2025年9月26日に中国シャオミ、9月30日に米モトローラ・モビリティが相次いでスマートフォンの新製品を発表している。国内では存在感が大きいとは言えない両社だが、新製品の販路、より具体的に言えば国内では販売数が多い、携帯大手3社からの販路に大きな差が出ている。一体なぜだろうか。
コスパに優れた「Xiaomi 15T」とAI強化の「razr 60」
2025年も米アップルの「iPhone」シリーズ新製品が発表・発売されたことで、他のメーカーも新製品投入の動きが相次いでいるようだ。その1つとなるのが、2025年9月26日に新製品発表イベントを実施したシャオミである。
今回の新製品発表は、東京・秋葉原で実施される自社イベント「Xiaomi EXPO 2025」に合わせて実施されたもの。それゆえ同会場には、シャオミが中国で販売している電気自動車「Xiaomi SU7 Ultra」が日本で初めて展示されたほか、チューナーレステレビや掃除機など、非常に幅広い新製品の発表がなされている。
だが注目されたのはやはりスマートフォンだろう。シャオミが今回、新たに発表したのはハイエンドモデルの「Xiaomi 15T」と「Xiaomi 15T Pro」で、いずれも独ライカカメラと共同開発した3眼カメラを搭載。中でもXiaomi 15T Proは、望遠カメラが光学5倍相当で、チップセットにも台湾メディアテックのハイエンド向けとなる「Dimensity 9400+」を搭載するなど、非常に高い性能を誇る。
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シャオミが新たに発表したスマートフォン「Xiaomi 15T」シリーズの上位モデル「Xiaomi 15T Pro」は、光学5倍相当の望遠カメラを搭載し、最大100倍のデジタルズームに対応するなど非常に高い性能を備える
一方でXiaomi 15Tは、望遠カメラが光学2倍相当、チップセットが「Dimensity 8400-Ultra」を採用、Xiaomi 15T Proより性能は低いのだが、その分価格が非常に安い。最も安いRAM12GB・ストレージ256GBのモデルで6万4800円と、Xiaomi 15T Proの最も安いモデル(10万9800円)と比べても4万円以上安く、他社の同クラスの製品と比べても2万円以上安いのには驚きがある。
そしてもう1社、スマートフォン新製品を発表したのがモトローラ・モビリティである。同社は2025年9月30日に新製品発表イベントを実施、折り畳みスマートフォンの最新モデル「motorola razr 60」シリーズ2機種を発表している。
スタンダードモデルの「motorola razr 60」はチップセットに台湾メディアテック製の「Dimensity 7400X」を、最上位モデルの「motorola razr 60 Ultra」は米クアルコム製の「Snapdragon 8 Elite」を搭載するなど、両機種ともにベースの性能強化が図られている。だがカメラなどの性能は据え置かれており、実はハード面での進化はあまり多くない。
その一方で強化されているのがAI関連機能で、カメラ以外でも利用できるAI関連機能が多数盛り込まれている。メッセージアプリなどの通知をまとめる「とりまリスト」や、録音した音声を文字起こしし、要約してくれる「おまとメモ」など、日本語で利用できるAI関連機能が大幅に増えたことがアピールポイントとなっているようだ。
携帯大手がコスパより重視する“売りやすさ”
ストレートタイプでコストパフォーマンスに重きを置いたシャオミの新機種と、折り畳みタイプでAIに重きを置いたモトローラ・モビリティの新機種。それぞれ特徴やアピールポイントに大きな違いがあるのだが、その販路を巡っても両社には大きな違いが見られる。
両社は共に、新機種を家電量販店などのオープン市場向けに、いわゆる「SIMフリー」として直接販売する点は共通している。だがそれ以外の販路、より具体的に言えば、国内で最も端末販売が多いNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯大手3社からの販路に大きな違いが出ているのだ。
