コロナ禍で収入が減ったり、仕事を失ったりしている人たちを狙って、SNSを使った違法なお金の貸し付けがはびこっています。「#個人間融資」と呼ばれるこの行為は、InstagramやTwitterに「お金を貸せる」と投稿することから始まります。

投稿にはかわいいイラストや親しみやすい文面とともに、「#即日入金」「#ブラック(リスト)OK」など、困っている人が飛びつきたくなるハッシュタグが付けられています。融資を受けたい人がSNSのプロフィールに記載されたLINEアカウントとつながると、融資の交渉が始まります。

しかし、こうした個人間融資は貸金業法の規定に抵触する場合があり、注意が必要です。個人を装った「ヤミ金」も多くいるとされています。

  • Instagramは「#個人間融資」の検索で最近の投稿を非表示にしていますが、類似のハッシュタグが多く存在

個人間融資ではトラブルが多発しています。どんな問題が起きているのでしょうか。

まず、法外な利息です。正規の賃金業者の場合、上限金利は年20%(元本10万円未満の場合)ですが、個人間融資ではそれ以上の高い利息を設定されてしまいます。

国民生活センターへの相談事例では、被害者がSNSの投稿を見て相手に連絡を取り、個人情報を伝えたところ、「審査のために2万円振り込むので、こちらにそのまま返してほしい」と言われたそうです。しかし心配になったためやめたいと伝えたら、「すでに1万円を振り込んだので、1週間後に3万円を返すように」と言われたとのこと。勝手に振り込み、利息を取ろうという魂胆です。

保証金という名目でお金を取られるケースもあります。融資の前に保証金分としてプリペイドカードを購入して番号を伝えるようにと言われ、そのまま相手と連絡が取れなくなった人もいるそうです。

女性の場合は、性犯罪に巻き込まれる可能性が高くなります。性的関係を見返りに金を貸す「ひととき融資」や、裸の画像を送ることを強要されることも。2019年7月に逮捕された男は、女性名義の借用書を16人分持っており、融資や返済のたびに関係を求めていたといいます。

そして、連絡のとき相手に教えた住所や氏名、銀行口座などの個人情報を悪用される危険もはらみます。金融業者の名簿に載せられたり、振り込め詐欺に利用されたりすることが考えられます。

未成年が加害者になった事件も発生

「SNSで知らない人からお金を借りるなんて危ない」――大人であれば想像がつくかもしれませんが、若者にとってSNSは身近であり、つい連絡を取ってしまうのかもしれません。

2019年12月には、19歳の少女が融資の保証金名目で115人から計約200万円をだまし取り、逮捕されました。融資の呼びかけにはTwitterを使っており、被害者には12歳の女児がいたというから驚きです。なぜ詐欺を行ったかというと、19歳の少女自身が同様の手口で詐欺被害に遭ったからとのこと。悔しかったのはわかりますが、まぎれもなく犯罪です。

2022年4月1日から成年年齢が引き下げられることによって(20歳から18歳へ)、18歳以上の若者が法定代理人(親権者など)の同意がなくても、お金の借入れをはじめとする多くの契約ができるようになります。神奈川県は若者向けに「ヤミ金融に注意して!」というリーフレットを作り、ヤミ金の手口を紹介しています。そこには「#個人間融資」の書き込みが危険であることも記載されています。

もちろん、大人も注意が必要です。金融庁も「SNS等を利用した「個人間融資」にご注意ください!」と呼びかけています。

もし「#個人間融資」などでトラブルに巻き込まれた場合は、以下の相談窓口が利用できます。

ネットの向こうにいる人は、どんな人かわかりません。こちらの弱みにつけこむために最初は優しく接してきますが、甘い話、おいしい話はありません。「#個人間融資」をうたうアカウントとつながることは絶対にやめましょう。