シャオミは2020年8月31日、ウェアラブルデバイスの「Miスマートバンド5」などスマートフォン以外の4製品を発表した。最近スマートフォンメーカーが、ウェアラブルデバイスなどスマートフォンと連携して使う周辺機器の提供に力を入れているが、その理由はどこにあるのだろうか。

スマートフォン以外の製品を次々投入するシャオミ

国内では秋冬、海外ではクリスマスの商戦期をにらんでスマートフォンメーカーの動きが活発化しつつある昨今。そうした中、日本国内向けの新製品を大々的に発表したのが中国のスマートフォン大手、シャオミである。

シャオミは2019年に日本進出したばかりだが、参入から1年未満で携帯大手の一角であるKDDIへのスマートフォン供給を実現するなど、大きな成果を残している。そのシャオミは2020年8月31日に日本国内向けの新製品発表イベントをオンラインで実施しており、発売時期が決まっていなかったKDDI向けの5G対応スマートフォン「Mi 10 Lite 5G」を、2020年9月4日に発売することを明らかにした。

  • KDDIのauブランドから販売されるシャオミ製の「Mi 10 Lite 5G」。一括価格で42,740円と、auの5G対応スマートフォンの中では最も安価なのが大きなポイントとなる

    KDDIのauブランドから販売されるシャオミ製の「Mi 10 Lite 5G」。一括価格で42,740円と、auの5G対応スマートフォンの中では最も安価なのが大きなポイントとなる

だが同社はそれ以外にも、4つの新製品を日本国内向けに投入することを明らかにしている。1つは同社が世界的に高いシェアを持つウェアラブルデバイスの新製品「Miスマートバンド5」で、ディスプレイサイズの大型化やカバーするエクササイズの種類を増やすなど、高い性能を備えながら4,490円という低価格で販売されるのが大きな特徴だ。

  • シャオミが新たに投入するウェアラブルデバイスの「Miスマートバンド5」。高機能ながら5,000円を切る低価格が大きな特徴だ

2つ目は「Mi完全ワイヤレスイヤホン2 Basic」「Mi完全ワイヤレス小型イヤホンBasic 2」で、いずれも名前の通り完全分離型のワイヤレスイヤホンとなる。前者はノイズキャンセリング機能を搭載、後者はコンパクトで片耳でも使えるのが特徴で、価格もそれぞれ3,990円、2,490円と非常に安い。

そして3つ目は空気清浄機の「Mi空気清浄機3H」で、独自の「Mi Homeアプリ」を通じてスマートフォンから操作できるほか、Google AssistantやAmazon Alexaにも対応し、音声によるコントロールも可能なスマート家電となっている。価格も19,900円と、国内では3万円を超えるものが多い空気清浄機の中では安い部類に入るだろう。

シャオミは日本進出以前より、スマートフォンだけでなくIoT関連の幅広い製品も提供しているし、ハードウェアの利益率を5%以下に抑えると宣言しており低価格を大きな特徴としていることから、これだけの製品を国内でも安価に提供して販売を広げようとしていることは理解できる。だが気になるのは、こうしたスマートフォン以外の機器を提供する動きが、シャオミ以外にも広がっていることだ。

スマートフォン市場の飽和でエコシステム構築に注力

例えばシャオミと同じ中国企業であり日本市場に進出して日が浅いオッポも、ここ最近スマートフォン以外の機器提供に力を注いでいる。実際、国内でも2020年7月21日に、スマートフォンの新製品だけでなく完全分離型のワイヤレスイヤホン「Enco W51」「Enco W11」と、スマートウォッチ「OPPO Watch」の投入を発表している。

  • スマートフォン専業だったオッポも、最近は周辺機器に力を入れるようになっており、日本国内にもワイヤレスイヤホンの「Enco W51」などを投入している

またファーウェイ・テクノロジーズも、ここ最近スマートフォン以外の機器提供に力を入れているようだ。実際同社は2020年6月2日に実施した国内向けの新製品発表会において、スマートフォンだけでなくワイヤレスイヤホンの新製品「HUAWEI FreeBuds 3i」を発表している。

しかしなぜ、スマートフォンメーカーがスマートフォン以外のデバイスに力を入れる動きが強まっているのだろうか。そこに影響しているのは、スマートフォン単体での販売拡大に限界が来ていることではないだろうか。

スマートフォンは既に先進国だけでなく、新興国でも普及が進んだことで市場が飽和傾向にあると言われており、さらに販売を伸ばすには途上国向けの販売を拡大するくらいしか手段が残っていない。もちろん「Tecno」などのブランドでアフリカを中心にスマートフォンを提供している中国の伝音科技(Transsion Holdings)のように、途上国を狙って販売シェアを伸ばす企業も出てきてはいるが、新興国以上の低価格が求められるだけに利益率の低さが課題となってくる。

だが先進国や新興国で大きなシェアを持つ大手メーカーであれば、既に多くの人が自社製品を利用しており一定の顧客基盤が存在する。それをベースとして周辺機器の販売を拡大できれば、スマートフォンの販売は大きく伸びなくてもトータルでの売上を伸ばすことができると考え、周辺機器に力を入れるようになったといえそうだ。

しかも自社のスマートフォンと周辺機器を連携させやすい仕組みを整備できれば、ユーザーは使い勝手の良さを求めて継続して自社製品に買い替えてくれる可能性が高まる。ハードウェアを主体としたエコシステムを構築し、継続したビジネスにつなげたいという狙いも、現在の動きには大きく影響しているといえよう。

実際ファーウェイ・テクノロジーズは、2019年より「1+8+N」という戦略を打ち出している。これは「1」となるスマートフォンを軸に、ウェアラブルデバイスやワイヤレスイヤホンなど「8」つの周辺機器、さらに「N」となる多数のIoT機器を連携させて独自のエコシステムを構築し、ユーザーの利便性を高める戦略であり、現在各社が取り組んでいる戦略に近いものといえるだろう。

  • ファーウェイ・テクノロジーズは、スマートフォンを軸にさまざまなデバイスを連携させる「1+8+N」戦略を打ち出し、周辺機器の販売に力を入れている

もっとも周辺機器に力を入れているのはスマートフォンメーカーだけでなく、グーグルがワイヤレスイヤホンの「Pixel Buds」を投入するなど、プラットフォーマーの側からも同様の動きが出てきている。それだけに今後、スマートフォンの周辺機器を巡る競争は急速に激化する可能性が高いといえそうだ。