シャープの沖津雅浩社長 CEOは、2026年2月24日、同社イントラネットを通じて、社員を対象にしたCEOメッセージを配信した。
「公表値達成に全力を尽くそう」と題し、2月10日に発表した2025年度第3四半期決算の報告やディスプレイデバイス事業の構造改革について言及する一方、通期目標の達成に向けて強い意思を示した。
シャープが発表した2025年度第3四半期(2025年4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比14.5%減の1兆4176億円、営業利益は同101.0%増の409億円、経常利益は8億円から477億円に拡大、当期純利益は前年同期の35億円の赤字から675億円の黒字に転換している。
沖津社長 CEOは、今回のCEOメッセージのなかで、「第3四半期の業績は、アセットライト化の影響や需要の低迷、競争環境の激化などにより、前年同期比で減収減益となったが、ブランド事業を中心に着実に利益を積み上げた結果、前回決算で上方修正した公表値の『営業利益450億円』に対しては、第3四半期累計で409億円までの進捗となった。さらに、自己資本比率は、当面の目標である『20%』に対して、17.8%まで改善が進むなど、財務基盤の強化も、想定を上回るペースで進んでいる」と報告した。
その一方で、「足もとの事業環境は、競争環境の激化に加え、パソコン特需の減速やメモリー価格の急騰によるコストアップ、不安定な為替相場など、日増しに厳しさを増している。公表値の達成まであと一歩のところまで来てはいるものの、まったく予断を許さない状況にある」と指摘。「3月最終日までの残された期間、引き続き全社一丸となって売上拡大による利益の積み上げに全力を尽くすとともに、これまで以上に高いコスト意識を持って、日々の業務に取り組もう。全員の力で、なんとしても公表値をやり遂げよう」と呼びかけた。
Dynabookによるシャープのパソコン事業は、第3四半期までは極めて好調であり、Windows 11への切り替え需要が継続。なかでも、プレミアムモバイルモデルの販売が良いことが収益を押し上げたという。とくに、国内B2Cや、官公庁および自治体向け販売が大幅に伸長。GIGAスクール向けの販売も好調だったという。
実際、第3四半期の決算会見では、B2Cは、年末にかけてメモリーの価格上昇を意識し、パソコンの購入を急ぐ動きがあり、Dynabookは、前年同期比7割超の増収になったことにも言及していた。
国内PC市場では、2025年12月上旬に、マウスコンピューターが公式Xで、パソコン購入を検討している人に対して、早めの購入を勧めるとの投稿を行ったことから、2026年1月以降の値上げや品薄を懸念した個人ユーザーが殺到する「マウスエフェクト」といわれる現象が引き起こされ、個人向けPC市場全体で、販売台数が一気に増加していた。その影響が、Dynabookにも及んでいたといえそうだ。
だが、今回のCEOメッセージでは、「パソコン特需の減速」に明確に言及しており、第4四半期(2026年1月~3月)に入ってから、すでに「パソコン特需の減速」が表面化していることを指摘した格好だといえる。
一方、ディスプレイデバイス事業の構造改革の取り組みでは、第3四半期決算の席上で、「亀山第2工場の生産停止」と「SDP(堺ディスプレイプロダクト)の事業終息」について公表したことを報告した。
沖津社長 CEOは、「亀山第2工場については、2025年5月以降、鴻海への譲渡について協議を重ねてきた。だが、残念ながら条件面で合意に至らず、検討を終了することになった。これを受け、同工場は今後の黒字化の目処が立たないことから、これ以上の事業継続は困難であると判断し、既存顧客の需要に対応するための先行生産および在庫確保を行った上で、2026年8月を目途に生産を停止することを決定した」とした。
また、SDPについては、「2024年8月の工場停止以降、インド大手企業の液晶工場への技術移転を検討してきたが、先方との合意に至らず、この検討を終了し、事業を終息する決断をした」と述べた。
2026年度以降には、亀山第2工場の第8世代液晶パネル工場の設備と、SDP堺工場の第 10 世代液晶パネル工場の設備の両方が廃棄されることになりそうだ。
そして、「これらの事業に関連する業務に従事している社員などについては、誠に断腸の思いだが、社外転進支援プログラムの活用なども通じて、会社として、一人ひとりのキャリア形成を誠意をもって丁寧に支援していく考えである」とした。
決算会見では、亀山工場では約1170人の社員が希望退職の対象となり、SDPでは約240人が対象になると発表していた。
なお、「今回の亀山第2工場の譲渡不成立を受け、一部には鴻海との関係悪化を懸念する声もあるが、シャープと鴻海との関係に影響は一切ない。今後も、EVやAIサーバーなどの新規事業領域を中心に連携を深め、早期の事業化を目指していく」としている。
今回のCEOメッセージの最後に、沖津社長 CEOは、「決算発表でも言及した通り、一昨年来取り組んできた一連のデバイス事業の構造改革は、今回で区切りがついた。ディスプレイデバイス事業においては、今後、亀山第1工場および白山工場を主力に、高付加価値製品の開発と販売拡大に取り組むことで黒字化を目指す。そして、ブランド事業においては、いよいよ『成長』へと本格的に歩みを進めていく」との姿勢を改めて強調した。
その上で、「足もとの事業環境は非常に厳しい状況にあるが、全社一丸となって難局に対応するとともに、新規事業や成長投資に積極果敢に挑戦し、将来の飛躍につながる布石をひとつひとつ着実に打っていこう。そして、中期経営計画で掲げた2027年度目標の『営業利益800億円』の達成に向け、力強く前進しよう」と成長戦略へのシフトを明確化。「2025年度は、残すところ1カ月強となった。公表値の達成に向け、最終日まで全力で駆け抜けよう。2年連続で公表値をやり遂げ、再成長へと弾みをつけよう」と、今後の成長に意欲をみせた。
シャープは、厳しい市場環境のなかで、着実に構造改革を進めた結果、ブランド事業に集中し、それによる成長戦略を描ける体制が整いつつある。沖津社長 CEOが、「デバイス事業の構造改革は、今回で区切りがついた」と宣言したように、シャープは、中期経営計画で掲げたゴールに向けて、身体を前に向けながら走りだせる姿勢へとシフトすることになる。外部環境の厳しさという逆風はあるが、2026年度の姿勢は、これまでと大きく異なるのは間違いない。

