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「ハロー、イノベーターの皆さん! 今日の私は"ピクセル表示されたアバター"の姿ではありますが、この場でメッセージをお伝えできて光栄です」。
国立オペラハウス内の巨大スクリーンに映し出されたオバマ米大統領夫人。ビデオメッセージであることをユーモアを交えて弁明しながら、世界69カ国から集まった学生たちを称えるスピーチを始めた。これは「テクノロジーを活用して、世界の社会問題を解決しよう」をテーマに繰り広げられた「Imagine Cup 2010」の閉会式でのひとコマである。
ポーランド・ワルシャワで開催されていたマイクロソフト主催の国際ITコンペティションImagine Cup 2010は、7月8日の閉会式をもって幕を閉じた。本レポートでは『ImagineCup 2011』に向けて、閉会式で語られた要人たちからのメッセージを伝えていく。
国際ITコンペティション『Imagine Cup 2010』レポート
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舞台はポーランドからアメリカ・ニューヨークへ
Imagine Cup閉会式では各部門の最優秀チーム発表と授賞式に続き、翌年の開催国へ旗を引き継ぐ「フラッグセレモニー」が行われるのが恒例となっている。
まずは、ポーランド副首相のWaldemar Pawlak(ヴァルデマル・パヴラク)氏が登壇し、6日間の大会を振り返った。ポーランドで開催できたことへの謝辞を述べた後、「皆さんを見ていて、学生時代に初めて手にしたコンピュータ"The ZX Spectrum"を思い出していました」と、感慨深げに語った。
「640KBメモリと20MBのハードディスクという、当時としては最先端のものでしたが、今やその何倍ものパワーとコミュニケーション力を持った携帯電話に象徴されるほどに、時代は変化しました。現在私は、16歳下の大学教授からインターネットを学び、そのお返しに彼に"人生"を伝授しています」。その言葉の中に、大人たちは"古い時代の方法論に固執せず、未来を若者に託す覚悟をすべし"という含みを感じた。
最後に、開会式でショパンの言葉として述べていた「伝統を重んじつつ、積極的にチャレンジせよ」を、改めて学生たちに贈っていたのが象徴的であった。
ニューヨーク開催決定! オバマ大統領夫人から熱いメッセージ
スクリーンに登場したミシェル・オバマ氏がメッセージを贈る。「世界のリアルな問題に、ITを使ったリアルなソリューションで取り組んでいる皆さんの功績を称えたいと思います。皆さんの技術とパッションが"世界を変えていく"のだと感じています。新たな思考法、新たな行動力、新たな学習法……、それが"イマジネーション"ではないでしょうか」。世界が抱える貧困や飢餓、環境問題は、学生イノベーターたちの頭脳と行動力の結集によって解決に導くことができると強調した。
そして、夫であるオバマ米大統領の言葉として「小さなイマジネーションから、大きな課題へのソリューションが生まれる」を引用し、さらに自身の経験談を次のように続けた。
「中には『世界の社会問題に取り組むには若すぎる』と言う人がいますが、そんなことはありません。今年はじめにテキサスのLi Boyntinという女子高校生と会いました。彼女は、世界中の飲料水の品質を改善したいという思いから、生物発光細菌を使って、安価に安全に実施できる水質汚染の検査法を発見し、大規模な科学コンテスト『International Science and Engineering Fair(ISEF)』で最優秀賞を受賞しました。いつの日か彼女の発見が、10億人の生命をつなぐものとなるかもしれません。そして、皆さん一人ひとりが同じ力を持っているのです」
そして力強く、次回のニューヨークでのImagine Cup開催を支援すると告げた。「携帯電話を使った健康管理システム、コンピュータプログラムを使った斬新な遠隔教育システム、発展途上国で安全に使える調理器具など、皆さんのイマジネーションを実現して、ぜひ来年のニューヨークの舞台で見せてください」。
(オバマ夫人が言及した「ISEF」については、今年の大会レポートを参照いただきたい)
"学生たちの能力や可能性に賭けたい"という国家の姿勢
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米教育省で政策顧問を務めるハル・プロトキン氏。オバマ大統領が、以前演説で観衆に説いた『We are the one We have been waiting for』を用いて、『You are the one We have been waiting for』とメッセージした |
話が前後するが、「フラッグセレモニー」でポーランド副首相から、フラッグを引き継いだハル・プロトキン氏について触れておきたい。
同氏は、米国の教育省・教育次官局、Senior Policy Adviser(上級政策顧問)を務めているが、もともとはシリコンバレーのジャーナリストとして活躍していた。その後、カレッジの評議委員などを務め、2009年のオバマ政権誕生直後、現在のポジションに迎え入れられた。こうした人選を見ると、米国政府が教育分野での技術推進に本腰を入れている様子が伺えるだろう。
このような背景から、来年の「Imagine Cup 2011」のホスト国に名乗りを上げたのではないかと考えられる。また、同氏やオバマ夫人のメッセージからは、米国自身が抱えるさまざまな問題が深刻化する中、学生たちの能力や可能性に賭けるという強い思いも汲み取れよう。そうなると、米国からの参加者たちはこれまでに以上に気合いを入れてくるはずだ。
日本の学生たちもぜひ、ニューヨークを目指してチャレンジしていただきたい。すでにニューヨーク大会へのエントリーは始まっている。
競技部門は、ソフトウェアデザイン/ 組み込み開発/ ゲームデザイン/ デジタルメディア/ ITチャレンジの5部門となっている(2010年7月15日時点)、ただ、Imagine Cupの過去の経緯からすると、部門が途中で変更になる可能性もあるため、詳細についてはWebサイトをよく確認してほしい。