2020年に日本でも、携帯電話の次世代通信規格「5G」のサービスが提供される予定だ。携帯電話の通信方式は、約10年毎に世代交代が進んでいるのだが、そもそもなぜ、一定期間毎に新しい通信規格を導入する必要があるのだろうか。

日本では2020年に「5G」の商用サービスを開始

携帯電話の通信規格、要するに音声やデータをやり取りするための仕組みは、約10年毎に世代交代がなされる傾向にある。現在多くのスマートフォンで用いられている主流の通信方式「LTE-Advanced」は、「4G」、つまり「第4世代」の通信方式であり、2010年に標準化がなされている。

そしていま大きな注目を集めているのが、4Gの次の通信規格「5G」だ。2018年6月には5Gの通信方式「5G NR(New Radio)」の主要機能の標準化が完了したことが発表されており、日本では2020年、米国や韓国などより早い国では2019年から、5Gを用いたサービスを提供する予定となっている。

  • 日本に先駆けて2019年の5G商用サービスを実施予定の韓国では、2018年2月の平昌冬季五輪で5Gの実証実験が実施されていた

5Gは従来の4Gと比べ、「高速・大容量」「低遅延」「多接続」といった特徴を備えている。高速・大容量は文字通り、4Gより通信速度が速いことで、4Gの最大通信速度は3Gbpsといわれているが、5Gでは最大20Gbpsの通信速度を実現するという。

2つ目の低遅延は、IP電話で通話した時に、自分が話した声が相手に遅れて届くといった、いわゆるネットワーク遅延が非常に小さいことを示す。4Gの遅延が約50ミリ秒であるのに対し、5Gの遅延は1ミリ秒と大幅に遅延が小さくなるとされており、医療や車の運転など、ずれのない遠隔操作などを実現するのに大いに役立つ。

そして最後の多接続は、多くのモノがインターネットに接続するIoT時代に備え、1つの基地局に対して同時に接続する端末の数が、4Gの100倍になるというもの。ただしサービス開始当初の5Gにはこの仕様は盛り込まれておらず、後から追加される形になるとのことだ。

こうして見れば、確かに5Gは4Gよりも大幅に進化していることが分かる。だが現在スマートフォンを利用している人達からすると、現在の4Gの環境でも動画は快適に視聴できるし、別段困ったことはないと感じていることだろう。これまでにも、2Gから3G、3Gから4Gといったように、通信規格の世代が変わる毎に「キャリアが多額の設備投資をしてまで、新世代の通信規格を導入する必要があるのか?」という声は起きている。

増大し続けるトラフィックへの対処が最大の目的

では一体なぜ、携帯電話の通信規格は一定期間毎にアップデートする必要があるのかというと、その本質的な理由は非常にシンプルである。トラフィック、つまりユーザーが携帯電話やスマートフォンでやり取りするデータの量が増える一方なので、新しい技術を用いた通信規格を導入しないと、いずれパンクしてしまうためだ。

やや古い資料になるが、総務省が公開している「平成29年版 情報通信白書」を見ると、移動体通信のダウンロードトラフィックは、1年で約1.3倍という急速なペースで伸びているという。さらに世界の移動体通信によるトラフィックは、2015年から2020年の5年間で、トラフィックが7.8倍にまで増加すると予測されているのだ。

  • 国内の移動体通信トラフィックの推移(総務省「平成29年版 情報通信白書」より)

ちなみに1Gから2Gにかけては、携帯電話自体が多くの人に広まり音声通話の利用が増えたこと。2Gから3Gにかけては「iモード」などの登場によって、音声だけでなくデータ通信の利用が広まりつつあったこと。そして3Gから4Gにかけては、スマートフォンの広まりによって音声からデータ通信へと利用の主体が大きくシフトしたことが、トラフィックの増加に大きく影響している。

そうしたトラフィックの伸びに対処し安定した通信を実現するべく、キャリアは基地局を増やすなどしてネットワークの改善を進めている。だがそれでもなお、これだけ急激なペースで伸びるトラフィックに対処するには不十分で、根本的な対処をするには通信の仕組みそのものを変える必要がある訳だ。それゆえ通信規格がアップデートされる毎に、従来使用できなかった電波を使えるようにしたり、電波の利用効率を高める技術を導入したり、一度に通信するアンテナの本数を増やしたりするなどして、より大容量通信に耐えられる体制が整えられている。

だが新しい通信規格を導入しても、それを利用するためのインフラやデバイス、サービスが整っていなければ、ユーザーは利用してくれず普及が進まないという問題も抱えている。それが顕著に表れたのが、2Gから3Gへの移行時である。

世界初の3Gによる商用サービスを2001年に開始したのはNTTドコモの「FOMA」である。だが2Gと比べると端末サイズが大きくバッテリーが持たない、3Gの利用に適したサービスが少ないなどの理由から長い間ユーザーの不評を買い、2004年に従来の2Gの携帯電話と同じ感覚で利用できる端末(「900i」シリーズ)が登場するまで、なかなか普及が進まなかったという経緯がある。

それゆえ3Gと同じ轍を踏まないよう、キャリアは5Gの導入に際して、ネットワークや端末に加え、5Gの利用を促進するためのサービス開発にも力を入れるようになった。実際NTTドコモは、東京・お台場や東京スカイツリータウンなどで「5Gトライアルサイト」を展開、5Gを活用したサービス創出に向けたさまざまなデモやサービスの一般展示を実施している。5Gに関してもそうした取り組みの成否が普及を大きく左右するだけに、2020年までキャリアが5Gに向け、どのような取り組みを見せるかはしっかり注目しておく必要があるだろう。

  • NTTドコモは5Gの早期普及に向け、東京スカイツリータウンなどで5Gを活用したサービス創出に向けた「5Gトライアルサイト」を展開している