DTP・印刷業界を取り巻くフォント環境は、この数年で大きなうねりともいえる変化がもたらされている。「葛」「鰯」「飴」といった168文字の字形変更と、第3水準漢字10字の追加が行われた「JIS2004」規格は、2007年リリースのOS「Windows Vista」「Mac OS X v10.5 Leopard」にて、標準搭載のフォントレベルで正式対応となった。またOpenTypeフォントでは、収録文字数2万文字以上の「Adobe Japan 1-5(Pr5/Pr5N)」「Adobe Japan 1-6(Pr6/Pr6N)」仕様が主要フォントベンダーの一部フォントで採用され始めている。こうした現状を踏まえ、「PAGE2008」に出展された主なフォントベンダーブースをレポートしていこう。

フォントの最新トレンドとアナログの魂が同居 - リョービイマジクス

リョービイマジクスのブースでは、「JIS2004」規格に対応する、Windows版TrueTypeフォントシリーズ24書体35フォントほか、開発中のOpenTypeフォント「本明朝-Book 書籍専用パック」「リョービ伝統書体シリーズ」などが展示されていた。「JIS2004」対応Windows版TrueTypeフォントシリーズは、同社の代表的な製品"本明朝ファミリー"、"ナウシリーズ"などがそれぞれパッケージされ、同名のMacintosh版CIDフォントとフォント名が完全互換するという。

リョービイマジクスのフォント開発は、金属活字書体からの精神が根底に流れているのかもしれない

「本明朝-Book 書籍専用パック」は、Adobe Japan 1-5(Pr5/Pr5N)仕様に対応し、"本明朝"を書籍本文組み専用書体としてブラッシュアップしたフォントのパッケージだ。和欧混植を考慮し、欧州フォントメーカーからライセンスを受け、"本明朝-Book"用にチューニングした欧文書体4種もバンドルされるユニークなセットとなっている。「リョービ伝統書体シリーズ」は宋朝体"花胡蝶"、楷書体"花蓮華"、隷書体"花牡丹"からなり、台湾のデジタルタイプ企業と共同開発されたもので、東洋漢字文化をイメージさせるデザインだ。 「本明朝-Book 書籍専用パック」「リョービ伝統書体シリーズ」ともに、2008年中の発売を予定しているとのこと。なお、Macintosh CID版は既に発売となっている。またブースでは"本明朝"の原字制作者杉本幸治氏による講演「本明朝を語る」の模様を再構成した小冊子も配布されていた。リョービイマジクスの前身、晃文堂での金属活字書体開発から受け継がれる"本明朝"への思いが綴られていて面白い。

フォントだけでなくDTP環境をも包括的にサポート - フォントワークスジャパン

フォントワークスブースは、入会金と年会費で同社のすべてのフォントが利用できるライセンスプログラム「LETS」の全179書体の書体見本ほか、「LETS」会員向けに無償提供される「Power Up Tool Kit」、Adobe InDesign用異体字一括変換プラグイン「舞字形」などの展示・紹介を行っていた。

「LETS」全179書体の展示は圧巻

展示されていた「LETS」書体見本には、2007年12月にリリースされたばかりの"万葉行書"、"万葉草書"、"ニューシネマ"も含まれていた。Adobe Japan1-5(Pr5)に対応した"筑紫明朝"も既にリリースされており、「LETS」を中心とする同社のフォント環境はさらに充実したと言えそうだ。また、「Power Up Tool Kit」にはAdobe Illustrator CS/CS2/CS3対応のオブジェクト整列プラグイン「LETS DressRight」や、縦組み中の組数字専用デザイン数字フォント、特殊な約物や括弧類を収録した記号フォントなどが新しく追加されていた。

「舞字形」など含め、フォント環境だけでなく、ユーザーのDTP環境そのものの向上を推し進めようとする同社の姿勢が感じられるブース展開だった。