建て | 約1億5千万円 | 約1億8千万円 | 約2億4千万円 |
5階建て | 約1億9千万円 | 約2億3千万円 | 約3億円 |
”参考:不動産高く売れるドットコム「構造・階数別に見たマンションの建設費の相場」を参考に作成”
このように、RC造やSRC造は頑丈で耐震性も高くなりますが、建設費の相場も上がる傾向があります。
次に構造ごとの坪単価も比較してみます。
RC造 | RC造(壁式PC造) | S造(重量鉄骨造) |
坪90万円~110万円 | 坪70万円~90万円 | 坪80万円~100万円 |
このように同じ5階建てだとしてもS造とSRC造では約1.1億円、また坪単価では約20~30万円の差が生まれます。ただし、この相場はあくまでも基準値で、部屋数や立地条件によって建築費も変動します。そのため、おおよその目安として下さい。
マンション建設費用の内訳
次にマンション建設費の内訳を見てみましょう。建設費と言っても、その中には様々な内容が含まれています。これらの比率の感覚を把握していなければ、費用計画のバランスや節約するポイントも判断しにくくなってしまいます。だからこそ費用内訳についても知っておきましょう。
マンション建設費の内訳は以下通りです。
- 建物の建設費
- 工事費用
- その他諸費用
続いてそれぞれを詳しく解説していきます。
建物の建設費
まずマンション建設費用のうち、建物の建設費は50~70%を占めています。この建物の建築費は、構造などはもちろん窓や玄関口、加えて内外装といった純粋に建物を建てるだけにかかる費用を指します。
前出「構造・階層別の建設費の相場」でも述べた通り、建物の構造や坪単価によって建設費は変化するため、より正確に試算するには建てたいマンションの条件をまずは決める必要があるでしょう。
工事費用
工事費は、マンション建設費用の15~20%ほどを占めています。この工事費は建物以外のライフラインである電気、ガス、空調設備などを設置するための費用で、付帯工事費とも呼ばれるものです。また、建物から道路への道を整備するアプローチの外構工事もこれに含まれています。
その他諸費用
その他諸経費は、マンション建設費用のうち約5%ほどになります。建物にまつわる契約やローンにかかる費用などが含まれています。具体的には以下の通りです。
- ローン手数料
- 保険料
- 不動産取得税
- 登記費用
マンション建設の際に抑えておくべきポイント
ここまで見てマンションを建設する際にかかる費用について、おおよその予想がついてきたのではないでしょうか。そこで次にマンション建設の際に抑えておくべきポイントを解説します。
マンション建設・経営は「カタログから物件を見て選んで終わり」ではありません。周辺環境を加味しニーズに合ったマンションを建て、人気のマンションにしていくことを狙っていかなければいけません。そのため以下のポイントを予習して、どのような計画を立てるのか検討していきましょう。
- 立地のニーズを意識する
- 店舗区画も入れる
- ワンルームタイプを中心に間取りを設定
- バイク置き場を設置
- 実績のある管理会社を選ぶ
以下で各ポイントを詳しくご紹介します。
立地のニーズを意識する
相続した土地にマンションを建てるのなら、周辺の立地に注目しましょう。不動産を経営する場合には立地のニーズに合った物件を建てることが、空室リスクを避けることに繋がります。そのため、所有している土地、またはこれから土地を購入する方はその候補地周辺に何があるか見てみましょう。
例えば次のようなことが集客においてのポイントになります。
- 利便性が高くなるポイント…駅から5分~10分圏内/駅へのバスが発達している
- 生活しやすくなるポイント…周辺にスーパー・コンビニ・ドラックストアが複数ある
- 生活充実度が高くなるポイント…周辺に医療施設がある・緑が多い・行政アクセスが良い
- 子どものいる方が生活しやすくなるポイント…歓楽街が周辺に無く閑静、学校・保育園・公園がある
このようにマンション=住居として住みやすいと思える環境が揃っているかが重要となります。例えば上記のポイントから発展させ、閑静で学校があり子どもが育てやすい環境が整っているなら、ファミリー向けのマンション、大学が近い場合は1人暮らし向けのマンションと言うようにニーズを考えることができます。
すでに土地を持っている方は、このような立地のこだわりになり得るポイントをしっかりと把握して、ニーズに合ったマンションを目指していきましょう。またこれからマンションを建てるために土地を購入する方は、そのような付加価値がないかを入念に候補地を調査してみて下さい。
店舗区画も入れる
