パナソニックは25日、フルHD動画の撮影機能に対応したデジタル一眼カメラ「LUMIX DMC-GH1」を4月24日から発売すると発表した。動画撮影機能付きデジタル一眼では世界で初めて動画撮影中のフルタイムAFに対応するなど、充実した動画撮影機能を搭載した。価格はオープンプライスだが、新開発の10倍ズームレンズとのセットでの推定市場価格は15万円前後。単体、標準ズームキットも用意するが、現時点で価格は未定。

フルHD対応の「ムービー一眼」

3色のカラーバリエーションが用意される

DMC-GH1は、マイクロフォーサーズ規格を採用したデジタル一眼カメラ「DMC-G1」のバリエーションモデルとなり、新たにフルタイムAF対応のフルHD動画の撮影機能を搭載した。動画撮影機能を搭載したレンズ交換式のデジタルカメラの中でフルタイムAFに対応したのは世界で初めてだという。

動画撮影機能搭載のレンズ交換式カメラの中で、世界最小・最軽量、世界初のフルタイムAF、AVCHD対応を実現

フルタイムAFに対応するために、新たにキットレンズとして「LUMIX G VARIO HD 14-140mm/F4.0-5.8 ASPH./MEGA O.I.S」を開発。EDレンズ2枚、非球面レンズ4枚を使用した光学10倍ズームレンズで、ダイレクト駆動のリニアモーターを採用するなどして、高精度で静音駆動を実現。さらにマイクロステップ虹彩絞り駆動システムにより、動画撮影時に「ほぼ無段階」(同社)でなめらかに絞りが動作するようにした。

フルタイムAFを実現する新レンズ。光学10倍ズームで利便性が高いスペック

背面右上には動画ボタンを新設、どの撮影モードでもすぐに動画撮影が行える。カメラが状況を判断して最適な撮影設定を行う「おまかせiAモード」も動画に対応し、顔や風景、マクロなど、状況に合わせて設定が変化する。

小型軽量のDMC-GH1

背面。右肩にある赤いボタンが動画撮影ボタン

本体上部にはマイクを搭載

本体側面にHDMI端子を装備

また、フルHD動画撮影のため高速読み出しが可能なLive MOSセンサーを新開発。2CPUによる高速処理が可能な映像処理エンジン「ヴィーナスエンジンHD」によって、1920×1080のフルHD動画が可能になっている。

新開発のLive MOSセンサーと、既存モデルのDMC-G1と同じくヴィーナスエンジンHDを搭載、フルHDの動画撮影に対応した

総画素数1,398万画素、有効画素数1,210万画素の新Live MOSセンサー

撮影できる動画フォーマットはMotion JPEGに加え、AVCHDにも対応。AVCHDでは、1920×1080・60iのフルHD、1280×720・60pのHDの撮影が可能。動作速度の問題で、フルHDでは24fpsを60fpsとして記録する。

ヴィーナスエンジンHDは従来通り

AVCHDのフルHD/HD、Motion JPEGでの撮影に対応。フレームレートのより高い720pのHD動画の方が動きの速い被写体などには有効

ホットシュー前部にはドルビーデジタルステレオクリエーター方式のステレオマイクを搭載。ズーム連動機能には非対応だが、臨場感のある音声を記録できるという。また、別売でホットシューに接続するステレオマイクロホンを用意しており、より広範囲の音声を記録できる。

ステレオマイクを搭載。さらに別売のマイクを装着することもできる

AVCHDの記録に対応するため、同社の薄型テレビ「ビエラ」やBlu-ray/HDDレコーダー「ディーガ」にSDカードを挿入して記録した映像を簡単に再生できる。また、カメラとテレビ・レコーダーをHDMIケーブルで接続すれば、「ビエラリンク」によってテレビのリモコンで再生操作などが行える。

カメラとしてのスペックは、有効画素数1,210万画素のLive MOSセンサーを搭載。新開発のセンサーは総画素数が1,398万画素で、フォーサーズ規格のセンサーとしては一回り大きいものを採用しており、標準の4:3のアスペクト比に加え、3:2、16:9のアスペクト比もサポート。いずれのアスペクト比でも画角が変化しないマルチアスペクトに対応する。画角は変化するが、1:1のアスペクト比でも撮影が可能だ。

マルチアスペクトに対応。1:1での撮影も可能だ

また、新構成のノイズ低減プロセスを採用することにより、高感度撮影時のノイズを大幅に低減し、従来比で1から2段分のノイズ低減を実現したという。

今春のLUMIX新製品で搭載された「個人認識機能」も搭載。顔検出と連携して動作し、カメラに登録した人の顔を見つけると、優先的にAFとAEをあわせ、液晶画面上にはその人の名前などを表示する。同社では、コンパクトデジカメに比べて被写界深度が浅いため、より効果的な機能だとしている。

