Nothing Technologyやグーグルなど、ここ最近楽天モバイルからスマートフォンを販売する動きが相次いでいる。契約回線数が900万を超えるなど規模の面で充実度が高まっていることが背景にあると考えられるが、一方で同社の端末ラインアップからは、楽天モバイルが抱える課題も見えてくる。
お盆明けに2社のフラッグシップスマホが発表
お盆明けの8月下旬に入り、スマートフォンの新機種発表が相次いでいる。その1つが英Nothing Technologyが8月20日に発表した「Nothing Phone(3)」だ。
同社は2025年に入り、ミドルクラスの「Nothing Phone(3a)」とエントリークラスの「CMF Phone 2 Pro」を投入しているが、Nothing Phone(3)はその上位に位置付けられる、同社のフラッグシップモデル新機種だ。それゆえチップセットに米クアルコム製の「Snapdragon 8s Gen 4」を搭載し、背面の3眼カメラとフロントカメラ全てに5000万画素のイメージセンサーを採用するなど、他の2モデルと比べ高い性能を備えている。
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Nothing Technologyが2025年8月20日に発表した「Nothing Phone(3)」。およそ2年ぶりとなる同社のフラッグシップモデルで、性能強化に加えデザイン面でも大きな変化がなされている
そして従来のフラッグシップモデルと比べ大きく変化したのが、新しいギミック「Glyphマトリックス」である。これは従来のNothing Phoneシリーズの大きな特徴でもあった、背面に備わったLEDが大胆に光る「Glyphインターフェース」の進化系ともいえるものだ。
それゆえGlyphマトリックスは背面の右上に小さなLEDで構成されたディスプレイが用意され、ここに通知やバッテリー残量などを表示できるほか、簡単なツールやゲームなども利用可能だ。下部のタッチセンサーに触れることでGlyphマトリックスの操作も可能であるなど、Glyphインターフェースよりインパクトは小さくなったとはいえ、実用性は高まったと感じる。
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Nothing Phoneシリーズの特徴でもある「Glyphインターフェース」は「Glyphマトリックス」に姿を変え、小型のLEDによるディスプレイ表示でさまざまな機能やツールが利用できるようになった
そしてもう1つ、8月21日に発表されたのが米グーグルの新しいハイエンドモデル「Pixel 10」シリーズだ。こちらは前機種「Pixel 9」シリーズを踏襲した4機種構成で、デザインもPixel 9シリーズを踏襲しているのだが、ハード面で変化した点もいくつかある。
1つは背面のワイヤレス充電が「Qi2」規格に対応し、アップルの「iPhone」で採用されている「MagSafe」と同様、マグネットで充電器を貼り付けられるようになった。そしてもう1つは望遠カメラで、従来望遠カメラがないスタンダードモデルの「Pixel 10」にも望遠カメラが搭載。性能に違いはあれど、4機種全ての背面カメラが、望遠カメラを含む3眼構成となっている。
一方で、グーグルが力を入れるAI関連の機能強化も進められており、独自開発の新しいチップセット「Tensor G5」によってデバイス上でのAI処理を強化。これを活用して外国語の相手との通話を通訳してくれる「マイボイス通訳」や、ユーザーが必要とする情報をAIが先回りして提示してくれる「マジックサジェスト」などの機能を実現している。
規模を獲得した楽天モバイル、高額端末の販売には課題も
これらはともにフラッグシップモデルと位置付けられ、技術やデザインなど各社が持つ強みを最大限に生かした内容となっている。ただ国内ではもう1つ、双方に共通して変化しているポイントが、楽天モバイルが販路の1つとなっていることだ。
Nothing Technologyは2025年3月発売のNothing Phone(3a)から、楽天モバイルからのスマートフォン販売に力を入れており、Nothing Phone(3)ではその関係をさらに強化。販路をNothing TechnologyのWebサイトと楽天モバイルだけに絞り、他の販路では販売しない一方で、楽天モバイルでの取扱い店舗はさらに広げる予定だという。
一方のPixelシリーズに関しても、2025年7月より楽天モバイルが「Pixel 9a」の取り扱いを開始したことで関係を構築。Pixel 10シリーズに関しても、Web限定ながらPixel 10と「Pixel 10 Pro」が楽天モバイルから販売されるという。
新興だけにさまざまな課題を抱える楽天モバイルだが、大手3社と比べ扱うスマートフォンの数が少ないことも、大きな課題の1つとされてきた。国内で最もシェアが大きい米アップルの「iPhone」シリーズこそ2021年より販売しているものの、Androidスマートフォンで扱いがあるのは国内メーカーと中国のオッポくらいという状況で、ユーザー目線からすると選択の幅が狭かったことは確かだ。
だが楽天モバイルもここ最近は契約数を順調に伸ばしており、2025年7月末時点ではMVNOによるサービスを含む全ての契約回線数が908万にまで到達。1000万契約が目前に迫るなど、大手3社の背中はまだ遠いながらもある程度の規模を持つようにはなっている。
かつてと比べれば契約数が増え、端末の販売数も見込めるようになったことが、取り扱うメーカーが増えた背景には大きく影響したと考えられる。それでいて大手3社と比べればまだ規模が小さいだけに、特に国内での事業規模が大きいとは言えないNothing Technologyのような企業にとっては、協業しやすい相手となっているようだ。
ただ楽天モバイルのこれまでのラインアップを振り返るに、取り扱うメーカーを増やす上では少なからず課題もある。中でも大きな課題となっているのは、Nothing Phone(3)やPixel 10シリーズのように10万円を超えるフラッグシップモデルが、大手3社以上に売りづらい環境にあることだ。
そもそも楽天モバイルの料金プラン「Rakuten最強プラン」は、データ通信が使い放題でも3000円台で利用できる低価格が売りなので、契約する人も節約意識が強い人が多い。それだけにユーザーが求めるスマートフォンも節約意識が強く反映されており、Androidスマートフォンに限れば同社が扱う機種はこれまでミドルクラス以下が主だった。
それゆえ高価格帯のスマートフォン販売に力を入れている韓国サムスン電子などは、楽天モバイルから何度か端末を販売しているものの継続には至っておらず、契約者が高額端末の販売に結びついていないことが課題となっている訳だ。Pixel 10シリーズの販売をWeb限定にしている点からも、同社が高額モデルに慎重な姿勢を見せている様子がうかがえるだろう。
だが端末ラインアップで大手3社に追いつくには、高価格帯の端末も多く販売してメーカー側にもメリットがあることを明確に打ち出す必要がある。取り扱うメーカーとラインアップの幅は確かに広がったが、楽天モバイルが迎える正念場はむしろこれからではないだろうか。