マンションを建てるのならば、1階部分を店舗区画として使えるようにすることもおすすめです。1階を店舗として貸すのは下駄ばきマンションと言って、住居より高い賃料で貸し出しすることができるため、不動産経営の利回りを高めてくれる要素となります。
ただしマンションの1階を店舗区画として想定するのなら以下の点に注意しましょう。
- 柱が少ない・無柱空間でないと貸しにくい
- テナントの需要がないと無駄になってしまう
柱が少ないもしくは無柱空間である必要がある理由は、柱が店づくりの邪魔になることがあるためです。そのため店舗区域として売り出すなら、設計段階からなるべく無柱空間とするようにしましょう。
また、当然店舗区画として稼働するにはそこに入るテナントがいなければ意味がありません。これは事前に周辺の調査を行い、目ぼしい店舗と出店交渉をするのも良いでしょう。
土地活用コンサルタントに相談することもおすすめです。立地に対して企業の店舗需要がないか調べてくれるため、店舗区画の契約先を見つけやすくなるでしょう。
土地活用コンサルタントについては、次の記事で詳しく紹介しています。

ワンルームタイプを中心に間取りを設定
マンションの間取りはワンルームタイプを中心に設計することもおすすめです。家族連れの間取りも需要がある土地なら有効ですが、現在ワンルームタイプはファミリータイプより賃料単価が高くなっています。さらに都心部では需要が多いため、今後も一定数需要があり続ける可能性が高いです。
そのため、ワンルームタイプを中心にマンションを設計して、一定の入居者需要を安定して狙えるような形にするのもポイントになります。
バイク置き場を設置
もしワンルームタイプを導入するならバイク置き場を設置することもおすすめです。何故なら単身者はバイクを持っている人が多く、バイク置き場を求める人も多いためです。しかし賃貸マンションではバイク置き場がない場合が多く、別途駐車場を探さなければいけない人が多いと言われています。
だからこそバイク置き場を設置すれば、より単身者向けのマンションとして、そのような需要を狙えるでしょう。これは他の競合となるマンションとの差もつきやすくなります。
実績のある管理会社を選ぶ
可能であれば、マンション建築の計画段階からマンション管理会社の参画を求めるのがおすすめです。早い段階で管理会社を選び、その意見を求めることで、実際に管理・運営している立場からわかる、管理しやすい環境や住民のニーズなどを加味してマンションを建てることができます。
管理会社は実績のある会社を選ぶようにしましょう。例えば管理会社の評判を調べて選んでいくことも大事ですが、評判や会社の規模だけで選んでしまうと思ったようなサービスではなく、失敗することもあります。そのため、実際の実績にも注目して管理会社を選ぶことが大切です。
また、管理会社といっても様々な会社があります。例えば住宅の管理専門の会社、または不動産会社系を運営する管理会社などです。それぞれに強みが異なるため、自分が求めるものと合っているかを吟味して決めましょう。
実際にマンション入居者の声を集め、人気の管理会社について解説した以下の記事もぜひ参考にご覧ください。
マイナビニュース「マンション入居者が選んだ「満足度の高い管理会社」、1位は?」
マンション建設の際の注意点
せっかくマンションを運用するなら、なるべくリスクを少なくしたいと思うところでしょう。そこで次にマンションを建てる上で気を付けたい、以下の注意点について解説します。
- 投資すべき点を見極める
- 近隣住民からのクレームに備える
- 適切な規模のマンションを建てる
- 駐車場の設置を検討する
各注意点を以下で詳しく見ていきましょう。
投資すべき点を見極める
マンションを建設し不動産経営をしていく上では初期投資額をなるべく抑えて建設して、なるべく早く費用回収ができることが理想かもしれません。しかし「とにかく安くマンションが建てられれば大万歳!」と安易に考えるのは危険です。
何故なら、あまりにコストダウンにとらわれてしまうと、集客力がある強みがないマンションになってしまうためです。マンションは設備の充実度が高いほうが入居率も上がりやすく、見栄えも重視する人が多い傾向があります。
そのため、無駄な初期投資は避けるべきですが、周辺競合より便利だと思われる設備を導入したり、その立地に求められる住居条件を加味して投資すると良いでしょう。費用はかけるべき点と節約するべき点をしっかりと見極めて下さい。
マンション建設に関してはこちらの記事もおすすめです。

近隣住民からのクレームに備える
マンションの建設をする際は、自治体によっては近隣説明会の開催が求められることがあります。この近隣説明会では、所有している土地にどのような建物を建てるのか説明し、近隣の方に理解してもらうことが目的です。