実際、モトローラ・モビリティのmotorola razr 60は、2024年発売の前機種「motorola razr 50」に続いてNTTドコモとソフトバンクからそれぞれ独自カスタマイズしたモデル「motorola razr 60d」「motorola razr 60s」が販売される。それに加えてmotorola razr 60 Ultraは、新たにKDDIのメインブランド「au」から販売されることが決定しているという。
KDDIからモトローラブランドのスマートフォンが販売されるのは、2012年発売の「MOTOROLA RAZR IS12M」以来およそ13年ぶりのこと。これでモトローラ・モビリティは、レノボ・グループ傘下となって以降ようやく、国内携帯大手3社からの販路を復活したことになる。
その一方で、シャオミのXiaomi 15TとXiaomi 15T Proは、いずれも国内では携帯3社からの販売がなされず、SIMフリーモデルのみの展開となる。前機種「Xiaomi 14T」はKDDI、「Xiaomi 14T Pro」はソフトバンクから販売されていただけに、かなり意外な印象を受ける。
中でもXiaomi 15T Proは、FeliCaを搭載するなどハード面でも国内向けのカスタマイズがしっかり施されているだけに、一層意外な印象を受ける。シャオミのこれまでの傾向を見るに、FeliCaを搭載するのは多くの販売数が見込める携帯大手向けモデルに限られることが多い。
それだけにXiaomi 15T Proは携帯大手への採用を狙い開発を進めたものの、採用に至らずSIMフリーのみでの販売となった可能性が考えられそうだ。
では一体、携帯3社の販路開拓に成功したmotorola razr 60シリーズと、その販路を失ったXiaomi 15Tシリーズの差はどこにあったのか。それはスマートフォンとしての明確な特徴の有無ではないかと筆者は見る。
実際、motorola razr 60シリーズは、ディスプレイを折り畳めるスマートフォンという明確な特徴を持ち合わせている。海外では多くのメーカーが投入している折り畳みスマートフォンだが、日本で縦折りタイプの折り畳みスマートフォンを販売しているのはモトローラ・モビリティと韓国サムスン電子のみで、非常に数が少ない。それゆえ携帯3社の視点に立つならば、motorola razr 60シリーズには明確な特徴があり、販売しやすいことから採用の動きが進んだのではないだろうか。
一方で、Xiaomi 15Tは確かにコストパフォーマンスに優れているものの、競合メーカーの製品と比べた場合、折り畳みスマートフォンのように明確な特徴を持ち合わせている訳ではない。とりわけXiaomi 15T Proは、Xiaomi 14T Proまで備わっていた120Wの超急速充電機能がなくなり、90Wの急速充電に留まっていることから、Xiaomi 14T Proを販売していたソフトバンクがアピールしている「神ジューデン」の基準に当てはまらなくなったことも、採用に至らない要因の1つとなった可能性がある。
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Xiaomi 14T Proは120Wの超急速充電機能を備え、ソフトバンクも「神ジューデン」ブランドの端末の1つとして販売していたが、Xiaomi 15T Proの急速充電は90Wに変更され、「神ジューデン」の基準を満たさなくなっている
携帯各社は市場飽和と政府の値引き規制に加え、円安による価格高騰でスマートフォンの販売が大きく落ち込んでいることから、スマートフォンの調達自体を絞り込み、確実に売れるブランド力のあるメーカーの端末の調達・販売に力を注ぐ傾向が強まっている。楽天モバイルを含む携帯4社が予約開始ぎりぎりまで米アップルの「iPhone 16e」の販売価格を調整したり、KDDIが「iPhone 17」シリーズなどのiPhone新機種発売イベントを6年ぶりに開催したりしたことなどが、その傾向を如実に示している。
それゆえ携帯3社は、シャオミやモトローラ・モビリティのように日本ではブラランド力が弱い下位のメーカーに対し、価格競争力だけでなく販売の現場で売りやすい明確な特徴を求めるようになってきたのではないかと考えられる。従来のセオリーで携帯3社への端末供給が難しくなってきただけに、下位のメーカーにとって国内のスマートフォン市場が、従来以上に厳しい環境となりつつあることは間違いないだろう。