個人を識別してAF/AEをあわせる個人認識機能

おまかせiA機能は、静止画撮影時には人物 / マクロ / 風景 / 夜景 / 夜景&人物 / 通常が自動で動作。さらに個人認識機能で3歳未満の乳幼児を登録すると、「赤ちゃん」も動作する。動画撮影時は人物 / マクロ / 風景 / ローライト / 通常が動作する。

同社のデジタルAVCマーケティング本部長・西口史郎氏は、現在の不況の中でも「薄型テレビやBlu-ray製品の売り上げは好調」との認識を示し、「さらにそれに弾みをつける商品がデジタル一眼カメラ」だと指摘する。同市場は今年も引き続き拡大するとの予測で、「新たな商品提案で販売を拡大していきたい」(西口氏)考えだ。

DMC-GH1を持つ西口史郎氏

そうした中で現在、「デジカメは必需品と浸透している」(同)が、「もっと高画質の(画像を撮りたいという)ニーズが高まっている」(同)。コンパクトデジカメユーザーの実に9割以上が、「もっときれいな写真を撮りたい」と感じているそうで、そのうちの約7割がデジタル一眼を使ってみたいと考えているという。

デジタル一眼市場は好調で、デジタル一眼に興味のある人も多い、と西口氏

ただし、特に女性にとってデジタル一眼に移行するためには「大きい、重い、難しいという3重苦があった」(同)。その解消を目指したのがDMC-G1で、コンパクトなボディ、おまかせiAによる簡単操作、背面液晶とファインダーの「Wライブビュー」によって「デジタル一眼の概念を変えた」(同)という。西口氏は、これによって女性ユーザーの拡大に成功したと胸を張る。

特に女性のとっての3重苦を、DMC-G1によって解消した

DMC-G1で「小さい、軽い、簡単」を実現

そのバリエーションとなるのがDMC-GH1(左)。デザインなどはほとんど変わらない

そして今、デジカメは「大きな変革期に入っている」(同)。それがHD動画で、デジカメユーザーの約4割が動画撮影に興味を持っているのだという。記録メディアの大容量化・低価格化、HDムービーカメラの拡大、フルHD対応テレビの普及といった要因もあって、HD動画の撮影ニーズが高まっているという。

HD動画へのニーズは高いという

それに対して同社は、コンパクトデジカメ「DMC-TZ7」「DMC-FT1」でHD動画撮影に対応。気軽にHD動画を撮影する「いつでも撮り」を提案。同社はテレビで写真を写して楽しむ「テレ写」を進めているが、これがさらに「ハイビジョン動画時代へ進化している」(同)と指摘する。

テレ写がさらに進化してハイビジョン動画時代になる

DMC-GH1で撮影した動画をフルHDテレビに出力したところ

今回のDMC-GH1は、コンパクトデジカメの「いつでも撮り」ではなく、デジタル一眼らしい幅広い撮影表現、レンズ交換によるレンズの持ち味を生かした撮影が可能なため、「クリエイティビティを引き出す作品作り」(同)に使ってほしいとしている。

デジタル一眼特有の表現によって、クリエイティブな動画が撮影できる

手軽なコンパクトデジカメ、長時間撮影用のHDムービー、そして作品作りのデジタル一眼という使い分けを想定している

クリエイティブ動画モードでは、絞り/シャッター速度優先AEが利用できる

HD対応レンズは現時点でキットレンズのみだが、今年中に7-14mmの広角レンズを発売。今後は20mm F1.7のパンケーキレンズ、45mm F2.8のマクロレンズに加え、Leica M/Leica R用のマウントアダプターも提供する。従来のフォーサーズレンズ用マウントアダプターも加え、幅広いレンズ交換に対応させることで、ビデオカメラにはない幅広い表現が可能になるという。

今後のレンズロードマップ

小型の広角ズームレンズ

パンケーキレンズ(左)とマクロレンズ(いずれもモックアップ)

なお、14-140mmの10倍ズームレンズは単体発売も行われ、既存のDMC-G1でも利用できる。

松本時和氏

パナソニックAVCネットワークス社DSCビジネスユニット長の松本時和氏は、DMC-GH1が「新世代一眼の名にふさわしい」と自信を見せ、「LUMIX Gシリーズで新しいデジタルイメージングの世界を提案していく」と意気込みを語っている。

特に女性に向けたマーケティングを継続するパナソニック

今回もCMキャラクターには女優の樋口可南子さん(中央)率いる「女流隊」が登場