近隣説明会の際には、参加した近隣の住民から意見や質問が出ることがあります。工事中の騒音・振動や工事車両の動線、竣工後の日照の問題など、マンションの建設中や建設後に周辺に与える影響については、住民は非常に敏感です。建設会社や、既に契約している場合は管理会社、必要に応じて市区町村役場などの関係者ともよく打ち合わせをして、意見や質問に対する適切な回答を用意しておきましょう。
「覗かれる」などのクレームがついた場合、場合によっては設計変更や追加工事が必要になり、そのための費用がかかる可能性があることは気にしておく必要があります。。
適切な規模のマンションを建てる
先述したようにそれぞれの土地ごとに、建てられる建物には法的な規制があります。まずはその法規制に従うことが大前提です。その上で最大限に強みを活かせる間取り、設備、駐車場などを完備していきましょう。
また、その規制ギリギリで造ることにとらわれず、必要な設備を土地に設置することを考えることや、周辺の需要に合った規模のマンションを建てることも意識してみて下さい。
駐車場の設置を検討する
マイカーを持つ人は年々少なくなっていると言われていますが、車を持つ家族連れやバイクを持つ単身者が多い地域もあります。また、郊外や地方などでは車は重要な交通手段となるため、駐車場があるマンションの方が有利になります。
そのため、マイカーを所有している住民が多いエリアであれば、駐車場の設置も含めてマンションの規模を決める必要があります。普通乗用車の場合にはそれなりの土地や駐車場設備が必要となるため、なるべく早く調査をして、計画に盛り込むかの判断をしましょう。
マンション建設費用を節約する方法
本記事の最後にマンション建設費を節約する以下の方法を厳選してご紹介します。
- 複数社に見積もりを取る
- 形状は羊羹切りにする
ぜひこれから計画を本格的に進める方は参考にしてみて下さい。
複数社に見積もりを取る
より安く質の高いマンションを建てたいのであれば、依頼する建設会社は複数社から見積もりを取るようにしましょう。複数社から見積もりを依頼することで、その価格とサービスを比較・検討することができ、適正価格と必要な条件を満たした1社に絞り込むことができます。
複数社の建設会社を比較する場合には以下のポイントをチェックしましょう。
- 価格は適正か?…相場より高くないか/安いだけではなく質の保証があるか
- 安い理由は?…特に価格に安くて惹かれるなら、安くできる理由を理解して選択する
- 実績は?…同じような条件でどの程度の物件を建てているか
形状は羊羹切りにする
建築的な観点からマンション建設費を節約したいのであれば、マンションの形状を長方形に整形された羊羹切りの形にするのがおすすめです。
形が整っているため余計な壁や構造が必要にならず、シンプルで実用的な間取りが造りやすくなります。そのため余計な費用がかからず、かつ人を選びにくい部屋で構成しやすいのです。さらに耐震強度を高められるというメリットもあります。
ただし羊羹切りタイプは、物件や間取りに個性が出しづらいという側面もあります。コストと個性のどちらを取るかは、土地活用コンサルタントや建築会社などの担当者や設計者に相談して決断するのがおすすめです。
まとめ
本記事を通して、マンションの建設費がどれほどかかるのかわかって頂けたかと思います。ただしより正確な金額は構造や土地の条件により左右されるため、建てたいマンションの条件をしっかりと決めておきましょう。
その際に条件を決める際は周辺の立地調査をし、その需要と立地の強みを把握して活かす必要があります。同時に効率化も意識しつつ、バランスを考えて費用を割り振るようにして下さい。
また、最終的に建設会社を選定する際は複数社に見積もりを頼み、比較・検討して自分に有利な会社を選べるようにしましょう。ぜひ入念な準備をして、人気のマンション経営を目指して下さい。
※「マイナビニュース土地活用・不動産投資」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
・https://www.fsa.go.jp/news/30/20190328_summary.PDF
・https://www.fsa.go.jp/news/r4/kokyakuhoni/20230120/kpi_toushin_230120.pdf
・https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/overview/minpaku/law1.html
・https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001411696.pdf
・https://www.fsa.go.jp/
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